「最終保障供給制度」と日本のエネルギー事業
今回、一般質問(「地域エネルギー会社がもたらす市民福祉の向上」)のために色々と調べていく中で、「最終保障供給制度」について、色々と考えさせられました。
最終保障供給制度とは、企業等が電力会社との切り替えを余儀なくされた場合に、次の契約先が見つかるまで送配電会社が電力を供給する制度です。
新電力が事業から撤退・倒産した場合や、料金不払いで契約を解除された企業等が送配電事業者に申し込んで制度を利用します。期間は原則1年ですが、延長もあり得るとのことです。
電気事業法で定款を定め、料金は大手電力会社の標準料金の1.2倍に設定しています。
最終保障供給があくまでもセーフティネット=電力供給最後の受け皿であり、次の契約先を見つけるまでの「つなぎ」だとも言えます。
しかしながら・・昨今の世界情勢による燃料高騰により、卸電力市場価格とともに発電コストも上昇し、全国各地で新電力の倒産・撤退が相次いでいます。
もともと新電力の多くは自前の発電設備を持たず、施設維持費分のコストがかからないことで、大手電力会社よりも安い電気料金を提示できていたと思いますが、現状のように卸電力市場価格が高騰すれば、安い電気料金のまま経営していくことは極めて困難です(売るほど赤字に・・)。
帝国データバンクによれば、令和3年度には新電力700社のうち31社が撤退しているそうです。
また入札不調により新電力との契約更新ができないケースも相当あると思われます。
そのため、最終保障供給の利用が激増し、本来は割高なはずの最終保障供給による電気料金が、新規契約するよりも安くなるという価格破壊現象も生じているそうです。
この事態を重く見た経済産業省は5月末に、最終保障供給の電気料金を卸電力市場価格の1.2倍とする新たなルールに変更することを示したとのことです。
引用:日本経済新聞2022.5.31「電力「保障」に駆け込み1.3万件 料金設定のルール是正へ」
最終保障供給は、送配電事業者にとっても大きな負担となります。
もともと送配電事業者は、調整用電力を卸電力市場から調達していました。電力には「同時同量の原則」があり、常に需要と供給を一致させなければ、周波数が乱れ、大停電を引き起こします。
そのため、送配電事業者は常に需給バランスを一致させるよう調整して、私たちの暮らしが混乱しないようにしています。
ですが、最終保障供給を行うためには、調整用以外にも卸電力市場から電力を調達しなければなりません。卸電力市場からの仕入れ値が上昇しているのに、最終保障供給料金は定額となれば、電力調達すればするほど、損益が増すことになります。
柏崎市内の送配電を担う東北電力ネットワーク様からも、色々とお話を伺いましたが、現状が続くことは企業にとっても大きな負担であり、いずれは託送料金の見直しを行わざるを得ない厳しい状況にあるとのことでした。(そうなれば電気料金はますます上がります。)
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これを書いている今、某政党の街宣車が「原発ゼロ」をアナウンスしているのが聞こえてきました。
原子力発電所に対する国民感情は様々ですが、私は「安全性が確認された原子力発電所は速やかに稼働させ、電力の安定供給をはかるべき」だと思います。
現在の日本では、火力発電が主流であり、その大半が輸入燃料によるものです。
引用:関西電力グループ【2022年最新】火力発電に使用される燃料の種類について解説
ウクライナ情勢の影響により、世界各国の資源輸出入バランスが変わり、ますます発電のための資源調達が厳しくなるのが予想されます。
また、再生可能エネルギーについても、調整の難しさもあり、主力電源となる日はまだ先だと思います。
現在、全国的に再エネの出力制御が行われています。
引用:財界オンライン2022.6.2【経済産業省】増加する「出力制御」 再エネ普及に大きな課題
結局のところ、日本は様々なエネルギーを組み合わせて、電力を確保していくしかありません。
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話を戻せば、セーフティネットであるはずの最終保障供給に依存しなければ、電力確保ができなくなっている現状も踏まえた上で、柏崎における新電力会社(柏崎あい・あーるエナジー株式会社)の今後の経営課題について、質していきたいと思います。
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