エネルギー問題

2022年6月 4日 (土)

「最終保障供給制度」と日本のエネルギー事業

今回、一般質問(「地域エネルギー会社がもたらす市民福祉の向上」)のために色々と調べていく中で、「最終保障供給制度」について、色々と考えさせられました。

最終保障供給制度とは、企業等が電力会社との切り替えを余儀なくされた場合に、次の契約先が見つかるまで送配電会社が電力を供給する制度です。

新電力が事業から撤退・倒産した場合や、料金不払いで契約を解除された企業等が送配電事業者に申し込んで制度を利用します。期間は原則1年ですが、延長もあり得るとのことです。

電気事業法で定款を定め、料金は大手電力会社の標準料金の1.2倍に設定しています。

最終保障供給があくまでもセーフティネット=電力供給最後の受け皿であり、次の契約先を見つけるまでの「つなぎ」だとも言えます。

しかしながら・・昨今の世界情勢による燃料高騰により、卸電力市場価格とともに発電コストも上昇し、全国各地で新電力の倒産・撤退が相次いでいます。

もともと新電力の多くは自前の発電設備を持たず、施設維持費分のコストがかからないことで、大手電力会社よりも安い電気料金を提示できていたと思いますが、現状のように卸電力市場価格が高騰すれば、安い電気料金のまま経営していくことは極めて困難です(売るほど赤字に・・)。

帝国データバンクによれば、令和3年度には新電力700社のうち31社が撤退しているそうです。

また入札不調により新電力との契約更新ができないケースも相当あると思われます。

そのため、最終保障供給の利用が激増し、本来は割高なはずの最終保障供給による電気料金が、新規契約するよりも安くなるという価格破壊現象も生じているそうです。

この事態を重く見た経済産業省は5月末に、最終保障供給の電気料金を卸電力市場価格の1.2倍とする新たなルールに変更することを示したとのことです。

引用:日本経済新聞2022.5.31「電力「保障」に駆け込み1.3万件 料金設定のルール是正へ」

最終保障供給は、送配電事業者にとっても大きな負担となります。

もともと送配電事業者は、調整用電力を卸電力市場から調達していました。電力には「同時同量の原則」があり、常に需要と供給を一致させなければ、周波数が乱れ、大停電を引き起こします。

そのため、送配電事業者は常に需給バランスを一致させるよう調整して、私たちの暮らしが混乱しないようにしています。

ですが、最終保障供給を行うためには、調整用以外にも卸電力市場から電力を調達しなければなりません。卸電力市場からの仕入れ値が上昇しているのに、最終保障供給料金は定額となれば、電力調達すればするほど、損益が増すことになります。

柏崎市内の送配電を担う東北電力ネットワーク様からも、色々とお話を伺いましたが、現状が続くことは企業にとっても大きな負担であり、いずれは託送料金の見直しを行わざるを得ない厳しい状況にあるとのことでした。(そうなれば電気料金はますます上がります。)

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これを書いている今、某政党の街宣車が「原発ゼロ」をアナウンスしているのが聞こえてきました。

原子力発電所に対する国民感情は様々ですが、私は「安全性が確認された原子力発電所は速やかに稼働させ、電力の安定供給をはかるべき」だと思います。

現在の日本では、火力発電が主流であり、その大半が輸入燃料によるものです。

引用:関西電力グループ【2022年最新】火力発電に使用される燃料の種類について解説

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ウクライナ情勢の影響により、世界各国の資源輸出入バランスが変わり、ますます発電のための資源調達が厳しくなるのが予想されます。

また、再生可能エネルギーについても、調整の難しさもあり、主力電源となる日はまだ先だと思います。

現在、全国的に再エネの出力制御が行われています。

引用:財界オンライン2022.6.2【経済産業省】増加する「出力制御」 再エネ普及に大きな課題

結局のところ、日本は様々なエネルギーを組み合わせて、電力を確保していくしかありません。

******

話を戻せば、セーフティネットであるはずの最終保障供給に依存しなければ、電力確保ができなくなっている現状も踏まえた上で、柏崎における新電力会社(柏崎あい・あーるエナジー株式会社)の今後の経営課題について、質していきたいと思います。

 

2020年12月26日 (土)

亀の歩み

先日の一般質問をラジオで聴いてくださった方から、このようなご意見をいただきました。

NIMBY(ニンビー)がNot in my backyard(我が家の裏にはお断り)の略で、「必要性は高いけれど、近所には来てほしくない」という意味なのはわかった。

でも南青山で反対運動があった児童相談所と、高レベル放射性廃棄物の最終処分場を、一緒にすべきではない、と。

なぜですか?と聞いたら

「最終処分場のような危険なものを反対するのは当たり前だから。」

それからかなり時間をかけて、

●高レベル放射性廃棄物「地層処分」の仕組みとこれまでの国の取り組みについて

●原子力発電を今後どうするにせよ、処分場は必要であること

●かつて高知県の東洋町で文献調査を検討した町長は、政治生命を経たれたこと

●寿都町の町長はご自宅に火炎瓶を投げ込まれたりしながらも、「うちの町が手を挙げることで、きっと後に続く自治体が出てくる」として応募を決行し、神恵内村も後に続いたこと

●マスコミの多くは反対する側の主張しか報道しないけれど、議会議決などを見れば、必ずしも全員が反対ではないこと

●発電所立地自治体は、処分を引き受けようとする自治体に感謝し応援すべき、というのが私の想いであること

●「皆が嫌がるけれど、誰かがやらなければ先に進めない」問題に取り組む勇気は、評価されるべき。

・・等々、話しました。

その方は若い頃は

「処分方法も決まらないのに原子力発電所を誘致するなんてとんでもない!」

と、反対運動にも参加していたそうで。

「完全に納得できたわけではないけど、科学の進歩で色々なことが進んでいるのはわかった。

でも原発・核のごみは怖い、という人達には、いくら説明しても、受け入れられないんじゃないかな。」

怖い人は怖いままだとしても、知らなかった人や関心なかった人が「知る」ことで、意識が変わる可能性は信じたいものです。

たとえ亀の歩みであっても。

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2018年9月27日 (木)

浜岡原子力発電所(中部電力)視察

昨日~今日と静岡県御前崎市の浜岡原子力発電所(中部電力)での研修でした。

「くらしをみつめる・・・柏桃の輪」勉強会の一環です。

1日目は廃止措置(廃炉)、2日目は安全対策の現場をそれぞれ見学させていただきました。

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浜岡原子力発電所では1、2号機を廃止措置、3、4号機を再稼働申請している状況です。

廃止措置は先日の講演会で学んだように、国の認可を受けた廃止措置計画に沿って進められています。

燃料搬出は終了し、除染した放射線量が低い廃棄物を中心に解体処理している段階です。

解体した廃棄物は、国の認可を受けるまで作業場に仮置きしています。

その分作業スペースが狭くなり、作業効率も落ちることからも、クリアランス(廃棄物のリサイクル)を進めていく必要があります。

放射性廃棄物の分析なども社内で取り組み、廃炉技術の醸成や人材育成を進め、廃炉事業のパイオニアになるべく努力している様子がうかがえました。

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廃止措置の及ぼす経済的影響は、すべての原子炉が運転停止している分を埋めるのがやっと、という状態。

すなわち「廃炉特需はない」とのことです。

むしろ防波壁(柏崎刈羽では「防潮堤」)を建設するとき、地元コンクリート事業者に大量発注があったなど、安全対策の方が地元への経済的影響が大きかったようです。

3、4号機の再稼働については、南海トラフ巨大地震で想定される震度や津波の高さの基準値が決まるのを待っている状態だそうです。

印象的だったのは研修施設に設置された「失敗に学ぶ回廊」と呼ばれるスペースです。

ここでは過去の浜岡発電所での失敗事例を検証するパネルや、破損品の実物、当時の新聞記事などを展示し、社内の安全教育に利用しているとのことでした。

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浜岡原子力発電所は、3・11のあと当時の菅直人首相の意向で運転停止となり、安全対策の途中で規制基準が変わるなど、政治的な影響を強く受けています。

それでも様々な課題に真摯に向き合い、社内一丸となって前向きに取り組んでいる中部電力さんの姿勢に、大いに感銘を受けました。

同じ課題を抱える原子力発電所立地地域の住民として、色々と考えさせられた実のある研修でした。

同行していただいた秋庭悦子先生、ETC(フォーラム・エネルギーを考える)の西園様、そして温かく対応してくださった中部電力の皆様に心より御礼申し上げます。

2018年9月21日 (金)

入門編 原子力発電の廃止措置とは?

「くらしをみつめる・・・柏桃の輪」勉強会に参加しました。

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テーマは

「入門編 原子力発電の廃止措置とは?」

講師にNPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長・秋庭悦子先生をお迎えして、原子力発電所の廃止措置(=廃炉)の方法や課題について伺いました。

秋庭先生は原子力委員会委員や資源エネルギー庁のクリアランス検討委員等を歴任されていらっしゃいます。

廃止措置とは発電を終えた原子力発電所から、施設を解体するなどして放射性物質を取り除くことです。

現在の日本には57基の原子力発電所があり、福島第一・第二を含む22基の廃止措置が決定または見込まれています。

電力会社は廃止措置計画を作り、国の原子力規制委員会の審査・認可を得ます。

そして計画とルールに沿って安全に作業を進めます。

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大まかな手順は

①燃料の搬出

②汚染の除去

③安全貯蔵(放射性物質の減衰を待つ)

④原子炉などの解体・除染

⑤建屋などの解体・周辺施設の除去

⑥廃棄物の処理・処分

つまり放射性物質を極力取り除いてから解体作業を行うというもので、約30年かかります。(火力発電は1~2年)

また費用は電力会社負担であり、原子炉の大きさに応じて360億円~770億円程度だそうです。

(火力発電は高くても36億円程度)

解体で発生する廃棄物は約15億トン~約50億トンという膨大な量です。

これらの汚染状況を調べ、放射線量に応じた安全確保のもと丁寧に作業を行います。

放射性廃棄物は埋め立てることになっていますが、処分場はまだ決まっていません。

廃棄物のうち、人の健康への影響がほとんどないものをクリアランスレベルと呼び(=0.01ミリシーベルト以下/年)、国の安全確認を経て資源としてできる限りリサイクルします。

これを「クリアランス制度」といいます。

日本ではこれまで約400トンに対して国の確認が行われ、うち230トンが再利用されていますが、まだ発電所内に留まっています。

大量の廃棄物を少しでもリサイクルするためには、クリアランスの適用を拡大し、発電所外の一般物品にも使えるようにすることが必要です。

でも放射性物質に対する拒否反応の強い日本では、理解活動が大きな課題となるでしょう。

こうした廃炉事業による経済効果は不透明であり、原子力発電所の稼働停止に伴う経済的影響を補えるとは限りません。

また従業員の数も、運転時に比べるとかなり少なくなります。

そして廃止措置が開始されれば、これまでの原子力交付金は入りません。

廃炉に対するものは交付期間が10年と定められています。

つまり作業年数30年のうち、残りの20年は交付金なしの状態となるのです。

作業技術も原子炉の運転とはまったく異なるため、新たな人材育成が必要になります。

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日本では現在、電力会社が廃止措置を行っていますが、スペインでは廃止措置の間は別の事業者に所有権を移し、措置完了後に再び更地を電力会社に戻しているそうです。

このように廃炉には多くの課題があり、「廃炉ビジネス」や「原発ゼロ」はそう簡単ではないということが理解できました。

原子力発電所立地地域の住民として、他の方々と知識や意識を共有しながら、地域の将来を考えていきたいものです。

秋庭先生、貴重なお話をありがとうございましたm(__)m

2017年9月30日 (土)

原子力発電に未来はあるか?

今日は「くらしをみつめる・・柏桃の輪」勉強会でした。
講師は竹内 純子先生。
「原子力発電に未来はあるか?」というテーマでご講演いただきました。

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原発については、反対する声や否定的な意見の方が報じられる傾向にあると思います。

また選挙のたびに「原発ゼロ」を掲げる候補や政党が現れるなど、常に政争の具になっている側面もあります。

ですが原発導入の背景には、本来「エネルギーはなくて当たり前」の日本が「当たり前のようにエネルギーがある」状態にする為に重ねてきた、先人達からの苦労や努力があることも、認識しなければなりません。

また原発が稼働しなくても電力が安定供給されている裏側には、化石燃料を海外から調達するリスク、再生可能エネルギー賦課金による負担、火力発電によるCO2排出と地球温暖化・異常気象への影響・・等々、私たちの生活に関わる諸問題があるのです。

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参加者の中には、以前に竹内先生の講演を聞いたことを機に、ご自宅の電気料金推移をずっと記録してきた方がいらっしゃいました。
原発がまったく稼働しなかったこの数年間で、電気料金は1.4倍まで上がっているそうです。

竹内先生のお話でも、電気料金高騰により、生活弱者の受けるダメージや、電力消費量の多い中小企業の経営が脅かされている過酷な事例の紹介がありました。

その他、原子力発電所の地域貢献について、発電量に応じて地域に税収がもたらされ、それを地域の災害対策に充ててはどうか、とのご提案もありました。

福島の痛ましい事故を教訓に、発電所は安全性を高めていますが、住民もまた防災力向上のための自助努力が必要ではないかと感じました。

様々な角度から、原子力発電を取り巻く諸問題を検証され、わかりやすく誠実にお話しいただいた素晴らしいご講演でした。

原子力発電、そして日本のエネルギーに未来があるかどうかは、私たち国民・住民の考え方や選択、そして行動によるところが大きいと感じます。

日本人として、また立地地域住民として、きちんと向き合っていきたいものです。

竹内先生、本当にありがとうございました。
 

2017年9月 9日 (土)

地層処分の仕組み・技術的背景・そして日本の地下環境について

「くらしを見つめる・・・柏桃の輪」勉強会にて、高レベル放射性廃棄物の地層処分について学びました。

講師は名古屋大学博物館教授・吉田英一先生。
具体的事例を交えながらの、とてもわかりやすいご講演でした。

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昨秋にも別の会でお話を伺っていたのですが、

http://step-one.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-fd00.html

今回は日本各地の地質環境が地層処分に好ましいかどうか示した「科学的特性マップ」が出されたこともあり、興味深く拝聴しました。

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主な内容は以下の通りです。

○原子力発電に対するスタンスに関係なく、放射性廃棄物の処分は必要。

○放射性物質には半減期があり、何十万年~の長いスパンではあるが減っていく。

○様々な方法が検討されてきたが、(宇宙処分、氷床処分、海洋処分、海溝処分など)もっとも現実的で安全性が高いのが地層処分。

○地層処分の発想の原点は、アフリカ・ガボン共和国の「オクロ天然原子炉」。
自然の状態で、地下で核分裂反応が生じた跡(化石)。
今から20億年前に発生し、地層に閉じ込められていた。

○地層処分は、高レベル放射性廃棄物(放射性物質をガラスに閉じ込めたガラス固化体)を、金属容器に封入し(オーバーパック)、その周りを締め固めた粘土で覆い(緩衝材)、地下深くで保管する方法。

○ガラス、オーバーパック用の鉄、粘土、そして地層それぞれに放射性物質を閉じ込める性質がある(多重バリア)。

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○地下の岩石・地質には状態を維持する働きがある。

○日本の地質環境は、その土地により性質が異なる。

○科学的特性マップには、政治的な配慮はなされず、あくまでも地球的・地層的な点から地層処分に好ましいかどうかを示してある。

○火山・火成活動、断層活動、隆起・浸食などがある地域は、地下深部の長期安定性から見て好ましくないとされている。

○鉱物資源が存在する地域も、将来それを取り出す可能性を考え、好ましくはないとされる。

○上記に該当せず、長期安定性が見込める地域は、「好ましい特性があると確認される可能性が相対的に高い地域」として示されている。

○「輸送面でも好ましい地域」は、長期安定性に加え、海岸から20㎞程度を目安とした範囲。

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○瑞浪、幌延にある地層処分の研究施設は、地上~地下環境を乱さず掘削する方法を探り、地下岩盤の調査手法を確立することが大きな目的。
(日本は石油、石炭採掘などで地下に穴を掘ってきたが、地質を調べることはなかった)

○瑞浪、幌延の施設はあくまでも借地であり、このまま処分地にはならない(科学的特性マップ上でも、好ましくはない地域)。

5~8年後には返還時期が来るが、地層処分が現実的に進展するまでは、教育・研究施設として維持すべきでは?と考える。

○マップが出たからといって、すぐに処分場が決まることにはならない。これを機に国民の関心か高まり、議論がなされることが大切。

○地層処分が現実的に進むまで、まだまだ長い年月を要する。
それまでの間、地下環境に関する知見の蓄積、技術の高度化と継承、そして持続的な人材育成が必要。

***************

将来への責任として、私たちの世代で処分問題を前進させたいものです。

2016年10月15日 (土)

高レベル放射性廃棄物の地層処分

先日、エネルギーの勉強会で、高レベル放射性廃棄物の地層処分について学びました。

講師は名古屋大学博物館・大学院環境学研究科教授の、吉田英一先生。
地質学の見地から、地層処分の科学的根拠について詳しく伺いました。

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原子力発電の大きな問題のひとつが、廃棄物の処理です。

資源の乏しい日本では、いちどエネルギー生産に使った燃料=使用済核燃料を、再処理してウランやプルトニウムを取り出し、有効に利用することにしています。

再処理したあとに残る放射線量が高い物質は、液状にして分離します。
この廃液をガラス原料と高温で溶かし合わせ、ステンレス製容器(キャニスター)の中で冷やし固めます。(=ガラス固化体)

このガラス固化体を「高レベル放射性廃棄物」といいます。

今の日本には2500本近くのガラス固化体があり、ほとんどが青森の六ヶ所村再処理施設内で貯蔵されています。

一方、再処理前の使用済核燃料は、原子力発電所の建屋内に保管され、ガラス固化体にすれば2万~2万5000本に相当します。

たとえ日本が原子力発電をやめても、廃棄物は残るのです。
これこそ次世代に残してはいけない、大きな課題です。

ではどうすれば?
解決策として考えられているのが「地層処分」です。

これは、ガラス固化体を地下300m以深の地層に埋めて、人間の生活環境から隔離する方法です。

放射性物質には、時間の経過とともに他の元素に変わり、放射線量が減るという性質があります。
ガラス固化体も、作られた当初は放射線量が高いですが、1000年後は9割以下となります。
つまり長い年月、隔離し続けることが重要です。

隔離方法としては、氷床処分、海洋底処分、宇宙処分、海溝処分など、様々な方法が検討されてきましたが、現在、世界的に進められているのは「地層処分」です。

約40年前、アフリカのオクロでウラン鉱床発掘中に、地下400m地点で原子炉反応の化石が発見されました。

調査の結果、20億年前に自然状態で核分裂反応が起こり、放射性物質は地層に閉じ込められていたことがわかりました。

このオクロ天然原子炉をもとに、自然の特性を生かし、地下深くに放射性物質を隔離する「地層処分」が考え出されたそうです。

地層処分は、ガラス固化体とそれを覆うオーバーパック・緩衝材による人口バリアと、地下の岩石や粘土などによる天然バリアを組み合わせた「多重バリア」によって、放射性物質を閉じ込めます。

ガラスというと脆いイメージですが、水に溶けにくく化学的に安定しているので、放射性物質を閉じ込めるのに適しています。

実際にガラス固化体のサンプルや、200年前のウランガラス、オーバーパックの原料になる鉄で作られた古代のくぎ等を触らせていただき、自然素材の安定性を感じました。

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現在、日本では瑞浪、幌延の地層研究所で、様々な調査研究が行われています。

近々、日本の地質特性を根拠とした科学的有望地が、エリアマップとして公表されるそうです。
これを機に国民が地層処分に関心を持つことを期待したい・・とのお話でした。

吉田先生のお話は、大変わかりやすく面白く、地層処分が自然や物質の特性を生かした方法であることが、よく理解できました。

原子力の賛否に関わらず、放射性廃棄物の処分は、私たちの世代で進めていかなければいけないと、強く感じた講義でした。

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