社会問題

2023年1月12日 (木)

マイナンバーカードが届くまで

「マイナンバーカードを申請したのに2か月近く経っても届かない」というご相談をいただき、担当課から申請→交付までの流れを伺いました。

①交付申請する

②市は国が委託するJ-LIS 地方公共団体情報システム機構 に申請情報を送付

③J-LISでカードを作成して市に送る(マイナンバーカード総合サイト )*この間3週間~1か月

④市がカードを使えるように設定する

⑤カードを使えるようになった人に市から通知を発送(週1回・700~1000人分:設定できた分)

⑥通知が届いたら、記載された本人確認書類を持って市役所に受け取りに行く

⑦本人が受理したことを確認→「交付」としてカウントする

ただし、申請時に本人確認の要件を満たせた人は、カードを使えるようになったら、確実に本人が受け取る方法(書留など)で郵送しているそうです。(逆に申請時に本人確認の要件を満たせない場合は、交付時に確認するとのこと)

マイナポイント第2弾の効果もあってか、11月~12月は申請者が多く、④の設定が追い付かない状態だったそうですが、12月には会計年度任用職員を2名増員し、10名体制で対応(11月の随時会議で補正予算可決。財源は国費)しているそうです。

また設定用のタブレットも増台(納品待ち)して、スピードアップを図るとのことでした。

ちなみに令和4(2022)年12月末の申請率は約65%、交付率は56.8%ですが、分母は新年1月1日付なので、その後の人口増減が反映されていないそうです。

現在のマイナンバーカード交付率は全国平均57.1%。

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また令和5年1月11日付の新潟日報によれば、令和4年12月末の柏崎市の交付率は新潟県内30市町村のうち8位、お隣の刈羽村は2位68.2%でした。

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交付率を上げるには、マイナンバーカードの必要性やメリット、安全性を更に周知すること、また申請~交付を迅速に行うこと、そしてマイナンバーカードを持つことによって、どのように生活が向上するのか示すことが必要だと感じたところです。

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新潟県マイナンバーカード特設サイト

2022年12月26日 (月)

多頭飼育崩壊を防ぐために

12月26日、新潟県動物愛護センターの金子先生、柏崎地区担当の青柳さん、柏崎ファミリーキャットの西川代表とともに、柏崎市市民生活部を訪問し、「多頭飼育対策」についての課題認識・情報の共有を行いました。

多頭飼育問題は社会的な課題となっており、環境省からは「多頭飼育対策ガイドラインpdf」も出されています。

中でも猫はその繁殖力の高さから(交尾すれば100%妊娠)多頭飼育崩壊が起こりやすく、柏崎市でも数年前に80匹以上の猫が愛護センターに引き取られる事案が発生しているそうです。

多頭飼育それ自体が悪いわけではありませんが、適切に飼養管理できなくなれば、飼い主の生活環境・動物の状態・周辺環境の悪化につながります。

特に判断能力や自己管理能力が低下している方々が、多頭飼育崩壊を起こす傾向があるようです。

実際の多頭飼育崩壊の現場写真を見せていただきましたが、不衛生な室内で猫同士の共食いが行われるなど、悲惨な状況でした・・

多頭飼育問題は「人」が原因で起こります。

動物愛護行政をメインで担うのは県ですが、人に関わる諸問題に対応するのは市であり、お互いの協力・連携は不可欠です。

ここに民間団体(柏崎ファミリーキャット)が加わり、多頭飼育崩壊を未然に防ぐとともに、適切な動物飼養についての普及啓発をはかることが、「人と動物の共生社会」実現につながると思います。

今回の訪問ではそれぞれの情報・意見交換のほか、今後の周知やプラットフォームづくりなどについても、前向きな協議をさせていただきました。

年末のお忙しい中、ご対応いただいた県および市担当の皆様、ありがとうございました。

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2022年10月 6日 (木)

多職種合同研修会「身寄りのない人への支援を考える」

10月6日、在宅医療・介護連携支援センターの令和4年度多職種合同研修会 「身寄りのない人への支援を考える」~明日から私たちにできること~に出席しました。(新潟県栄養士会柏崎支部 地域活動事業部)

以下はその内容です。

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開会挨拶 小川センター長
令和3年度までセンターではACP を取組み課題としてきたが、令和4年度からはひとり暮らしの高齢者の見守り・看取りを課題として進めていきたい。

*アドバンス・ケア・プランニング(ACP)=人生会議
将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、患者を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者の意思決定を支援するプロセスのこと。 患者の人生観や価値観、希望に沿った、将来の医療及びケアを具体化することを目標にしている。(引用:東京都医師会)

情報提供
・魚沼市社会福祉協議会地域福祉課長 佐藤直樹 先生 

【プロフィール】
1975年魚沼市ご出身の社会福祉士、精神保健福祉士。元海上自衛官。2004年~社会福祉協議会に入職し、生活困窮者自立支援事業や貸付事業、日常生活自立支援事業、法人後見事業などを担当。
貢献業務で直面した『身寄りなし』の問題に、行政や地域の関係機関と取り組み、「魚沼市における身寄りのない人への支援に関するガイドライン」作成に関わる。

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◆魚沼市の紹介
・平成16年11月1日に6町村が合併して誕生。
・人口34,364人(R4.1)‐13,164世帯
・高齢化率37.7% 
・障害者手帳所持者(生涯未婚率)
 →身体1,413人(35%)、知的373人(97%)、精神400人(64%)
*生涯未婚率が高い=身寄りがない
・自殺死亡率34.4%(R1)

ガイドライン策定の背景と経緯

◆身寄りがないことで困った事例①
「病院で延命治療を迫られた」
<トラブル発生!>
認知症だが福祉サービスを利用して一人暮らしをしていたAさん(認知症・知的障害の疑い・息子がいるらしいが所在不明)が、肺炎を起こして病院に救急搬送された。成年後見人により入院手続きは済んだが、翌日、看護師から人工呼吸器設置の判断を成年後見人に迫られた。

<とりあえずの対応>
看護師には、後見人には判断できないと伝えた後、包括支援センターと市福祉課から集まってもらい、対応について協議した。また、これまでAさんに関わった関係者に、「Aさんだったらどう答えると思うか」を聞いて回り、Aさんの意思(推定)=「自由に生きてきたAさんは延命治療を望まないのではないか」を病院に伝えた。

<事例①の問題点>
・成年後見人等に対する過剰な役割期待
・延命治療等に対する本人の意向がわからない(伝える人がいない)
*「親族の同意がなければ治療ができない」とは異なる問題。
→「身寄りがない人の入院及び医療に関わる意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」で、身元保証人・身元引受人等がいないことを前提とした医療機関の対応方法を示している。

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」
(1)本人の意思が確認できる場合:本人による意思決定を基本とする
(2)本人の意思が確認できない場合:家族等による本人の推定意思を尊重する
*家族等とは、法的な意味での親族関係のみを意味せず、親しい友人等を含む

「身寄りがない人の入院及び医療にかかる意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」
【身元保証・身元引受等】も機能や役割について整理を行い、既存の制度やサービスの利用など、【身元保証・身元引受人等】がいないことを前提とした医療機関の対応方法を示す

◆身寄りがないことで困った事例②
「親族の拒否があり亡くなった後の手続きが心配」
<トラブル発生!>
酒癖が悪く、酔っては妻子に暴力をふるっていたBさん(認知症で特養入所・県外に長男夫婦がいるが関係拒否)は、長男が中3の時に離婚し、それ以来家族との連絡はない。3年前に施設入所にあたり成年後見制度を申立てるが、長男に申立の意向確認文書を郵送したところ、受け取りを拒否された。成年後見人が就いたことで施設入所はできたが、亡くなった後の手続きをしてくれる人がいない。

<とりあえずの対応>
死後の意向を成年後見人が本人に確認。先祖代々の墓や檀家寺は確認できたが、火葬などの死後手続きは誰が行うのか、解決されない課題が残された。

<事例②の問題点>
・墓地埋葬法9条による対応が市(職員)によって異なる?
「墓地埋葬法9条」
 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
2 前項の規定により埋葬又は火葬を行ったときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治32年法律第93号)の規定を運用する。
この中で、死亡人においては死体の埋葬または火葬をするよう定めている。また、死亡人の取扱いに要した費用については、遺留の金銭や有価証券をこれに充てること、それでも足りない場合で、相続人や扶養義務者がいない時や明らかでない時は、遺留物品を売却してその費用に充てるものとしている。

◆身元保証の問題
「高齢者の身元保証に関する調査」を総務省関東管区行政評価局が実施。
身寄りのない高齢者の入院・入所に当たっての身元保証人の取扱いや実態を把握するとともに、その際の取組み事例や課題を収集・整理し、関係行政の改善に資することを目的として実施している。
第2集「支援の取り組み事例集」、第3集「意見要望集」が発行されている。

◆身寄りなし問題を考える勉強会(魚沼市社協)
平成30年度に、成年後見制度の普及啓発を目的に「身寄りなし問題を考える」と題して研修会を開催。
参加者から“もっと深く勉強したい”との声を受け、連続勉強会を開催。

令和元年
6月20日【成年後見制度】
 日常生活自立支援事業と成年後見制度の概要を学ぶ(42人)
7月18日【身元保証・身元引受】
 「新潟県における身元保証人等に関する実態調査結果報告書」解説(39人)
8月22日【医療同意】
 「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」読み合わせ(43人)
9月19日【死亡事務】
 横須賀市の就活支援について学ぶ(73人)
10月17日【振り返り】
 これまでの勉強会を振り返り、今後の展望を考える(30人)
★学んでも学んでも不安・・⇒ガイドライン策定を望む声

◆経過の外観
H27年
・法人後見開始
・市から普及啓発等受託
H28年
・講談で学ぶ成年後見制度
H29年
・成年後見笑百科(NAMARAに依頼)
H30年
・親なき後問題を考える
・身寄りなし問題を考える
「議員にも案内を!」との声を受け、市議会にも案内を出す
R元年
・連続勉強会(市議会議員20人のうち10人が参加:延べ24人)
*市議会一般質問で2名の議員が質問
・第1回編集部会(1/20)
・策定委員委嘱
・第1回策定委員会(2/21)
*新型ウイルス流行
R2年度
・第2回編集部会(7/7)
・第2回策定委員会(8/21)
・第3回策定委員会(9/1)
・ガイドライン策定(11/1)

ガイドラインの概要

魚沼市における身寄りのない人への 支援に関するガイドライン

◆ガイドライン策定構成員
<策定委員(当時の役職)>
・一般社団法人 小千谷市魚沼市医師会 理事
・公益社団法人 新潟県看護協会うおぬま支部 支部長
・社会福祉法人 魚沼更生福祉会 六花園 園長
・社会福祉法人 魚沼福祉会 特別養護老人ホーム美雪園 園長
・新潟県介護支援専門員協会 会員
・新潟県魚沼地域振興局健康福祉部 部長
・魚沼市消防本部 消防長
・魚沼市市民福祉部 副部長
・社会福祉法人 魚沼市社会福祉協議会 事務局長

<編集部員>
・在宅医療推進センター コーディネーター
・魚沼市立小出病院 地域医療連携室 地域医療連携科長
・社会福祉法人 魚沼福祉会 特別養護老人ホームうかじ園 生活相談員
・魚沼市社会福祉協議会 介護福祉課 課長
・うおぬま相談支援センター センター長
・行政書士
・魚沼市消防本部 警防課 救急係長
・魚沼市市民福祉部市民課 課長
・魚沼市市民福祉部福祉支援課生活支援係 係長
・魚沼市地域包括支援センター 社会福祉士

<アドバイザー>
・弁護士
・身寄りなし問題研究会 代表
*社協と市だけではなく各分野の「顔役」によって構成。
*社協は医師会との関係が薄いため、市に仲介を依頼した。
 
◆ガイドラインの目的
1,本人の権利擁護支援
身寄りのない人がスムーズに医療・介護・福祉・その他サービスを受けられるようになること
2、支援者の支援
 身寄りのない人に関わる支援者の不安や負担を軽減すること
3,成年後見制度の普及啓発
 成年後見制度の正しい知識の普及によって、医療・介護関係者と成年後見人との連携強化
(成年後見人がどこまでできて何をする人か、まだ十分知られていない)

◆ガイドラインの基本的な考え方
1,対象者
ガイドラインの支援の対象である「身寄りのない人」とは
①家族や親族が全くいない人
②家族や親族がいても様々な理由で支援を受けられない人
・疎遠、関係を拒絶されている
・遠方に居住

2,自己決定の尊重・意思決定支援
・すべての支援は本人の意思(希望)に基づき提供されることが基本。
・支援が困難になるほど、支援者の価値観で決めてしまっていないか?
・意思疎通が困難でも、本人には意思があり、意思決定能力を有することを前提に、意思決定を支援する。
・一人の支援者の独断ではなく、チームにおいて本人の情報を収集・記録・共有することが大切。
*チームは専門職に限らず、本人が信頼している人、本人のことを親身に考えてくれる人を指す。

◆身寄りのない人への具体的な対応
<判断能力の状態>
①本人の判断力が十分な場合
②本人の判断能力が不十分で成年後見制度を利用している場合
③本人の判断能力が不十分で成年後見制度を利用していない場合

A:自宅で起こる問題
(1)災害時及び緊急搬送時の緊急連絡先
事前の備えが大切!
・自宅に救急通報装置を設置する(介護高齢課)
・災害時に避難が難しいことを登録しておく(防災安全課)
・緊急連絡先や持病などを登録しておく(うおぬま米ねっと事務局*クラウド)

(2)福祉サービスの利用契約やケアプラン等の同意
①相談機関員が分かりやすく説明し、本人が契約する。
②成年後見人等が本人の意向を確認した上で、代理で契約する。
③必要に応じて、成年後見制度または日常生活自立支援事業の利用を検討する。(福祉支援課/魚沼市地域包括支援センター/魚沼市社会福祉協議会)

(3)預貯金の払戻しや公共料金等の支払いなど金銭管理
①本人が自ら管理する。必要に応じて日常生活自立支援事業や任意後見制度の利用を検討する。(魚沼市社会福祉協議会)
②成年後見人等が本人に確認した上で、代理で支払う。
③必要に応じて、成年後見制度または日常生活自立支援事業の利用を検討する。(福祉支援課/魚沼市地域包括支援センター/魚沼市社会福祉協議会)

(4)葬儀や遺品の処分などの死後事務
①あらかじめ遺言及び死後事務委任契約を結んでおく。(長岡公証人合同役場)
②後見類型の場合、成年後見人が一部の死後事務を行うことができる。火葬などを行う者がいない時は、市町村が行う。(福祉支援課)

(5)賃貸住宅への入居
大家や民間不動産などに、保証人不用を求めることは困難であり、今後、新たな住宅セーフティネット制度の促進を検討する。

(6)空き家の問題
事前に空き家対策を検討する。
・空き家バンクに登録する。(地域創生課)
・あらかじめ遺言及び死因贈与契約を結んでおく。(新潟県弁護士会/新潟県司法書士会/新潟県行政書士会)

B:病院・施設で起こる問題
(1)緊急連絡先
①友人・知人がいない場合は、支援シートを活用して関係者間で役割等を確認しておく。
②成年後見人に緊急連絡先として求める役割を説明して、連絡先となることを依頼する。
③関係機関と支援シートを活用して、緊急時の役割等を確認しておく。
また民生委員・児童委員が把握している場合もあるので、本人と相談の上で連絡を取る。(民生委員児童委員協議会事務局)

(2)入院費及び施設利用料の支払い
①原則本人が支払う。本人が経済的に困窮している場合は、生活保護の申請を検討する。(福祉事務所/生活困窮者自立支援窓口)
②成年後見人等が本人に説明した上で、代理で支払う。
③必要に応じて、成年後見制度または日常生活自立支援事業の利用を検討する。(福祉支援課/魚沼市地域包括支援センター/魚沼市社会福祉協議会)

(3)日用品等の準備・購入
①本人及び緊急連絡先の方が準備できない場合は、有償ボランティアや介護保険外サービスで対応。
②成年後見人等が、有償ボランティア及び介護保険外のサービスを調整する。
③本人の意思が確認できずサービスの契約ができない場合は、成年後見制度の申立てを検討する。

(4)入院計画書やケアプラン等の同意
①本人が行う。
②本人と成年後見人等に説明し、成年後見人等が本人の代理で署名する。
③支援を尽くしても本人の意思を確認できない場合は、その旨をカルテ等に記載する。

(5)医療行為(手術、延命治療など)の同意
①医師等から十分な説明を受けた上で、本人が最終的な治療方法を選択肢同意する。 ②「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の考え方を踏まえ、慎重な判断を行う。

(6)退院・退所の際の居室の明け渡し及び退院・退所先の確保
①入院・入所に関わった支援者と、本人の意向を確認する。
②上記に成年後見人等を加え相談する。
③成年後見制度の利用を検討する。

(7)亡くなった際の遺体の引き取り及び居室の明渡し
①あらかじめ遺言及び死後事務委任契約を結んでおく。(長岡公証人合同役場)
②後見類型の場合、成年後見人が一部の死後事務を行うことができる。
③火葬などを行う者がいない時は、市町村が行う。(福祉支援課)

◆ガイドラインのまとめ
・チームによる支援・・チーム作りのツールにしてほしい
・権利擁護、意思決定支援・・単なるマニュアル本でなく、意思決定支援のきっかけにしたい
・関係者でつくり上げていくもの・・より現場に即したものに改良していきたい

<おわりに>
 身寄りのないことで起こる問題は多岐に渡り、それぞれの背景や事情で対応は異なる。本ガイドラインでそれらすべてが解決できるわけではない。
 最終体には、その人に関わる関係機関が、力を合わせて知恵を出し合い、個別に対応することになる。
 そこで大事になるのはチームによる支援であり、本ガイドラインは本人を支えるチーム作りのツールとして活用していただきたい。
 また、チームによる支援を進める上では、本人の意思決定を支援するとの視点を忘れてはならない。
その支援が真に本人の意思(希望)に基づき、身寄りのない人の権利擁護というガイドラインの目的にかなうためには、常に本人を中心に置き、本人の自己決定を尊重する姿勢が大切。
今後は、本ガイドラインを活用した支援の事例を検証し、より現場に即したものになるよう見直していきたい。ガイドライン活用により、身寄りがなくても安心して暮らせる地域づくりを推進することを期待している。

支援シートの概要

◆支援シート
「身寄りなし問題」の本質は、これまでの日本の医療・介護・福祉が家族による支援を前提としてきたことと、本人の希望や“本人ならこう言うだろう”といった推定意思を伝える仕組み(これも家族の機能)がないことである。そうした、これまで家族に求められてきた機能・役割を、本人で支えるチームで代替えすることぬ寄り、身寄りがないことにより起こる問題の解決を目指すシート。

<意思決定支援>
・重度の認知症や知的障害があっても、本人には意思があり、意思決定能力を有することを前提として関わる。
・本人が判断するために必要な情報を、本人が理解できる分かりやすい言葉や文字、図や絵などで説明する。その際、支援者側の価値判断を挟まず、本人にとっての利益・不利益を一緒に考えていく姿勢が大切。
・本人が安心して意思を表明できるよう、支援者の態度や人的・物的環境の整備に配慮する。
・支援を尽くしても本人の意思を確認できない場合は、家族等(法的な意味での家族関係のみでなく、本人が信頼を寄せ、本人の利益を考え支える人)から本人の意思を推定できる情報を収集し、それを基本として本人にとっての最善の方策を検討する。ただし、これは代理代行決定で、意思決定支援とは区別して理解すべき。

<Assumptionとは?>
・感情、意見、行為の根っこにある前提、価値観、信念
・「こうあるべき」「こういうもの」
・自分にとっては「当たり前」で気づきにくい
  ↓
コミュニケーション不全の原因に!
相手と自分の中にあるAssumptionの違いを知り、双方の長所と短所を認めること
*同意・共感はしなくてOK

<Talking Mat>
 トーキングマット(Talking Mat)は、1998年に、スコットランドのスターリング大学研究者が開発した意思決定支援(コミュニケーション支援)ツール。主にソーシャルワーカーやSLT(言語聴覚士)などの専門職が、認知症高齢者、学習障害・知的障害のある人、その他輝北保持やコミュニケーション等に支障がある方に対する支援策として活用されている。
 自宅での過ごし方、外出先の過ごし方、セルフケア、仕事、お金の使い方、医療に関することなど様々なテーマが設けられている。
【基本的な使い方】
1、獲得目標に沿ったテーマとスケールの内容を決め、本人に説明。
2、テーマに合わせたオプションカードを対象者に1枚ずつ渡し、任意の場所に置いてもらう。
  カードに関連する質問も適宜行う。
3、置かれたカードの意味と置いた場所の変更の有無を確認する。
4,同意を得て写真撮影。ケア記録等に綴じておく。

<役割分担シート(様式1)>
 福祉サービスの利用や入院・入所の際に、本来なら家族等に依頼する役割を、本人を支える支援チームで分担することで、身元保証人等がいなくてもスムーズにサービスを利用できるようにするもの。
 本人の意思に基づく支援であることが重要なので、会議は原則本人参加で行う。
 聞き取った内容をまとめ、本人と支援チームに配布し共有する。

【役割項目】
・緊急連絡先に関すること
・サービス方針に関すること
・利用料の支払い等、金銭管理に関すること
・入院・入所の準備に関すること
・退院・退所に関すること

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<“もしもの時”の意思確認シート①(様式2-1)>
自分が望む医療やケアについて、前もって考え、繰り返し話し合い、共有する取り組みを「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」と呼ぶ。そうした話し合いのきっかけにするためのシート。

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<“もしもの時”の意思確認シート②(様式2-2)>
 本人が亡くなった後の、葬儀や遺品の整理などについて、前もって本人の希望を聞き取り、もしもの時に葬儀を行う人(喪主等)に伝えるためのシート。

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<死亡事務確認シート(様式3)>
本人が亡くなった後の諸手続きについて、事前に支援チームで役割を決めておくためのもの。
*これら話し合った内容を支援シートにまとめ、【うおぬま米ねっと】に保存することで、本人の意思を伝えるという家族の役割をカバーできるかもしれない。

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【うおぬま・米(マイ)ねっと】
 魚沼地域(十日町市・魚沼市・南魚沼市・湯沢町・津南町)の病院や診療所、調剤薬局、介護施設、訪問看護などをネットワークで結び、患者及び利用者の診療情報や介護情報等を共有する仕組み。
 この仕組みを利用することで、効果的に安全・安心な医療を提供すること及び、救急搬送時の迅速な治療につなげられるという効果も期待される。

★ちょこっと裏話
【もしもの時の意思確認シート(当初の案)】
病気が治る見込みがなくても、以下のような延命治療を希望しますか?
●心臓や呼吸が停止した時
□人工呼吸や心臓マッサージ等、生命維持のための最大限の治療を希望する
□人工呼吸や心臓マッサージは希望しない
●食事を口から食べられなくなった時
□高カロリー輸液や胃ろうなどによる継続的な栄養補給を希望する
□継続的な栄養補給は希望しないが、点滴などによる水分補給は希望する
□点滴などによる水分補給も行わず、自然に最期を迎えたい
  ↓
却下(小出病院院長より相応しくないとのご意見)
  ↓
【“もしもの時”の意思確認シート①(様式2-1)*修正後】
①希望する治療やケアについて相談している人はいますか
②“もしもの時”に治療やケアの判断を任せても良いと思える方はいますか
③回復が難しい状態になった時、どのような治療を望みますか

*あなたの考えに沿った治療やケアを受けるために、あなたが大切にしていることや望んでいることを、まずは自分自身で考え、周囲の信頼する人たちと話し合い、共有することが重要です。そうした取り組みを「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」と呼びます。

<わたしの想いノート(ACPのきっかけに・・)>
1,もしも、生きることができる時間が限られているとしたら、あなたが大切にしたいことは何ですか?
2,もしも、治らない病気などになり、自分の想いを伝えられなくなったら、どんな治療やケアを受けて過ごしたいですか?
3,もしも、治らない病気などになったら、どこで過ごしたいですか?
4,もしも、治療や生活について自分の想いを伝えられなくなったら、あなたの代わりにあなたの想いを伝えて話し合ってほしい人はだれですか?

<支援シート活用のタイミング>
●役割分担シート(様式1)
・救急搬送されて入院になったけど身元保証人がいない(病棟看護師)

●“もしもの時”の意思確認シート①(様式2-1)
・高齢だし、またいつ体調を崩して延命治療の判断が必要になるか心配だわ(ケアマネージャー)
・本人が望む医療や介護を提供してあげたいから元気なうちに話を聞いておこう(MSW)

●“もしもの時”の意思確認シート②(様式2-2)
・本人から自分が亡くなった後の相談を受けた(民生委員)

●死後事務確認シート(様式③)
・身寄りがないから、ある程度のことは自分でやらなきゃだよな。でも一人じゃ不安だな(成年後見人)
・近所の人から、この人が亡くなったら、市が総指揮してくれるの?という相談があった(市役所職員)

ガイドラインの活用状況・今後の展望

「魚沼市における身寄りのない人への支援に関するガイドライン」活用状況調査結果報告書

<調査の概要>
■調査の目的
 本調査は、令和2年11月に策定した「魚沼市における身寄りのない人への支援に関するガイドライン」活用状況について、市内関係機関に対して行ったアンケート調査の結果をまとめたものであり、ガイドラインの評価検討の一助とすることを目的としています。
■調査対象
 市内関係機関100事業所にて相談業務に関わる方(行政含む)
■調査方法
 郵送による配布、FAXとGoogleフォームによる回答
■調査機関
 令和3年11月16日配布、12月31日を期限として回収

<配布・回収状況>
・行政(3課・保健所)配布4/回答4(回収率100%)回答数20
・医療機関 配布18/回答7(回収率38.9%) 回答数19
・介護保険関係 配布62/回答42(回収率67.7%)回答数86
・障害福祉関係 配布15/回答9(回収率60%)回答数16
・社協 配布1/回答1(回収率100%)回答数7
・合計 配布100/回答63(回収率63%)回答数148

<調査結果>
問1 支援の中で身寄りがないことで困難を感じたことがありますか?
・ある(87)59% 
・ない(61)41%
*約6割が困難を感じたことがあると回答。医療機関(相談員)と障害福祉(相談員)が高い割合で困難を感じている。

問2 問1で「ある」と答えた方へ。どのようなことで困難を感じましたか?(複数回答)
・連帯保証28% 
・医療同意27%
・金銭管理21%
・死後対応13%
・その他11%(入院・受信時の対応、申請等の手続、今後のケアの方向性、病状説明できない、ACPが困難、身の回りの世話、空家の管理、経済的困窮)
*行政と高齢者福祉(包括・居宅・小多機)において死後対応で困難を感じた割合が高い。その他の回答では「入院・受診時の対応」が多かった。

問3 本ガイドラインをご存知でしたか?
・知っているし活用したことがある(12)8%
・知っているが活用していない(96)65%
・知らなかった(40)27%
*活用事例自体少ないが、医療機関(相談員)での活用の割合が高い。知らなかったと回答した人が3割近くおり、周知不足が明らかになった。

問4 問3で「知っているし活用したことがある」と答えた方へ。具体的な活用事例をお聞かせください。
【事例① 残される妻が心配】
・90代夫婦、持ち家あり、妻認知症、子どもなし
・ガイドラインを参照しながら今後起こり得る問題とその対応策を話し合った。
・今後の支援の方向性が整理できた。また利用者の不安を解消できた。

【事例② 身寄りのない入院患者】
・80代男性、入院中、大腿骨骨折、離婚・子どもあり
・繰り返しACPを行い、支援シート(様式2-1、2-2)を記載。米ねっとに登録した。
・ACPのなかで本人の思いを確認でき、その意思に配慮した関りができた。
・相続人に様式2-2の本人の意向を確認できた。

【事例③ GH入居を進めているが身元保証人がいない】
・50代女性、精神科病院入院中、統合失調症、兄がいるが関係拒否
・役割分担シート(様式1)を用いて、病院、グループホーム、社協(日自)でチームを結成。
・多くの関係機関が関わっていることで安心した兄が身元保証人になってくれた。

問5 問3で「知っているが活用していない」と答えた方へ。活用できない理由をお聞かせください。
・身寄り問題の事例がない(50)56%
・支援する立場にない・ケアマネ等が対応する(10)11%
・知らなかった・使い方が分からない(10)11%
・使わないで何とかなった(10)11%
・活用のタイミングがわからない・難しい(5)6%
・本人の了承が得られない(3)3%
・ガイドラインを使っても解決できない(1)
・使いにくい(1)
*事例がないという回答が半数以上だった。続いて、使い方が分からない、タイミングが難しいという回答が多かった。使い方の研修も含めて周知していく必要がある。

問6 自由記載(意見・提案)
・今回のアンケートで確認した。今後活用する。
・好事例集や出前講座をやってほしい。
・支援シートは身寄りのあるなしに関わらず、家族間で話し合うために活用できそう。
・ガイドラインができても病院や施設の認識が薄い。行政からの働きかけが必要。
・ガイドラインをいつもカバンに入れて持ち歩いている。元気なうちに話し合っておくことが重要。

◆ガイドライン策定を通して感じたこと
・医療決定:本人ならこう言うだろうという推定意思を伝える人がいない
・死後対応:お墓がどこにある、お寺はどこ、といった情報を伝える人がいない
★身寄り問題⇔孤立⇔意思決定の問題(ACP)
*いかに本人の意思・希望を、本人の真意を代弁できる程度に、関係者で共有できるか

◆今後の展望
①意思決定支援の推進
●意思決定支援者(仮称)養成研修
 ・意思決定支援員(トーキングマット)
 ・法人後見支援員
 ・生活支援員
 ・有償ボランティア(身体介護)

②身寄り問題解決プロジェクト
●身寄りなし相談会・・R4年7月~月2回
●身寄り問題情報交換会~必要な受け皿(身元保証、死後事務、見守り)を検討
●社協まき(互助会)~本家・分家の「まき」制度から身寄りなし同士の新たな互助関係へ
 ・イベントの開催
 ・安否確認
 ・互助会葬

グループワークと発表「私たちが明日からできることは何か」

<グループ内での話し合い>
・本人の意思確認を行う中心的な人は誰か。キーパーソン?
・支援機関につながっていれば、本人の意思確認は可能だが、ひきこもりは課題。
・ひきこもり→不登校から継続するケースも。早期に「つながる」ことが大切。
・孤立する人=血縁者がいても関りを持ちにくい。
・チームを取りまとめるのは誰?→高齢者なら包括が主体
・身寄りなし同士のネットワークづくり→オンラインが有効な場合も
・色々なツールを用いて「つながる」ことが重要
★ガイドラインは柏崎市でも必要?
→策定までのプロセスで様々な立場の人達が関り、問題意識を共有することが重要。
 課題はすでに地域ケア会議で挙げているが、個別対応になり、全体の問題として認識されていない。

<発表>
・ケアマネ同士の連携
・ケアマネが交代しても情報共有できるシステム
・医療‐ケアマネの連携
・多職種会議
・役割分担シート活用
・地域連携ネットワーク
・ACPシートの活用
・マイナンバーカードにシートを組み込めないか
・市民にも啓発(くらしのサポートセンター、コツコツ貯筋体操会場など)
・ICTも大切だが、顔の見える関係での話し合いが重要
・支援者の価値観を押し付けないようにする
・人はひとりでは死ねないことを早期に教育
・ガイドラインは身寄りのない人が生きがいを持って幸せに生きるために活用

★佐藤先生より
 ・今日のように顔の見える関係で相談することに意義がある。
 ・ガイドラインをつくることが目的ではなく、顔の見える関係づくりが大切。

******

非常に充実した勉強会であり、身寄りのない人の具体的な支援方法を考えるよい機会となりました。

また多職種の方々のご意見を聞くことができ、本市の福祉の現状を垣間見ることもできたと思います。

貴重な機会をありがとうございました。

 

2022年4月19日 (火)

介護に関する勉強会

4月19日、市内某地域で介護に関する勉強会講師のご依頼をいただきました。

介護施設のことを中心に知りたいというリクエストにお応えすべく、自作した資料に基づきお話ししました。

大介護時代がやってくる(PDF)

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将来は介護施設に入りたい、という方は多いものの、「終の棲家(ついのすみか)」となる施設は限られていること、施設サービスを維持するには、介護人材確保が不可欠であること等を、柏崎市の施策とあわせてお伝えしました。

参加者の皆様からは、率直な疑問や関心事をお聞きすることができ、私自身も大変よい勉強になりました。

また演台にはお花を活けていただくなど、温かいお心遣いをいただき、和やかな気持ちで過ごせた約2時間でした。

貴重な機会をありがとうございました。

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2022年4月 5日 (火)

柏崎市「ふれあいルーム」

4月5日、柏崎市子ども未来部・子どもの発達支援課が運営する「ふれあいルーム」を、議員有志で見学させていただきました。

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ふれあいルームは、柏崎市役所分館3Fに相談室、2Fに学習室があり、休学や不登校が続くお子さんを対象に、学校復帰や集団生活への適応、社会生活での自立を支援しています。

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以下は課長さん、および指導員さんから伺った内容です。

●小中学生は皆で関わる時間を大切にしている。半日単位で午前中の利用のうち、前半は個別で、後半は皆で過ごす。

●高校生は午後からの半日利用が主となる。高校生は個別対応が望ましい場合が多い。

●学習時間・・基本的には自主学習だが、学習教材の選択が難しい子が多い。基本的には自分で学習するが、わからないままでは良くないことから、声掛けをして、わからないところはスタッフが一緒にやるスタンスをとっている。

●令和3年度は中学3年生=受験生が3名いたが、勉強する様子を小中学生の子達が見ていて、その姿を励みに自分達も頑張ろうとの意欲を持つようになった。

●ふれあいルームを利用する高校生は、今の環境に馴染めず、他の高校に行きたいとの希望を持つ子が大半。全日制、通信制、単位制など、様々な高校のパンフレットを集めて、その子に合う進路選択をサポートしている。

●公立高校の資料はダウンロードできる。私立高校は資料請求する他、直接募集担当者が出向いて、学校やふれあいルーム指導員に対して学校の詳細を説明することもある。

●ふれあいルームでは受験の面接練習をしている。中学3年生に対して行っていたが、他の学校に編入・入学したい高校生に対しても、本人の希望を聞いた上で行うことがある。本人が納得するまで模擬練習をして、自信がつくまで行う。 

●令和3年度は3人の中学3年生に対して面接模擬練習を行った。3人並んで集団面接の練習をすることで相乗効果があり、それぞれの自信につながった。

●学校のテストをふれあいルームで受けることも可能。その場合は2Fにある学習室で行う。

●学校復帰のタイミングはそれぞれだが、学校側と連携し、令和3年度の利用児童・生徒14人中12人は部分登校するようになった。

●学習指導は学校側と補いあい、子ども達が不利にならないよう配慮している。

●不登校になる子は、社会のエアポケットに陥り、近況がわからなくなる恐れがある。支援の網の目から漏れないように、学校と相互に連携していくことが必要。

●高校生の不登校は、コロナ禍の影響もあるが、多くは自分に向いていない学校を選んでしまい、早期(1年1学期)にドロップアウトしてしまうケースが多い。入学式に出たあと不登校になる子もいる。

●令和3年度は14人が利用し12人が学校復帰したが、小学生1人、高校生1人が継続利用で見守り中。

●不登校になる子は自己肯定感が低い子が多い。ふれあいルームにつながる子は動機付けがしやすく、学校復帰率が高いが、ふれあいルームに来られない子もいる。

●ふれあいルームを利用する児童・生徒は発達障害がある傾向が強く、入院歴や合併症を持っている子が約半数いる。特別支援学級にいた子も含まれる。生きづらさを抱え、HSC(繊細さん)など鋭すぎる感受性により、学校に行けなくなっている子もいる。それ以外の単純不登校の方が少ない。

●タブレット活用は進んでいる。ふれあいルーム利用時は通信は行わず、みらいシートを活用して学習する。

●高校生は元籍校の復帰は望まず、学校を変える。他校に進学後も追跡はしており、保護者の希望があれば情報共有もするが、実際はほとんど希望がない状態。令和3年度は新規利用が多かった。

●長期間関わる子もいる。ある利用児童はヤングケアラーで、高校生の時にカウンセリング利用を通して、ふれあいルームに通うようになった。その後アルバイトを経て社会人となった。

●ふれあいルームの周知が進んでいないことは課題と認識している。小中学生15人、高校生10人まで受け入れ可能。

●現在の場所・位置は人の往来が少なく、利用しやすい環境。ただしトイレが古く、洋式トイレが2Fにしかない。

●ふれあいルームは最後の砦。利用児童の10倍は不登校の児童・生徒がいる。長期の休学や不登校は保護者にとっても切ない状態。

●不登校児童・生徒への支援メニューは増えてきた。学校でも適応指導教室、スクールカウンセラーや市のカウンセラーとの連携もある。

●フリースクールが市外にあることや、市内に私塾やフリースペースがあることは担当課として認識しているが、連携はしていない。柏崎市内の私塾やフリースペースは行っても登校扱いにならない。

●不登校に対する社会の認識が変わり、「不登校はひとつの選択肢」「多様な選択肢の中で不登校を選ぶ自由がある」とされている。

●不登校児童・生徒への学習保障は、自己差別を減ずることが大きな目的だと考える。

●家庭に踏み込んだ支援には家庭児童相談員、福祉課との連携が必要だが、ケース会議等をやらない限り、先生方との情報共有が難しい。いかにして学校とのパイプを太くするか、課題である。

●学校においても担任、教頭、校長それぞれの考え方や意識に差があるケースが多い。子どもにとっての利益が何か、学校側と本人・保護者側の意見相違も・・。(ふれあいルームは本人・保護者の視点に立った支援をする)

●潜在的な力がある子は、ふれあいルームを卒業し、学校に戻る。その一方でふれあいルームに見学に来たあと来ない子もいる。

社会参加・社会復帰のためには、発達に応じた誘導や刺激が必要であり、社会参加に向かう気持ちは、自然発生的には育たない。ふれあいルームは、大人が子ども達に対して適切なアプローチをする場であると考える。

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帰りにふれあいルーム利用児童が行った「絵しりとり」のホワイトボードなどを見せていただきました。子ども達の創意工夫しながら楽しく取り組む様子が伝わってきました。

ふれあいルームは、「学校に行きたいけれど行けない」気持ちを持つお子さんや親御さんをサポートし、子ども達の自己肯定感を高めて、社会生活を営めるよう後押しする事業であることが理解できました。

尚、あまり市民の皆さんに知られていないことが課題、とのことですので、こちらにもチラシを掲載させていただきます。

必要とするお子さん達に、この事業がつながるよう願います。

お忙しい中ご対応いただいた担当課長およびスタッフの皆さん、ありがとうございました。

ふれあいルーム案内(小中学生用)PDF

ふれあいルーム案内(高校生用)PDF

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お問い合わせ先

柏崎市子ども未来部 子どもの発達支援課 相談支援係 電話0257-32-2397

 

2022年1月11日 (火)

福祉施設の人員不足

1月11日は市民後見人の定例会でした。

市民後見人とは、認知症や知的・精神障がいにより判断力が低下した方を対象に、家裁から選任された後見人が権利擁護や財産管理を担う一般市民のことです。(弁護士や行政書士など専門職が後見人となる場合もあります)

「成年後見制度」の法定後見にあたり、後見人になるための養成講座を受けた後、柏崎市社会福祉協議会(柏崎社協)に登録し、社協による法人後見の支援員という立場で実働します。

私が市民後見人となったのは平成29年の春からなので、今年で6年目を迎えます。

現在、社協の市民後見人は2人1組で12名の被後見人さんを担当しています。

それぞれ年1回の財産目録作成、毎月の定期訪問と記録等を行い、月に一度の定例会ではそれぞれのケースを報告しながら、意見・情報交換を行います。

最近、問題視されているのは福祉施設の人員(人材)不足です。

被後見人さんの多くが福祉施設に入所・通所していますが、どこも人が足りず、細やかな目配り気配りが難しくなりつつあるようです。

中には利用者間トラブルに巻き込まれた事例もあります。

柏崎市では介護職員や福祉職員の人材確保・職場定着に取り組む事業者を支援する補助金や、がい児・者の入所施設で新たに働く場合の補助金 を用意していますが、令和2年度の決算では、障がい児・者の入所施設で新たに働く場合の補助金申請は1件でした。

この件について質疑した時、当局の説明は「非常勤職員などを雇用し(補助金を使わなくても)現場の人員不足は埋められた」「人員不足による利用者の施設生活への影響は見られない」というものでした。

ですが現場の方々の認識は違うと思います。

他の後見人からは、定期訪問に行った際、現場職員から厳しい実状を聞いた・・との情報もあり、非常に白熱した定例会となりました。

私自身、議会活動において介護人材の確保を大きな課題として取り組んでいますが、福祉施設も含めて、エッセンシャルワーカーとされる方々全般の人材確保に注力していかなければならないと感じたところです。

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2021年11月28日 (日)

ヤングケアラー講演会

11月28日、柏崎市主催の児童虐待防止講演会・人権講演会を聴講しました。
今回のテーマは
ヤングケアラー問題をどう捉え、どのように向き合っていくか

講師は持田恭子 様 (一社ケアラーアクションネットワーク協会代表理事)

ご両親の介護、ダウン症のお兄さんのケアを行ってきた「ヤングケアラー当事者」としての経験をお持ちであり、2018年、ケアラーアクションネットワークCANを設立。1700人以上のケアラーと対話してこられたそうです。

以下は講演メモです。
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◆ヤングケアラーとは

若い世代で家族のケアをしている子ども・若者の総称。大人が子どもを定義づけたりレッテル貼るために使われる言葉ではない。
日本では児童福祉法のもと、子どもの人権が保障され、対策が講じられているがヤングケアラーは法の網目から少し漏れている。
そのため総称としてヤングケアラーと呼ぶ。
これまで子どもが声を上げることがなかった。
人権を守る範囲を広げるという意味で、ヤングケアラーという総称を捉えていただき、何をすればどんな未来になるのか考えていきたい。

◆ヤングケアラーの人権を守るには・・

1,メンタルヘルスを整える
2,ウェルビーイング(身体的、社会的に満たされた状態)を高める。

大人が子どもをサポートすることが、大きな意味での取り組み。
ケア、介護等の負担をなくす、解消することを目的にするのではない。「必要であれば」法的支援として介入。

国の動き(今年11月)5回の有識者会議を行った。

◆ヤングケアラー支援体制強化事業【新規】

目的:ヤングケアラーが学業や部活や友達付き合いができなくなるまでケアを引き受けすぎないようにする。

対策:相談窓口の設置、公的支援サービスの導入、ピアサポート相談支援の財政支援、オンラインサロンへの財政支援、診療報酬の改定
スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー配置時間の拡充。

多職種連携
公的支援の介入

目に見える介護には機能する

ヤングケアラーは介護を優先するあまり
・進学できない
・就職できない
・生活困窮
・健康が脅かされる

子どもはどう思っているのか?

◆ヤングケアラー(子ども)の心理
・世話は生活の一部
・家族の役に立っている
・家族が好きで世話をしたい
・家族の世話をしたくない(不満、暴力、虐待を受けている場合)、精神的に弱っている
・解決を望んでいない
  ↓
みんなはどうしているか知りたい

家族のことは好きだけど
家族との生活は変えたくないけれど
ストレスはたまっている
*一見矛盾しているようだが実は自然な感情

◆なぜ子どもがケア役割を引き受けるのか?(*イギリス研究者の論文より一部引用。)

ケアすることには多様な理由がある。

家族の中にケアを必要とする人がいる場合、
子どもは、ひとりで、あるいは主たる介護者となってケア役割を引き受けるか、
ほかの大人や兄弟姉妹が行っている介助は世話を手伝ったりしている。

・自発的に「ケアを引き受ける」ことを選択する子どもがいる(率先、積極的に引き受けるケース)
・家族の中で「一番動ける存在」として指名される子どもがいる(親、周囲の大人から「あなたしか頼れない」と言われる、若くて体力があり頼られる)
・家族が、子どもにケアを引き受けるように要求することもある(一部だが無自覚のことが多い。「お兄ちゃんなんだから・・」と指名される)

*家のことは誰にも言ってはいけない、と刷り込まれる子どももいる(非公式の世話)。

・障がいある子の世話をしている親が鬱状態になり、障がいのない子どもが世話をしなければならないケースもある。

無意識にケアを引き受けるため、「困っている」認識がない。
慣れてしまって、大したことないと受け止める。

誰かの助けは必要ないと、きっぱり断る子もいる・・

◆不適切と思われるレベルのケアに繋がる要因

1,家族の構造
2,病気や障害の性質とケアの必要性
3,公的支援の提供

◆日本ではどうなっているのか?

1,家族の構造
・ケアを担える大人がいない。ひとり親家庭など。(病気で働けない22.2%:もしかしたら子どもがケア?)
・夫婦共働きなので子どもが家族をケアする(両親が早朝家を出て遅くまで戻らない。夕方ケアすることが多い。)
・病気や障害のある家族が複数いる。(精神疾患ある母の話し相手になる、病気の親に代わり家事を引き受ける等)
・親に疾患や障害があり、子どもへの影響が理解できない。

年下の兄弟の世話をするだけでなく、年上の兄や姉の世話をすることも知ってほしい。
私(持田氏)にもダウン症、知的障害ある兄がいる。小学生の時は姉のように振舞っていた。
両親からの期待もあり、率先して世話をしていた。

2,病気や障害の性質とケアの必要性

・病気や障害の状態が安定しているか?
・病気や障害の状態が管理されているか?
・病気や障害が退行性であるか?
・病気や障害が定期的に発症するものか?

■病気の発症の進行スピード
■病気や障害の診断と受容におけるタイムラグ(知らされていない、親が自分の病気や障害に気付いていない)
■病気や障害のある人が、助けを求めることを選択したかどうか
■病気や障害のある人が、子どもが行っているケアのレベルを認識しているかどうか。

多くの場合、第三者の助けをあまり求めていない。
ケアは増えていくが、家族は必要としない・・ギャップ

3,公的支援の提供

国:公的支援サービスが提供されていない家族に、「適切な」公的支援を導入する
 ↓
サービスが提供されていても、効果的に機能していない
提供頻度が少ない場合がある
 ↓
家族は、自分達がどのような公的サービスを必要としているのかを知らないことがある

多くの人々が医療・福祉の仕組みを知らない。

入院患者が退院時、ヤングケアラーがいると判断されたら、ソーシャルワーカー介入に診療報酬を検討。
スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの時間を拡充。

◆公的支援が導入できない背景
 ↓
・家族が申請しないと公的支援の必要性がわからない。
・公的支援の受給資格があるかわからない。

◆公的支援を望まない・・なぜ?
・支援自体を知らない。
・見知らぬ人に家庭に入ってほしくない。
・第三者からの支援を期待していない(過去にたらい回しの経験あり)。
・比較されて傷付いた経験がある(親の会などで比べられ、理解されない)。
・家族に公的支援が必要だと思わない。
・助けを求めたら家族と引き離されるのではないかとの不安。

◆目線を変えてみたら?
・10代の子にとって大人はどう見える?
→専門職との関わりは難しく感じる。

◆ケアの認識
・ヤングケアラーの子供たちは自分がやっていることがケアだと認識していない。
・情報不足:助けが得られることに気付かない。
・自分がケアしている認識に乏しい。
★子どもは見知らぬ人に相談しない。
 まず自分の家族の状況を伝えるところから・・

◆当事者(子ども達)の声
・ヤングケアラー相談窓口には「絶対に電話したくない」
・相談することはハードルが高い。
*もし「大変だね」で終わったら?
*家族と自分が引き離されたら?
相談できずに、危機的状況までケアし続ける。

◆ヤングケアラーへの情報提供
・例えば世話をしている障がいを持つ兄弟がパニック状態になった時・・
・誰もその状態について教えてくれないと、自分の中で何が起きているか推察、「自分のせい?」と思う。
年齢に応じてわかるように説明すべき。子どもは敏感。わかっている、わかろうとする。

ヤングケアラーだけでなく、ケアを必要とする人の希望も聞く。

◆お手伝いとケアの違いは?

①個人的影響:子どもの生活
・小・中・高~と学年が上がるにつれて役割が増えていく。
・子どもが「大丈夫」と言ったとしても、しっかり様子を見る。

②社会的影響:他者との関係
・先生、友達との関係性(子どもにとって社会=学校)
・家のことは見せられない、わかってもらえないとの意識ある。

③教育発達への影響:学業や部活
・学業や部活ができない。

お手伝いとケアの判別は難しい。
日本は子どもが家族の世話をすることを賞賛されてきた。

◆最も大切なのは、子どもの声を聴くこと。
・自分もヤングケアラーかもしれない。
・重たい介護はしていないから、ヤングケアラーと名乗ってはいけない。
・自分で決めて世話しているので、ヤングケアラーと名乗ってはいけない。

◆なぜ相談しない?
→自分がどうしたいか言葉にする機会が少ない。
「どうしてほしい?」と聞かれても答えられない。

他者=友達:「大変だね」と言われ雰囲気が重くなる。
学校=先生:家の中のことには踏み込まれないだろう。

スクールカウンセラー:「自分を変えろ」と言われる。
=他人事のように扱われ、「自分の気持ちは専門家にもわからない」・・

スクールカウンセラーは、目の前にいるその子を何とかしたい。
でも子どもは家族のことを相談したい。

家族のケアをしたことがないと、カウンセラーもイメージできない。
子どもはすぐ察知する。「この人はわかってくれない」

◆ヤングケアラー当事者(女子高生)の声(動画紹介)
・精神疾患の母の世話をしている。
・先生には疾患についての知識を持ってほしい→どんな生活?どんなケア?
・生徒がいつもと違う雰囲気→「最近どう?」と声を掛けてほしい。
・ケア対象のことをむやみに聞かれ、「大変でしょ」と価値観を押し付けられると嫌な気持ちになる。
・自然に話してほしい。
・ヤングケアラーについてのアンケート調査は紙媒体だと、すぐに書き終える他の子の目が気になり、正確に記入できない。スマホ、ネットで回答できるようにしてほしい。(国のヤングケアラー全国調査は紙媒体→正確に把握されていないのでは?)
・スクールカウンセラーに相談する場合、担任に言わなければならず、授業も欠席しなければならない。
(ハードルが高く、相談に結びつかない)

◆子どもが本当に望むことは何か?
・どのような状況なのか話したい。ありのまま受け止めてほしい。
・大人が勝手に解釈するのはNG→二度と話さなくなる。
・自分で気が付く機会が乏しい。

◆家族へのケア
・子どもを抜きにした支援計画を立てないよう注意。
「これなら子どもの時間をつくれるに違いない」はNG。必ず子どもの声を聴く
・テレビのイメージ:暗い部屋で母の世話をしている。→当事者は「電気をつければいいのに」演出が響かない。

◆感情的な影響
・矛盾の感情:公的支援を入れてもなくならない。
・十分な説明が必要。
・子どもはまだ経験や情報が足りない。
・ヤングケアラーは長期に渡り「あちらを立てればこちらが立たない」状態。

ヤングケアラーはライフチャンスの制限が課題とされているが、ライフスキルを獲得できるという利点もある。

◆ヤングケアラー 6つのライフスキル
 ①思いやり ②思慮深さ ③決断力 ④虚しさ ⑤理解力 ⑥寛容さ

親の人権とニーズへの配慮(先進国イギリスでの課題)
・養育能力が乏しいのか?
・親は何を必要とする?

◆ヤングケアラー支援の注意点
・家族のニーズに沿っているか?
・家族丸ごと支援が必要。

◆子どもの声を聴く3つのポイント
①子どもの捉え方、見え方、意見を尊重。今の声をそのまま受け止める。
②家族全員のニーズを考える。
③子どもに考える時間を十分与える。

◆家族丸ごと支援
・家族への効果的な公的支援
・子どもが何を必要としているかを知る相談力
・家族全員へのコンサル
・ニーズを把握する
・子どもは家族の世話をしたいか
・世話をしたいならどんなサポートが必要か

◆きょうだいヤングケアラー
・親から注意を払われない
・家族の否定
・前向きになれない
・親と同じにできない
・親代わりになってしまう
・ファミリーレジャーの経験ができない

社会には子どもを希望に向かわせる義務がある。
①家族 ②ヤングケアラー本人 ③周囲 への働きかけが重要。

一般社団法人ケアラーアクションネットワーク【CAN】 

◆ヤングケアラーズ探求プログラム(参加費無料)
・ヤングケアラー同士のオンライン交流。
・ヤングケアラーだった大学生がボランティアで参加。
・つらい時、自分の感情とうまく付き合う方法を知る。
・心を許し、好きなことの話をして、笑うことができる。
・自分だけじゃない。ヤングケアラーの自分を肯定。
・打ち明ける勇気につながる。

◆ヤングケアラー短編映画
「陽菜(ひな)の世界」
・きょうだいヤングケアラーがヒロイン。
・誤解や偏見のない世界・社会を目指したい。
・出演者「ヤングケアラーを見る目が変わった」
・学校~自治体の連携を求めたい。

◆ヤングケアラーをチェンジメーカーに
・家庭や学校で教わらない障害や難病や疾患への対処法を知っている。
・正しい知識を学び、考え方や振る舞い方が変わると、身近に理解者が増える。
・社会からの誤解や偏見が減る。

<質疑>
Q1、6年ほど関わった子どもがヤングケアラーだった。介入した結果、中学生の今はケアしていた母親と離れて暮らしている。支援が間違っていたのだろうかと自問自答している。
A1、同じ状況の子と関わったことがある。子ども自身の話を聞こうとしても大人や専門職には心を開かない。ケアラー同士がつながり孤立を防ぐ仲間づくりが大切。探求プログラムをぜひ紹介してほしい。

Q2、地域の社会福祉法人だが、どんな関わり方ができるか?
A2、ゲームや遊びなどを通して、楽しい雰囲気で関わるようにする。同じ目標を定めて一緒にやっていくことが大切。

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ヤングケアラーについては令和3年6月の一般質問 でも取り上げていることもあり、関心の高い問題ですが、今回の講演ではかなり具体的な内容に触れられていました。

またヤングケアラーを否定的に捉えるだけでなく、「人の心・痛みがわかる存在」として肯定している点も、非常に印象的でした。

貴重なご講演をいただいた持田恭子様には、心から敬意と感謝を表します。ありがとうございました。

子ども・若者たちが健やかに育ち、希望を持って人生を歩めるよう、取り組んでいきたいと思います。

2021年7月11日 (日)

通学路の安全対策

6月29日、千葉県八街市で下校途中の小学生の列にトラックが突っ込み、児童5人が死傷する痛ましい事故が起きました。
トラックのドライバーが飲酒運転だったことに加え、以下の点も問題となっています。

●2014年にPTAなどが現場の市道にガードレール設置を市に要望していた

●2016年11月にも国道を走っていたトラックが登校中の児童の列に突っ込み4人が重軽傷を負う事故が起きていた

●市は財源不足を理由に本市道への対応が先送りとなっていた

この事故を受けて

●菅総理が早急な対応を指示、現場に献花

●一億総活躍担当大臣(交通安全対策担当)が、通学路の安全確保と飲酒運転の根絶を柱とする対策を早急に取りまとめる考えを示す

●菅総理と八街市長が面会し、危険な通学路でのスクールバスの運行について、先行的に支援策を検討する考えを伝える

といった報道がなされています。

また新潟日報では2021.7.6「通学路の危険 隣り合わせ 千葉・八街の事故に不安の声多数」 との特集を組んでいます。

柏崎市における通学路の安全対策としては、平成24(2012)年に、全国で登下校中の児童生徒が死傷する事故が相次いで発生したことから、文部科学省の通知を踏まえ、同年8月に道路を管理する国・県・市・所轄警察署と、教育委員会、小学校、PTAなどの各機関が連携して、緊急合同点検を行いました。点検結果は関係機関で協議し、必要な改善を行っています。

平成26(2014)年11月には、関係機関が相互に連携し、通学路の交通安全確保に取り組むことを目的に「柏崎市通学路安全推進協議会」を組織し、「柏崎市通学路交通安全プログラム」を策定しました。

それ以降、毎年定期的に実態把握→対策の検討→定期合同点検→対策の実施→効果の検証→改善・充実と、PDCAサイクルを回しながら対策をとっています。

柏崎市 通学路交通安全プログラム

今般の報道を受けてのお問合せもいただき、担当課に確認したところ、今年度はこれまで8月に行っていた定期合同点検を夏休み前に実施するそうです。

この他にも通学路の交通立哨ボランティアを長年行う方々もいらして、頭が下がります。

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ハード整備は大切ですが終わりはなく、時間と費用がかかります。
早急にできることは、交通安全ルールの順守・徹底ではないかと思います。
飲酒運転など言語道断ですが、道路を横断しようとする歩行者がいても止まらない、見通しの悪い道でスピードを出す、といった車は少なくありません。

これ忘れてない? 曖昧になりがちな交通ルールをおさらい

また自転車運転も同様です。

自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~(警察庁)

私自身も気を付けなければ・・。

ハード・ソフト両面から歩行者そして児童の安全を守っていかなければならないと感じるところです。

2021年7月 6日 (火)

成年後見制度に関する研修会

7月6日、柏崎市社会福祉協議会の「成年後見制度に関する研修会」に参加しました。

講師は柏崎きぼう法律事務所長・弁護士の田才淳一先生。

社協の生活困窮者自立支援事業のアドバイザーでもあり、成年後見人として12名担当されているそうです。

 

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1,成年後見制度の概要

●成年後見制度とは
本人の判断能力が精神上の障害により不十分な場合(認知症、知的障害、精神障害等)に、本人の権利や財産が侵害されないように、法律的に保護し、支える制度

●制度の考え方
①自己決定権の尊重
②福祉サービスが措置から契約へ
⇒判断能力の程度により
 補助・保佐・後見という3つの類型(法定後見制度)+任意後見制度の創設

●制度の背景
・ご本人の保護
・自己決定するにあたり判断をサポートしつつ尊重

かつては成年後見制度がなかった(禁治産制度等*財産を守る制度のみ)
福祉サービス受ける際の契約できないと、サービル利用できない。→福祉サービス受けるためにも代わりに契約できるようにする。

*判断能力不十分になる前にあらかじめ契約=任意後見制度

◆成年後見制度の理念

客観的な)
本人の保護 ⇔ ・自己決定の尊重
        ・残存能力の活用
        ・ノーマライゼーション(障がい者も健常者と同様の生活を)

制限するだけではなく本人の希望・意思決定を尊重
一定程度の判断能力あれば生かす。

それだけに成年後見は難しい。
(場合によっては対立することも・・)

2,法定後見制度~どんなときに、どの類型を使うか?

後見(本人の判断能力が欠けている常況)

・代理権、取消権の付与(同意権ではない)*同意してもその通りに動かない場合が多い
★本人がした法律行為は、すべて取消の対象となる
*まずい契約をして不利益を被る場合は取消できる
(不当な売買契約など)本人の権利が害されないように。

ただし、日常生活に関する行為を除く。
・スーパーに買い物に行き、雑貨や食料品など買ったもの全てを取り消すことはしない
・不動産や高額商品などは取消対象だが、それ以外の安価なものは対象とならない

保佐(本人の判断能力が著しく不十分)

*すべて判断できないわけではない。境目が難しい。
*最終的には医師の診断書添付⇒家裁が決める。

・重要な法律行為(民法13条1項:預金払戻、借金、不動産の処分、贈与、訴訟、相続の承認や放棄、自宅の増改築や大修繕)について同意権が付与⇒同意を得ずに本人が勝手に行った場合は取消可能

補助(本人の判断能力が不十分)

*日常生活はそれほど問題ないが重要な契約などは補助人が同意
*本人が預貯金をすべて払い戻そうとする場合、

・重要な法律行為の一部のみ、同意権付与が可能⇒同意を得ずに本人が勝手に行った場合は取消可能

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3,成年後見人の出来ること、出来ないこと~これはやっても大丈夫?〇×でチェック

①本人(被後見人)の代わりに、柏崎市専用のゴミ袋を買う・・

*日常生活に関するものは取消権のみ

②本人が柏崎市専用のゴミ袋を自分で買ったことを取り消す・・

*売ってもよいが家庭裁判所の許可が必要(勝手にはできない)
*施設に入る等の状況を資料として添付

③本人との間で本人が住んでいる自宅の売買契約をする・・

本人の保護が大前提。成年後見人と利害が対立(利益相反)する場合がある。
*特別代理人or後見監督人が本人を代表

④本人の代わりに、遺言を書く・・

*判断能力が欠ける人が有効な遺言書をつくるのは難しい。
*実質証書遺言は本人の自筆が法律要件

⑤本人の治療行為について同意する・・

*医療行為の判断は同意権ない。ただし予防接種については同意権あり。(予防接種法では保護者に同意権)
*家族が成年後見人=家族として同意

成年後見人はオールマイティではない
契約行為はできるが治療行為への同意権はない
ただし家族としての同意権はある

4,成年後見監督人等の職務 

①成年後見人等の職務
②成年後見人等が欠けたとき、成年後見人等の選任を請求
③急迫の場合、必要な処分をする
④利益相反の場合

*成年後見監督人等は任意設置
*配偶者、直系血族、兄弟姉妹は就任できない(弁護士、行政書士など)

5,申立手続き 

①誰が申し立てるのか?
→本人・配偶者・四親等以内の親族など
 市長申し立ての事例も・・

②どこに申し立てるのか?
→家庭裁判所(本人の住所地の管轄)
*柏崎の場合は新潟県長岡支部裁判所
(中央町は受付のみ)

③費用はどれくらいかかるのか?
→申立費用(印紙3400円分、予約郵券約4000円)
・診断書
・戸籍謄本
・登記されていないことの証明(すでに後見人がついていないか確認)→法務局で取得
 等、必要書類取得(数千円程度)
・鑑定が必要な場合は鑑定費用(10万円程度)*例外的
・申立を弁護士に依頼する場合10~20万円程度

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6,申立手続きの流れ

①申立準備
・必要書類の収集
・申立書の作成

②申立(申立書の提出)
・申立書の審査
・家裁での面接(*しない場合も)
・調査官の調査、親族照会等
(子どもによって考え・主張が異なる場合)

③審判
 審判が確定すると後見開始

④後見登記
 確定後に家裁が法務局の登記

1か月~3か月~半年
裁判所がすぐ審判出さないことが多い(申立が増えている)

◆成年後見人に就任したら・・・

⇒初回報告書(財産目録、年間収支予定表)を提出(家裁で閲覧可能)

そのために・・
 記録の閲覧、本人との面会、財産調査など

その後も毎年1回は定期報告が必要となる

重要な財産処分にあたっては裁判所の許可が必要(家を売る場合など)

7,成年後見制度のデメリット?

成年後見制度は本人の保護のための制度
⇒裁判所は、あくまで本人の保護を中心に考える
 場合によっては、硬直化した処理とならざるを得ない

(例)高齢の夫婦で子が3人いるケース

妻が認知症になり、3人の子のうち唯一地元に残った長男が成年後見人になった。
その後、元気だった夫が急死し、夫の遺産について遺産分割することになった。(夫は遺言残さず)

⇒本人と長男とでは利益が相反するので、特別代理人又は後見監督人に本人を代表してもらう必要がある。
また、本人が希望しても、基本的には法定相続分を下回る内容での遺産分割はできない。

*たとえ認知症の妻(母)が「長男に財産を多めにあげたい」と主張しても、判断能力ないとされているのでできない。

*これを避けるためには、父に遺言を書いてもらう。

7,その他の手続 

〇報酬付与の審判

後見人はボランティアではない
報酬の目安:月額2万円程度(1年分まとめて決定)
★きちんと貰った方がよい(相続発生時に取り分が多いとは限らない)

〇死後事務

後見業務の終了
終了報告、財産の引継ぎ(相続人)

*葬儀、遺産分割

8,任意後見制度~将来に備えた制度利用

*成年後見人は必ずしも家族・親族が選ばれるとは限らない
*資産が1500万円以上ある場合、弁護士や司法書士を選任
*弁護士も希望通りの相手を選任するとは限らない

●備える
・認知症になる前に、自分で任せる内容を決めたい(施設契約など)
・予め信頼できる人を自分で見極めてお願いしたい

●任意後見制度のメリット
①依頼できる内容は自由に設定できる。
②任意後見人には誰でもなれる(弁護士等専門家または家族・身内等)

●デメリット
①公正証書で任意後見契約書を作成する必要がある

②後見監督人を必ず選任する必要がある(判断能力がなくなった時からスタート)
→弁護士、司法書士(1~2万円/月)

③取消権がない(代理はあるけれど・・)

*任意後見人がいる人が、高い買い物をしてしまっても取消はできない
*設定した行為だけ可能 
*本人保護の制度としては弱い

お願いしたい人がハッキリ決まっている人には良い制度だが、成年後見と比べると大変な面もある

9,親族後見と第三者後見~後見人の担い手は誰か?

●親族後見人とは
・一般的

●第三者後見人とは
・財産が多い
・親族間で複数希望者いるが対立
→専門職などを選任

●後見制度の利用が必要な人が、必ずしも利用に結び付いていない

要因は何か?
・高齢化とともにニーズ増えているが弁護士や司法書士は限られる

後見人の受け皿づくりが必要
市民後見人に対する期待・育成が必要

10,高齢社会・障がい者福祉における後見制度の必要性

●社会的要因(高齢化の進行、少子化など)

●制度的要因(福祉サービスの社会化、措置から契約へ)

●誰もが人間らしく生きていくために絶対必要な制度

「愚行権」もある・・ギャンブルなど

制度の理念
本人の保護⇔自己決定の尊重

<質疑応答>
Q1)
成年後見人は医療行為のための同意書にサインできないが、身寄りがない被後見人が急な治療を要する時はどうすればよいか。
A1)
悩ましい問題だが制度上、同意書にサインできないことを医療側に説明する。
同意サインがないからといって診療拒否はできない。(通達も出ている)

Q2)
身寄りのない被後見人が死亡した場合、ご遺体のことや死後の事務処理等は費用も含めどうすればよいか。
A2)
被後見人が死亡した場合、その時点で後見業務は終了する。
葬儀や火葬等は成年後見業務ではないものの、誰も行う人がいない場合の事務管理を生前の成年後見担当者が行う場合はある。
業務引継ぎ先がいない場合は、火葬や供養等の最低限の事務を行い、相続財産管理人を選任依頼→事務管理費用を請求する。
財産がまったく無い場合、行旅死亡人への対応と同様に市が火葬にする場合も。

Q3)
任意後見は事前に判断能力がなくなった時に備えて選任しておく制度ということだが、実際に任意後見がスタートするのはどの時点か。
A3)
後見される側の判断力が衰えてきた(なくなった)と任意後見人予定者が感じた時、医師の診断書を添付して家庭裁判所に申請。
任意後見監督人が「判断能力なし」とした段階で、任意後見がスタートする。

Q4)
本人に判断能力はあるものの身体能力が衰えて財産管理できない場合はどうすればよいか。
A4)
判断能力が残っている以上は成年後見制度の対象にはならない。
手が動く場合は個別に委任契約(預金払戻など)を家族等と結ぶ。
本人の意思がしっかりしていれば、金融機関と相談して個別委任(代理権限を与える)とする。

Q5)
父が自筆でサインできなくなり、金融機関は訪問して対応してもらったが、役所はできないと言われた。
A5)
サインできない状態であることを医師の診断書に記載してもらう。
公証役場に出張を依頼する方法もある。意思確認のやり方はケースバイケース。

Q6)
法定後見制度の場合、後見人決定に親族全体の同意は必要か。
A6)
必ずしも全員の同意が要ではないものの意向確認書類はある。

Q7)
後見人を途中で変更できるのか。
A7)
解任・辞任により別の人が選任される場合はあるが、辞任の場合は理由が問われる。
解任の場合は不適切行為の有無を裁判所が判断する。
(あくまでも目的が本人の保護である場合に限る)

Q8)
家庭裁判所に提出する報告書は毎年送られてくるのか。
A8)
初回だけは所定の報告書類(書式)が送られてくるが、2年目以降は自ら提出。
期限を過ぎても提出されないと督促状が出される。
提出しない状況が続けば、後見人としての資質を問われ、解任されることもあり得る。

Q9)
後見人の身分証は発行されるのか。
Q9)
身分証自体はないが、選任審判書を取り寄せることはできる。
後見人がつくと登記されるので法務局で登記書をとれば身分証代わりとなる。

ーーーーー

市民後見人(社協による法人後見支援員)として活動して4~5年経過しましたが、いまだ手探りでやっています。

研修を受け、今やっていることを振り返り、学んだことを復習しながらブラッシュアップしていくのが大事なんだな、と感じました。

2021年7月 3日 (土)

柏崎・刈羽ACPプロジェクト講演会

 本日、柏崎・刈羽ACPプロジェクト講演会「いつか一人になる覚悟を持って自分らしく生きる~今だから学ぶこと~」(講師:上野千鶴子氏)に参加しました。

ACP(別名:人生会議)=アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning )とは、患者さん本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に、現在の病気だけでなく、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ、終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、意思決定が出来なくなったときに備えて、本人に代わって意思決定をする人を決めておくプロセスを意味しているそうです。

(参照:リビング・ウィルと事前指示書 -書き方と例文- )

文化会館アルフォーレのスクリーンで会場と講師をつなぎ、zoomでも同時開催という今時スタイルでした。以下はメモです。

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柏崎市刈羽郡医師会・高木会長より

高齢の方々を診療すると「長生きするのも善し悪しですね。」「先生、私はいつ死ぬのでしょうか。」と聞かれることがある。
医者にとって困る質問。長生きすることにとまどう患者がたくさんいる。いずれ一人になり介護を必要とする日がやってくる。その時どうする?という課題について、講演を通して考える機会としたい。

上野千鶴子氏

新潟県のことは以前から注目。参議院議員・打越さく良氏を応援。

柏崎刈羽地域は人口減少が進み、「消滅可能性自治体」としてカウント。

定義は2010年~2040年にかけて20~39歳の女性人口が5割以下に減る自治体。

原発誘致により「出稼ぎに行かなくてすむ」はずが、人口流出が止まらない。

「おひとりさま」シリーズを刊行してから15年が経過。

高齢者の悩みは自分よりも他人から。気が合わない同居者からのストレスが悩みポイントとなる。
・別居により家族が目の前にいないと忘れていられる
・おひとりさまの悩みは少ない

満足度ー悩みポイントを引くと、ひとり暮らし高齢者の生活満足度は高い。

寂しさと不安調査
・最初からひとりではない
・おひとりさまビギナー:寂しさ感じるが不安は感じない
・おひとりさまベテラン:寂しさ・不安感じない
・気持ちの通じない家族と同居:寂しい・不安
★寂しさの処方箋 時間と慣れ

老後の満足のための三条件
・生活環境を変えない
・金持ちよりも人持ち(真に信頼できる友)
・家族に気を遣わずにすむ自由な暮らし

週刊現代でもおひとりさま特集「ひとりになったときの失敗は」?
・子どもとの同居「悪魔のささやき」
・再婚
・家を手放す
・老人ホームに入る
・子どもに財産を渡す

病院死より在宅死を推奨

2015年の医療介護一括法の施行により地域包括ケアシステム

最期まで家にいるためには医療・介護・生活支援を一体運用しなければならない
・それまでは医療、介護、生活支援タテ割り
・背後にあるのは社会保障費の削減、入院日数抑制
・病院の在宅復帰率75%(目標)*大病院は地域連携により在宅復帰率を高める。
*施設と病院が好きな年寄りはいない。家にいたい(悲願)

地域包括ケアの実践例:長岡市こぶし園の元施設長・小山剛さん(故人)
・慣れ親しんだ土地 家族の近くで暮らす
・大規模施設型ケアから小規模ケアへ
・地域の空き土地・空き家利用→10人程度の家に高齢者が住み、いつでも家族に会える

★地域にサービスをデリバリーする
・食はライフライン(保温容器使用の配食サービス付き)
・特養のサービス 24時間365日 切れ目のないサービス 地域へのデリバリー

★小山氏は障がい者福祉の出身
 重症心身障がい者の自立生活:支援を受けながらも自分らしい暮らし

「家にいたい」は年寄りの悲願
・5割は最期まで家にいたい
・できれば家にいたいが病院か施設で・・が3割 →家族への忖度

在宅ひとり死の3条件
1,自己決定
2,司令塔(キーパーソン)
3,システム(多職種連携)
①24時間巡回訪問介護 ②24時間対応の訪問医療 ③24時間対応の訪問介護

病院死は家族の選択?
*看護師「死ぬのに医者はいらない。死亡診断書を書くだけ。」
*介護職でも「死ぬのに医師・看護師いらない」と言う人が出てきた。
 経験値増えると在宅死は安らか、穏やか

★在宅でひとりで死ねるか?
→本人の意思さえはっきりしていれば在宅で看取れる。同居家族がいない方がよい。

介護保険により人材育つ
介護業界のキーワード「高齢者の自己決定支援」
*以前は本人よりも家族の意思が優先される現場だった・・

地域訪問診療(小笠原医師@岐阜)での調査
「なんとめでたいご臨終」(小笠原文雄氏)
・家で死ぬための費用 30万~300万円まで
・在宅ひとり死の費用:医療保険、介護保険、自費サービス(夜が不安)

★自己負担は大してかからない
・日本の年寄りは小金持ち
・年金、資産を子どもが管理
・医療・介護保険内でも独居看取り可能

死ぬための費用 
・病院はホテルコストがかかる。160万円/月 ホスピス、個室(差額ベッド)等・・
・在宅 自己負担それほどかからない

★がん死 在宅看取りにふさわしい
・死期を確実に予期
・痛みのコントロールできる
・ただし医師の当たりはずれはある
・死の直前までADLの自立、意識生命

★認知症になったら?
・介護施設入所者の7割以上が認知症者
・認知症者1/5人 
・2025年認知症700万人時代
・製薬会社、精神病棟は手ぐすね引いて待っている。薬か拘束か・・
(大収容時代 新オレンジプラン)

精神病棟:認知症患者の居場所と死ぬ場所を提供→引き受け手のない認知症患者の駆け込み寺 

独居の認知症ケア:高橋幸男氏 認知症は怖くない
・認知症 周囲の言葉も原因に
・ひとり暮らしの認知症者は家族と暮らすよりも症状が悪化しない
・家族から叱られるストレスがない
・施設に連れて行かれる=だましうち
・周囲に否定する人がいないこと で緩やかに進行
・重度の認知症でも食欲あれば 生きる意欲 食のライフライン大切 サポート
・独居の在宅認知症でも在宅死は可能
・成年後見の利用

「認知症になってもひとりで暮らせる」 奈良あすなろ園
・住宅地 地域は困った人を排除する機能がある
・地域1戸ずつまわり「いずれあなたも行く道だから」

ACPとは何か
Adovance Care Planning「人生会議?」
・声の大きい人にひきずられる
・日本のばあちゃん達は家族のために生きてきた人達
・意思決定支援 あらためてするよりも、日頃から意思を聞いておくべき
・事前指示書は必要か 
・健康時の日付入り意思は変わる
・日頃のコミュニケーションから意思を聞く

在宅ターミナルケアは可能
・独居でもできる
・がん、認知症でも在宅で死ねる
・資源、人材あるが地域差が大きい

人さえいれば地域は変わる
・葛飾区 在宅看取り率全国2位・・在宅医療第3世代 段階ジュニア 

居住+介護+医療複合体
・東京の流れ ケアタウン サ高住 
・居住型医療・介護複合施設 →主治医を変えられない、出て行けない 
*パッケージはやめるべき 選択肢を広く
*自分が誰かの世話にならなければいけないとしても年寄りだけが固まるのは?

高齢者を支える多重構造
・利用者・家族
・専門職(多職種連携)
・コミュニティ&ネットワーク

要介護認定2割 8割はサポート不要ではない:自治体の役割

◆武蔵野市の経験
・武蔵野市福祉公社(リバースモルゲージ、成年後見)

◆高松市見守り協定
・水道検診業者、電気事業者など 70業者と見守り連携

◆長野県泰阜村(やすおかむら)
・少子高齢化に対応した「在宅福祉の村」

◆横浜市寿町
・究極のスラム外で在宅看取り
・男性出稼ぎ労働者が故郷に帰れないまま住みつき高齢化
・女性看護師が出入りできるよう安全性確保

高齢者福祉の条件・・居住 年金 介護 医療
行政(生保)、民間(簡易宿泊所の管理人)、介護・看護・医療の専門職

これからの地域福祉
1)配食サービス(1日3食365日)
2)在宅認知症高齢者の見守りネットワーク
3)成年後見
4)移動支援(交通弱者、買い物弱者、QOL格差)
5)社会参加(生涯学習、外来者との交流、情報発信)
6)市民参加の促進(NPO、コミュニティカフェ、創業支援)

コミュニティカフェ 新潟市「うちの実家」@新潟
・介護保険の認定を受けていない人、ひきこもり等の居場所作り


介護力がなければ家にいられない。在宅看取りは介護保険がなければ可能でなかった(小笠原医師)
・医療より看護、看護より介護
・暮らしを支える介護力
・介護保険の改悪=制度の空洞化?

介護保険制度の後退を許してはならない

コロナ禍のケアワークへの影響
・通所施設の閉鎖・休業 2021年4月883事業所
・2021年5月休業455件、倒産188件
・感染リスクに無防備(情報も装備もない)
・訪問介護の現場の疲弊

いまだ介護は非熟練の職種として見られている

コロナ感染とワクチン接種
・訪問系の介護 優先度低い
・在宅介護を支える人材 低く見られている

最期まで在宅を望む高齢者を看取れる社会へ
安心してひとり親、要介護者、認知症になれる社会
障がい者になっても殺されない社会
(加齢によりみんなが中途障碍者になる社会)

今年は衆議院選挙の年。NPO法人ウィメンズアクションの声を紹介したい。
市川房枝は「権力の上に眠るな」と言った。民意がどう示されるか注目。

<意見交換>
上野氏
柏崎・刈羽ではひとりで家で死ねるか?

高木会長
上野先生だったら死ねると思う。
認知症は問題。ひどい認知症になったら在宅看取りは難しい。

上野氏
まさかこの人が?という人が認知症になる。
先生と呼ばれる職業に就いていた人がなりやすい。

高木会長
介護人材の不足が最大の課題。特に介護に携わる若い人がいない。人材不足に対してどう考えるか。

上野氏
資源と人材はいるところにはいる。先進的なよい地域を見てきた。そこに柏崎刈羽は入らないということ。
刈羽の人口構成を見て、働き盛りの女性がいない。職業機会がないのだろう。ここにはいられず出ていってしまう。
原発誘致は男性を引き留めたが女性を引き留める機会にならなかった。
介護の仕事がそもそも魅力的といえない。条件悪く賃金低い。政策決定者の設定 構造上の理由はわかっている。

高木会長
現状は指摘通りだと思う。介護職に若い人がいかないのは待遇に問題あるのは事実。
在宅で看取るには24時間対応の医療と介護。柏崎市では24時間対応できる人材は残念ながら不十分。

上野氏
長岡市でできることが柏崎市ではどうしてできないのか。介護事業者は「年寄りは金になる」と言う。

高木氏
長岡と比べることに問題がある。人口規模、人材1.5倍多い。

上野氏
泰阜村(長野)は人口少ないができている。人材がいればできる。

<聴講者から>
◆訪問栄養指導を進めるにあたり、医師の指示が必要だがどうしたらいいのか。

上野氏
・医師の指示のいらない配食サービスを行うべき。

高木会長
・訪問栄養指導は柏崎で実施している。

上野氏
・指導員は食べさせてくれない。情報は腹の足しにならない。

◆訪問看護に関わり、実際にひとり暮らし看取った経験ある。本人、近所の覚悟と制度が必要。
ひとりは寂しくない、という人もいれば、寂しい・怖いという人も。夜中に何度もコール、一晩に何回も訪問したこともある。
柏崎では夜中のヘルパー訪問制度なく、市外ヘルパーを入れて実施した。
色々な制度、協力も必要。近所の力が得られたら・・と思うが、近所の人と関わってこなかった。近所の人が入ることで何かを獲られる恐怖も。意識変えられるようにしていきたい。

上野氏
地域を巻き込むことは大事。前提は隠さないこと。家にどんな年寄りがいるのか共有。
コールは永遠ではない。どこかで落ち着く。対応してくれる人がいるだけで回数が減る。24時間対応はナースの力。

◆独居で自宅で亡くなるのは無理と固定観念あったが、地域・行政が変わらなければならないと感じる。どこから手を付け、どの機関から介入?

上野氏
現状から先進地域見ても遠い。誰かが言い出し周りを巻き込んで変えていくこと。
地域の茶の間から生き方・死に方 専門職を巻き込む。地の利もある。河田さんのところを見学。

高木会長
最後にACPについて。
意思決定できなくなったとき、成年後見を決めることも大事だが、自分の人生の最後をどうしたいか話し合うことが大切。
友人、家族など信頼できる人と話し合っておくこと。ACPを否定的に捉えてほしくない。

上野氏
最期について話すのは縁起でもない・・と言われないよう、日頃から話す機会を持てばACPと言わなくてもよいと思う。

高木会長(最後に)
年を重ねても安心して暮らせる地域づくりを。

*****

会場はソーシャルディスタンスをとりながらも満員でした。講師の方は知名度が高くファンもたくさんいらっしゃるのだと思います。

ただ全体的に政治的な色(特に現政権批判)が濃いことに違和感を覚えました。

また演題にもあるように「在宅でひとりで死ぬこと」が主な内容でしたが、実際には人それぞれのACPがあると思います。

「おひとりさま」には単に近くに家族・親族がいないケースもあれば、完全に天涯孤独なケースもあるわけで、在宅でひとりで死んだ後の始末をどうするか、という点は現実的な課題だと感じました。

とはいえ住み慣れた地域や家で最期まで暮らし続けるためには、支える側となる人材が不可欠であり、特に介護人材の確保は必須だと思います。

「メメント・モリ(死を忘れるな)」という言葉もあるように、いつか必ず死を迎えることを意識しながら、人生設計していくことが重要だと感じたところです。

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