令和5年9月一般質問 1 持続可能な「脱炭素のまち柏崎」を目指して①
令和5年9月8日、一般質問を行いました。以下はその内容です。
1 持続可能な「脱炭素のまち柏崎」を目指して
今年の夏は猛暑が続き、全国的に観測史上最高の平均気温を記録し、連日「熱中症警戒アラート」が出されました。
柏崎市消防本部管内では、6月~8月に熱中症の疑いによる救急搬送は92件、昨年度の66件よりも約4割増加したそうです。また、夏の記録的少雨による農作物被害、今後は秋雨(あきさめ)前線や台風の影響による気象災害も心配です。
「広報かしわざき9月号」の市長随想では、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」との国連総長の言葉が紹介されました。この状況を食い止めるためにも、2035年脱炭素のまち柏崎市スタートを目指して、温室効果ガス、C02排出量削減に資する取組を、産業や市民生活に浸透させていくことが重要と考えます。
そこで(1)脱炭素の推進と産業イノベーションでは、まずはア 太陽光発電事業の検証と展望 について伺います。
今年8/1から鯨波・西長鳥の太陽光発電所が稼働し、市内37か所の公共施設への電力供給が開始され、脱炭素の推進およびエネルギーの地産地消における大きな一歩となりました。
当初3/15までとされた工事完了の延期もあり、櫻井市長の会見では「大雪の影響、設備、接続、許認可の手続き等が難渋し、ようやくここまでたどり着いた」と、完成に至るまでの苦労について語られたのが印象的です。
本市では今後も柏崎あい・あーるエナジーが主体となり、遊休市有地での太陽光発電設備 設置が予定されているわけですが、2か所の太陽光発電所の建設過程で生じた課題を検証し、次なる事業拡大の教訓にすべきと感じます。
また7/31に行われた完成見学会では、工事請負事業者様から、「この仕事を担うのは新たなチャレンジだった」という趣旨のご挨拶もいただきました。2か所の太陽光発電所は市が整備・所有し、柏崎あい・あーるエナジーに運用・維持管理を委託し、今後の太陽光発電事業は柏崎あい・あーるエナジーが設置者となりますが、柏崎あい・あーるエナジーには社員を置かないことから、実務を担うのは地元事業者になるかと思います。
脱炭素電源の設備設置工事や保安・維持管理、将来的には太陽光パネルの更新・除却といった一連の関わりを通して市内事業者の仕事が生まれ、環境産業を担う技術力が育まれていくことは、本市の重点戦略「大変革期を乗り越える産業イノベーション」の観点からも重要と考えます。
そこで質問です。
鯨波・西長鳥の太陽光発電所の完成に至るまでの課題をどのように検証し、今後の柏崎あい・あーるエナジーによる太陽光発電事業拡大にどう生かすのか、また、保安や維持管理、太陽光パネルの更新や除却に地元事業者がどのように関わるか、そして、本市の脱炭素エネルギー事業の推進を、地元事業者の環境産業への参入や技術力向上にどうつなげていくのか、見解を伺います。
市長
鯨波、西長鳥の太陽光発電所が竣工を迎え、市内に脱炭素電力の供給を開始したことは、施政方針で令和5(2023)年度は柏崎市にとって脱炭素元年になると申し上げましたが、まさに脱炭素のまちへ大きな一歩を踏み出したものと考えております。
具体的には5月から小中学校を中心とする市内37公共施設に(柏崎あい・あーるエナジーによって)電力供給を開始し、8月からは太陽光発電所からの電力を用いて、自己託送供給が始まったところです。
8月末までの両太陽光発電所の総発電量は43万2492kwh、設備稼働率は約15%と問題なく稼働しているとの報告を受けています。
また37公共施設における5~7月の電気料金の削減合計額は500万円を超え、電力会社切り替え前と比較して、平均11.5%の削減効果が得られています。当初議会に説明した削減額よりも多く、削減割合も高い数値であったと報告します。
しかしエネルギー価格の乱高下はいまだ続いています。したがって柏崎あい・あーるエナジーには財務体制をしっかりと固め、順調な経営を求めてまいります。
柏崎あい・あーるエナジーの経営状況といたしましては、自己託送供給と市場調達とのバランスをとりながら、順調に電力供給を進めていると聞いているところです。
さて、市がはじめて整備した太陽光発電所でございますが、完成に至るまで様々な課題がございました。その中でも系統接続に至るまでの期間や、設備納入が遅延傾向にあったことなど、工程管理の難しさを痛感したところでございます。
こうした経験から今年度、柏崎あい・あーるエナジーが発注する電源開発工事につきましては、系統接続申し込みを令和5(2023)年3月中に行うなど、前倒しで事業を進められるよう工程管理に努めていると報告を受けています。
次に太陽光発電事業の地元産業界への波及に関しては、現在、両発電所の電気保安業務を、(一社)東北電気保安協会柏崎事業所に委託し、その他の保安につきましては必要に応じて施工事業者にお願いするほか、今年度の電源開発工事では昨年に引き続き、地元事業者から工事を受注していただいたと聞いています。
また廃棄パネルの増大に伴う産業化については、市内の再資源化を見据えながら、将来的な産業として注視しているところです。
このように地元事業者が再生可能エネルギー関連産業に関わり、環境産業のノウハウを蓄積していくことが、地元事業者の受注の幅を広げ、技術力の向上、産業競争力の強化や、環境エネルギー産業の更なる創出につながると考えています。
近藤
2か所の太陽光発電所が8月末で順調に稼働していること、またこれまでの経験を教訓としながら、系統接続を早めに申し込もうとするなど、工程管理の面でも工夫されていると聞いて安心しました。
ただ、気になることとして、柏崎あい・あーるエナジーには社員を置かない状況の中で、系統接続もそうですが、様々な事業戦略を主体的に考えるブレインとなっているのがどこになるのか、電源エネルギー戦略室が主導しているのか、または事務委託しているパシフィックパワーなのか。もう一点、社員を置かない意味合いとして、あえて地元事業者に仕事をとっていただくために、柏崎あい・あーるエナジーは仕事をコーディネートしていく役目を担うということなのか。この二点についてお考えをお聞かせください。
市長
一点目については、柏崎あい・あーるエナジーには社員はいないものの、株主であり、代表取締役もいらっしゃるパシフィックパワーに実務を担っていただいています。
また社員を置かず地元事業者に仕事をとらせるということではなく、事業が安定してきて公共施設のみならず、株主はじめ市内の産業界に脱炭素エネルギーを供給できるようになり経営が安定化したら、社員を有していかなければならないだろうと考えております。社長である私自身はもちろん無給ですし、誰も給料をもらっていないのが実態でございます。
経営が安定化してきたならば、専属の社員や事務所を置くことも考えていかなければなりませんが、まだそこまでには至っていないとご理解ください。
近藤
脱炭素の推進と地元産業の育成、産業イノベーションの実現は、同時に進めていくべきだと思います。そこで、次の質問では、本市の主要産業である イ 製造業における脱炭素化の推進 について伺います。
製造業の脱炭素化には、化石燃料に依存しない電力や熱エネルギーを利用する「エネルギーの脱炭素化」と、CO2を排出しない工場機器や生産設備に切り替える「製造工程の脱炭素化」があると考えます。
「エネルギーの脱炭素化」については、リケンが北陸ガスとCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN)都市ガス」の供給契約を締結し、8/29から柏崎工場と剣工場で使用する都市ガスの一部を切り替えたことが発表されました。これにより年間1600トンのCO2が削減されるそうです。
また先般、開催された地域懇談会において、櫻井市長は、将来的にはINPEXが進める水素発電による電力を柏崎あい・あーるエナジーが買い取り、市内事業者に供給すること、更には柏崎刈羽原子力発電所が再稼働した暁には、市内事業者がその電気を使うことにも言及されました。もし実現すれば、地産地消エネルギーの好循環、持続可能な脱炭素のまち推進につながります。
その一方で、高効率ボイラーやヒートポンプなどの省エネ機器、最適なエネルギーマネジメントを実現するIoT技術、排出したCO2をエネルギーや素材として再利用するカーボンリサイクル技術などを導入し、製造工程の脱炭素化を進めることも重要と考えます。
ですが、設備投資にかかるコストや技術的な課題に加え、昨今の円安・エネルギーコスト上昇・材料高騰・材料不足等により、特に中小企業や小規模事業者においては、新たな挑戦・設備投資が難しいのが現状ではないかと思います。
今年の6月、経済産業省が公表した「2023年版ものづくり白書」によれば、【我が国製造業では、大企業の約9割、中小企業の約5割が脱炭素への取組に着手しているが、このうち約3割が脱炭素への取組によるメリットを感じていない。かかったコストを上回る利益を得るためには、脱炭素の取組をきっかけに、DXや新ビジネスを開拓するなど、事業戦略の見直しを行うことが重要】としています。
このことから、本市の製造業、特に中小企業や小規模事業者が、脱炭素化に取組むことで、持続可能性も高まるような支援の在り方が求められます。
また、市長はこれまで議会答弁などを通して、脱炭素電力によってつくられる製品の付加価値が上がると発言されてきたことから、脱炭素 由来製品の認証制度の創出についても、検討してはどうかと考えます。
そこで質問です。INPEXの水素発電、東京電力HDの柏崎刈羽原子力発電所による市内事業者への電力供給の実現性(可能性)、また、脱炭素化に取り組む企業に対する支援策の強化、そして、脱炭素由来製品の認証制度の創出について、見解を伺います。
市長
非常に展望を持った質問だとありがたく思います。脱炭素社会の実現には脱炭素電力の供給とあわせて、本市の主要産業であります製造業をはじめ、あらゆる分野での脱炭素化を図ることが重要であるという近藤議員のお考えはおっしゃる通りだと思います。
先ほどご紹介いただきました、市内製造業の中心であるリケンさんもCNガスの利用を始められましたし、こういった脱炭素社会の実現において非常に重要な役割を果たすリチウムイオン電池をつくる、市内にあります東芝リチウムイオン電池工場も、水力発電による電気でつくられた電池であることは、前にもご紹介した通りです。
いまやカーボンニュートラル電力、CO2を出さない電力が奪い合いになる時代であり、新聞を見ていても毎日のように、各企業がカーボンニュートラル電力~太陽光、水力、蓄電池 等々~についての記事が出されています。
そういった中で、脱炭素電力が世界的に重要視される中、市内産業界における脱炭素化の推進は、産業競争力の強化につながるものであり、民間事業者の脱炭素に向けた取組は非常に重要なものと注視しております。
ご質問いただきました(株)INPEXのブルー水素製造もその一つであります。ちょうど2年後となる令和7(2025)年8月から約1000kwの水素発電が計画されています。現在、INPEXが水素によって発電した電力を柏崎あい・あーるエナジーに融通していただく方向で、関係者間の調整を進めているとことでございます。
また柏崎刈羽原子力発電所による電力を市内に供給するという将来構想につきましては、市内の脱炭素化の大きな一手になると考えておりますので、引き続き東京電力HD(株)と交渉をしてまいります。過去、何回となく、社長や国と協議を重ね、私自身の考えを伝えてきているところでございます。
これら民間事業者による脱炭素に向けた取組と、市内産業界を結ぶ役割を担い、市内に脱炭素電力を優先的かつ安価に安定的に供給できる柏崎あい・あーるエナジーの存在は、他地域と比較して本市の優位性につながるものと考えております。まずは市内37か所の公共施設への電力供給により、経営の安定を図りながら、市内事業者に電力供給するための電源開発を進めることで、市内の脱炭素化比率の向上と市内産業界の競争力強化を図ってまいりたいと考えております。
今年度から柏崎あい・あーるエナジーの電力販売が始動し、市のエネルギービジョンで目指す脱炭素のまちに向けて、一歩ずつではありますが、歩みを始めました。引き続き市民の皆様の暮らしを豊かにし、環境・経済両面で持続可能なまちを目指し、脱炭素エネルギー政策の推進に取り組んでまいります。
次に近藤議員ご提案の脱炭素化に取組む企業への支援強化や、脱炭素由来製品の認証制度についてお答え申し上げます。(株)リケンは先ほどご紹介ただきましたように、CO2排出量削減のために、太陽光発電やCN都市ガスの導入など、様々な取組を行っていらっしゃいます。
また(株)東芝が製造するリチウムイオン電池は、先ほど申し上げましたように、電池を使ったシステムが鉄道車両向けヨーロッパ規格の認証を取得するなど、脱炭素化に資する製品として、様々な産業分野で活用されています。
ちなみにご紹介いただいた認証制度ではないのですが、西長鳥・鯨波の太陽光発電による電力供給を受けている市内37の公共施設には、このたび「この施設は自然にやさしい再生可能エネルギーを使用しています」というような、わかりやすいステッカー表示をさせていただいているところです。
今後ご提案がありましたように、脱炭素に資する高付加価値製品・サービスへの需要の高まりが認められることから、脱炭素化に取組む企業への支援や、認証制度について、国の動向も見ながら、柏崎市として必要に応じ検討を進めてまいります。
近藤
製造業は中小企業、小規模事業者も多いと思います。大手企業とは体力的な違いがあり、脱炭素に取り組むのは苦慮する面もあると思うのですが、サポートしていくお考えはありますでしょうか。
市長
もっともなご意見・ご質問だと思います。ただ今の段階では通常の電力・エネルギーよりも再エネなどのカーボンニュートラル電力は高い状態であります。柏崎あい・あーるエナジーの太陽光発電は自己託送(市の自前電源→公共施設)なので安く供給できていますが、他はあまり安くないので、大手企業がまず脱炭素電力を受けて、将来的には中小企業の皆様にもカーボンニュートラル電力を供給できるよう、柏崎あい・あーるエナジー共々、頑張ってまいりたいと思います。
近藤
もう一点、認証制度の件で、「自然にやさしいエネルギーを使っています」との表示を始められたとのことですが、今後もしかしたら国でも動きがあるかもしれませんが、できれば柏崎市が国に要望し、できることなら率先して脱炭素電力を使っている、あるいは脱炭素化に取組んでいる企業に対する、例えば脱炭素電力の使用比率によって製品ランクを決める加点方式とか、色々な方法があると思います。脱炭素電力によって柏崎のものづくり産業が頑張っているという姿を、世の中に発信していくような取組も進めていただけたらと思います。
次の質問では、(2)行動変容につながる脱炭素の可視化 について伺います。
2035年脱炭素社会の実現を目指す本市では、「柏崎市地球温暖化対策実行計画」及び「柏崎市ゼロカーボンシティ推進方針」において、具体的なCO2削減目標を掲げています。
本年度は「(仮称)柏崎ゼロカーボンシティ推進戦略」策定を目指し、先般、市民3,000人を対象に、地球温暖化対策に関するアンケート調査を実施しています。私にも調査票が届き、回答しましたが、地球温暖化対策には脱炭素行動が必要だと感じる内容でした。
「柏崎市地球温暖化対策実行計画」においても、平成25(2013)年度を基準年度としてCO2排出量を定め、令和7(2025)年度には-20%、令和12(2030)年度には-46%、令和17(2035)年度には実質ゼロを目指すとしています。
脱炭素社会実現のためには、市民・事業者それぞれの主体的な行動変容が必要であり、そのためには、本市が進める脱炭素施策の効果を、可視化・見える化することが有効だと考えます。
具体的には、本市の太陽光発電所の稼働によって、どの程度のCO2が削減されているかをグラフ等で市のHPに表示することや、事業者に対して、ECO2プロジェクトの対象となる取組のCO2削減効果を診断し、さらなる加点につなげるといった方法もあると思います。
更に、市民の行動変容を促すツールとして、脱炭素行動変容アプリ「SPOBY(スポビー)」があり、入間市が脱炭素型ライフスタイル促進事業に活用している他、仙台市や兵庫県高砂市においても利用されています。
SPOBYは人の移動を主とする行動変容における脱炭素量を計測する他、ユーザーの健康増進を目的とした活動量の底上げも実現しています。また、自治体サービスでは個人情報を保護した上で市民の人流解析が可能で定量データによる人々の行動変容を測定し、健康、環境、都市整備の実証データとして活用が可能とのことです。
本市においても、市民の健康増進と併せて脱炭素に向けた行動変容を促すために、こうしたアプリの活用も検討してはどうかと考えます。
そこで質問です。脱炭素社会実現に向けた施策のCO2削減量を可視化することで、市民や事業者の行動変容につなげてはどうかと考えますが、見解をお聞かせください。
市長
市民の皆さんや事業者の行動変容を促すことは重要ですので、脱炭素に向けた取り組みを可視化することは効果的であろうと考えております。温室効果ガス排出量の削減につきましては、個々の施策の効果や取り組みは大きなものではありませんが、地球温暖化を意識した行動には必ず効果があると感じていただくことで、市民の皆さんや事業者の行動変容につなげていきたいと考えております。
具体的には現在検討を進めております柏崎市ゼロカーボンシティ推進戦略につきましては、これらの考えに基づいた施策を展開できるよう、委託業者とともに内容構築を図っております。アンケート調査により、市民の皆さんや事業者の地球温暖化に対する意識を確認し、カーボンフリーの価値が高まった時代に適した施策とあわせ、効果を可視化する、ご紹介いただきましたSPOBYや県の「にいがたゼロチャレアプリ」等の取組を参考に、行動変容に向けた有効手段についての検討を進めてまいります。
先日フランス大使館に行ってまいりました。そして、そこで原子力専門の参事官からご紹介いただいたのは、エレクトリシティマップ ELECTRICITY MAPS というものです。つまり、いま現在、電力をつくることによってCO2を何g出しているかというのが国ごと、日本の中では地域ごとに分かれて出ています。いちばん少なかったのは九州電力です。九州電力は原子力発電所が動いています。太陽光発電がかなりあります。それがリアルタイムに出ており、東北電力管内も含めて原子力発電所が動いていないこともあり、柏崎は残念ながらかなりCO2排出量が高くなっています。
こういうことを含めて、今ご指摘いただきましたように、可視化・見える化は非常に重要なことだと考えるところであります。
近藤
今ほど ELECTRICITY MAPSについて伺いまして、非常に興味深いものですので、私も後ほど確認させていただきます。
「一人の百歩より百人の一歩」という言葉がありますけれど、こちらはCO2の削減にも当てはまると思います。市民の行動、事業者の取組の積み重ねが、脱炭素社会の実現につながると思います。そのためにもぜひ可視化・見える化を、行動や取組が持続可能なものとなるよう、施策の一環として進めていただきたいと思います。
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