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2025年12月24日 (水)

【議員研修会】政治分野におけるハラスメント防止研修

12月22日、柏崎市の顧問弁護士でもある、柏崎しおかぜ法律事務所の近藤千鶴先生を講師にお迎えして、「ハラスメント防止」をテーマとする議員研修会が行われました。

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1. 研修の目的・全体構成

目的:政治分野(議会)で起こりうるハラスメントを、一般論と実例から理解し、防止の意識づけにつなげる。

構成:

①ハラスメントの一般論(定義・なぜ許されないか)

②政治分野における制度・背景(法改正、実態調査、条例制定の動き)

③パワハラ・セクハラの定義(民間法制を参照して整理)

④政治分野の裁判例(川越市議セクハラ・パワハラ事案)

⑤防止のための意識(アンコンシャスバイアス等)

⑥内閣府リーフレットの事例で確認

⑦質疑応答

 

2. ハラスメントの位置づけ(なぜ許されないか)

・ハラスメント=嫌がらせ・いじめ・不快感を与える行為。

・憲法13条(個人の尊重)に根拠を置き、人格権・個人の尊厳を傷つけるため許されない。

・組織(議会・会派)への信用失墜、被害者の心身不調や休職/辞職、加害者側の辞職等、双方に重大な不利益が生じうる。

 

3. 政治分野で想定される“起こり方”(関係類型)

政治分野では次の関係で起こりうる。

・議員→議員

・議員→職員(議会事務局・市職員含む)(川越事案はここ)

・職員→議員(多くは想定しづらいが、条例で対象に含める自治体もある)

・議員→有権者

・有権者→議員(支援者・有権者によるセクハラ/パワハラ、いわゆる“票ハラ”的状況も含む)

※「女性が被害者になりやすい構図」はあるが、男性も被害者・加害者になりうる(同性間も含む)

 

4. 法制度・社会背景(政治分野の流れ)

・政治分野における男女共同参画推進法(2018/平成30):候補者・議員の男女均等を進める趣旨。

・令和3(2021)年の改正:ハラスメント対策を明確化し、研修・相談体制整備などの措置を求める方向へ。

・同年、内閣府が実態調査を行い、1か月で1324件の事例が寄せられた(立法事実として紹介)。

・これらを背景に、議会でのハラスメント防止条例や倫理条例での規定が増加。

*例:糸魚川市議会は「議員間」「議員↔職員」を対象にするなど、自治体で対象範囲は様々

 

5. 法的整理(パワハラ・セクハラの考え方)

※議員は労働法制の「労働者」ではないが、定義・考え方の参照枠として有用

(1)パワハラ(4要素の整理)

・職場(出張先、懇親会等“職場の延長”も含みうる)

・優越的関係を背景にした言動(上司→部下に限らず、同僚間・部下→上司・集団行為もありうる)

・業務上必要かつ相当な範囲を超える

・就業環境が害される

*判断のポイント:「被害者が嫌と言ったら即違法」ではなく、平均的な受け止め方を基準に判断される。

 

(2)セクハラ(対価型・環境型)

・「意に反する性的言動」により、

◆対価型:拒否への不利益(降格等)

◆環境型:職場環境が不快となり能力発揮に悪影響

*こちらも平均的受け止め方を基準としつつ、明確に拒否しているのに継続すれば該当可能性が高まる。

*性的指向・性自認などは外から分からないため、相手の多様性を前提に配慮が必要。

 

6. 裁判例(川越市議:職員へのセクハラ/パワハラ)

<事件の骨子>

・事務局職員の女性が記者会見で被害を公表

・市議が「名誉毀損」で提訴(慰謝料等請求)

・女性側が反訴(セクハラ等の不法行為に基づく損害賠償)

<裁判所の認定>

・懇親会・二次会・視察中の場面等で、身体接触、性的発言、飲酒強要的言動、立場を利用した不利益示唆などが具体的に認定された、という整理。

・認定の根拠として、録音やメッセージ等の客観証拠、供述の信用性判断の説明があった。

・第三者委員会の認定との差が出うるのは、証拠提出状況の違いによる可能性がある。

<結論>

・一部認容(慰謝料の認定)。その後控訴審で訴訟上の和解が成立し、加害側が行為を認め謝罪・金銭支払い等を行った。

 

7. 防止の考え方(研修の“着地点”)

発生要因として

〇アンコンシャスバイアス(男は~、女は~、若者は~、上の言うことを聞くべき等)

世代間ギャップ

「他者は自分と違う」ことを前提にする姿勢が必要。

法的に“違法”とまでは言えなくても、

〇今それを言う必要はあるか

〇何の目的で言うのか

〇相手はどう受け止めるか

を想像し、受け止めやすい注意・指摘の仕方を工夫することが予防になる。

全国では近年、議会におけるハラスメント防止条例の制定が進んでおり、令和7年12月11日時点で155団体・168条例が確認され、新潟県内では、糸魚川市議会がハラスメント防止条例を制定している。

一方、柏崎市議会では、独立したハラスメント防止条例は未制定であり、現在は議員倫理条例の中でハラスメント禁止を位置づけている

倫理条例でも一定の対応は可能だが、

〇議員が加害者・被害者となる場合
〇職員や市民(有権者)が関係する場合

など、多様なケースに専門的に対応するためには、専用条例を設ける考え方もある。

ただし、ハラスメント条例がなくても、倫理条例や民法第79条の不法行為により対応は可能であり、条例がなければ対処できないというものではない。

糸魚川市議会では、「議員間」および「議員と職員間」のハラスメントを条例の対象としているが、他自治体では対象範囲に違いがある。

 

8. 内閣府リーフレットの事例(政治分野らしい典型7類型)

【内閣府】政治分野におけるハラスメント防止のための取組

◆研修では動画教材の登場人物を使い、次の典型を確認。

①有権者→候補者:身体接触、連絡先要求、暴言

②議員→議員:女性にだけお茶くみ要求、性別役割分担・能力否定、接触

③議場のヤジ:容姿いじり、妊娠・出産に関する揶揄

④酒席:飲酒強要、侮辱発言、密着(デュエット等)

⑤支援者→議員:24時間対応要求、執拗連絡、SNSでの誹謗・私生活暴露(“票ハラ/カスハラ的”)

⑥妊娠・出産を理由にした圧力:辞職示唆、欠席規定の利用を非難、出席強要(マタハラ)

⑦会派内いじめ:暴言、恫喝、集団無視、物を投げる等(典型的パワハラ)

【全体版】政治分野におけるハラスメント防止研修教材

 

9. 質疑応答

Q1:一言でセクハラになるのか?

A1:一言で直ちに法的違法になるとは限らない。環境、関係性、反復性、影響の程度などが重要。

ただし、「法的にアウトでない=言ってよい」ではなく、倫理・適切性の観点で自制が必要、という整理。

 

Q2:酒席で覚えていない場合、責任は?

A2:酔っていたことだけで責任が免れるわけではなく、意思能力が否定されるのはよほどの例外的状態。

実際の場では「言動があったこと」の立証(録音、目撃者等)が争点になりうる。

ーーーーー

非常にわかりやすく、整理された内容でした。

ハラスメントは「あってはならないこと」であるものの、実際には中々なくなるものではありません。

数年前に他県の元市議会議員の女性から、「2期目に当選後、他の先輩議員から、議会での発言や提案の否定、役職に就かせないといった妨害、誹謗中傷などの嫌がらせが続き、心身にダメージを受けて3期目の挑戦を断念した」と伺ったことがあります。

その方が良識的で優しい人柄であることは、周りの方々の様子からも伝わってきました。

真面目な女性議員の活動が「生意気な行動」として目をつけられ、議会としての解決策を得られない中、闘う気力・体力もなくなり、政治の世界から身を引かれた現実に、痛ましさとやるせなさを感じました。

なお、高市総理は自由民主党総裁選の公開討論会で、「女性の政治参画を推進し、女性議員を増やすためには、政治活動と家庭生活の両立支援、そして、女性の政治参画の障壁であるハラスメントへの対策が必要」と述べられていました。ご自身のご経験も含めて、非常に現実的な回答だったのだろうと推察します。

ハラスメントの根底には、「やっている側」の無自覚、「このくらいはいいだろう」との解釈、「相手に非があるのだからやって当然」という認識、さらには相手の泣き寝入りを期待する気持ちがあるのではないかと思います。

「自分がされて嫌なことを他人にしてはならない」ということは、幼少期から誰もが教えられてきた人権尊重の基本的な戒めですが、個々の感じ方や価値感が異なる多様な時代において、これだけでは規制・抑制できないのが現実です。

となれば、「感情的・衝動的な他者への行為や態度が、ハラスメントとして認定されたら、やった側にも何らかのダメージがある」ということを、共有し続けるしかないのかもしれません。

いずれにせよ、ハラスメントをなくすには、議会であれ、職場であれ、集団生活を営む中で

・他者への思いやり

・信頼関係の構築

・常に自らの言動を客観的に省みる習慣

・他者の行き過ぎた言動を止める勇気 

といったことが大切であると、あらためて実感しました。

そして、条例の存在だけではなく、このように「襟を正す」機会によって、「ハラスメントのない議会」を形成していく努力が不可欠だと思います。

丁寧かつ的確にご講演いただいた近藤先生、本当にありがとうございました。 

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