【北海道視察1】高レベル放射性廃棄物の地層処分事業と地域の受け止め状況
8月6日~8日、北海道への会派合同視察に同会派の田邉優香議員と一緒に参加しました。
8月6日には、札幌市にてNUMOから、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業と地域の受け止め状況について学びました。
◆NUMO:原子力発電環境整備機構とは
・「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき2000年に経済産業大臣の認可を受けて設立した法人。電気授業者等が人材、資金を供出。
・高レベル放射性廃棄物の処分地選定、処分施設の建設・創業・閉鎖を担う。
◆地層処分とは
・使用済燃料をリサイクル(再処理)すると、95%は再利用できるが、残り5%は廃液となる。廃液をガラスに融かし合わせて固めたガラス固化体(高レベル性放射性廃棄物)を、地下深くの安定した岩盤に取り込め、人間の生活環境から隔離する方法が地層処分である。
・再処理過程で発生する廃棄物のうち、半減期の長い核種が一定量以上含まれる燃料被覆管などは「地層処分相当低レベル放射性廃棄物(TRU廃棄物)として廃棄体パッケージに封入し、ガラス固化体とともに地層処分する。
・地層処分の仕組みは、ガラス固化体を金属製の容器(オーバーパック)、粘土(緩衝材)で包む「人口バリア」と、地下300m以深の安定した岩盤に埋設する「天然バリア」による多重バリアで構築される。
・国の方針として高レベル性放射性廃棄物は地層処分することを2000年に決定した。
◆最終処分場の施設
・地上施設(約1~2K㎡)と地下(約6~10K㎡)に分かれ、地下にガラス固化体を4万本以上埋設できる施設を、全国に1か所建設予定。
・最終処分地は、文献調査(色々なデータを使って調査:2年程度)、概要調査(ボーリングなどの現地調査:4年程度)、精密調査(地下に調査施設を建設して調査:14年程度)の3段階を経て選定される。
◆日本における「文献調査」の動向
・2020年11月17日に北海道の寿都町と神恵内村、2024年6月10日に佐賀県玄海町で文献調査を開始。寿都町は町長が応募、神恵内村・玄海町では議会での請願採択を踏まえ、国が申入れして各首長が受託。
・2021年3月に、寿都町、神恵内村それぞれに交流センターを開設。
・2021年4月、各町村とNUMOが「対話の場」を立ち上げ、中立的なファシリテーターの進行により、地元住民をメンバーとして、寿都町で17回、神恵内村で21回開催。地層処分への理解促進、まちづくり等について意見交換を重ねている。
・文献調査では、文献・データから、処分場候補地として不適であり避ける場所を確認し、文献調査対象地区から除いて概要調査地区の候補を選ぶ。具体的には、避ける場所の6つの項目(①地震・活断層 ②噴火 ③隆起・侵食 ④第四期の未固結堆積物 ⑤鉱物資源 ⑥地熱資源)と、2つの観点(⑦技術的観点 ⑧経済社会的観点)から検討する。
◆文献調査の結果
・寿都町では6つの項目と2つの観点から、不適な場所・避けるべき場所は確認できなかった。
・神恵内村では②噴火 において「避ける場所」が、⑧経済社会的観点 において、土地利用に係る法規制上「原則許可されない地域」が確認された。
・文献調査の結果は、令和6年11月22日~令和7年4月18日までの間、最終処分法に基づき、寿都町、神恵内村、北海道内でNUMOによる説明会を実施。これまでに25会場で1517名参加し、2114枚の質問・意見が提出された。
・今後は寄せられた質問・意見の概要及びそれらに対する見解を作成し、知事・市町村長に送付する。その後、意見に配慮して概要調査地区(候補)を選定し、経済産業大臣に実施計画の承認申請。これを受けて、経済産業大臣が候補地区の知事・市町村長に意見聴取し、概要調査に進むかどうか判断する。
◆概要調査について
・文献調査の範囲(不適な場所・避けるべき場所を除く)の中で、3つの要件(①地層の著しい変動がないか→断層、火山、隆起・侵食 ②坑道採掘への支障がないか ③地下水流等の悪影響がないか→岩盤、地下水)について調査を行う。
・空中や地上からの探査や地表踏査などにより総括的に把握し、範囲を絞ってボーリング調査やトレンチ調査、海上からの調査などにより詳しく調べる。
・概要調査の段階で、3つの要件に該当する範囲を除外し、精密調査地区を絞り込む。
<質疑応答>
質問1
対話活動を通して地層処分への理解はどの程度進んだか。
回答1
「対話の場」は地層処分を先行する諸外国の事例をもとに設置し、中立的なファシリテーターのもと、地層処分のことだけではなく、地域の将来やまちづくりについて意見交換している。文献調査結果の報告は、法定プロセスに沿って実施し、説明会を地元および道内で広く開催し、技術的、社会的観点から様々な意見をいただいた。現時点で理解度を測る段階にはないが、質問・意見には丁寧に回答し、理解を得たいと考えている。
道内の周辺自治体に対しては、「対話の場」終了後、住民に報告チラシを配布する他、周辺自治体の窓口で説明している。
文献調査の開始当初は周辺地域での反発は強く、反対決議や核抜き条例を制定した自治体・議会もあったが、次第に話を聞いてもらえる状況になりつつある。文献調査の報告会は法定地域以外でも開催した。その他、北海道新聞への意見広告やイベント開催により周知を図っている。
質問2
候補地拡大(手挙げする自治体を増やす)に向けた取組の展望は。
回答2
フィンランド、スウェーデン、フランス等、地層処分を進める海外の先進事例では文献調査段階で6~10地域を候補地としているが、日本ではまだ3地域である。一方で申入れのプロセスが挙手性もしくは国からの申し入れ制だが、北海道知事からは処分地選定選定プロセスを見直し国が前面に立ち、新たな枠組みで選定を進めるべきとの意見書が出されている。国でも政策的なプロセスのあり方を検討する動きがある。
質問3
北海道知事は「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」をもとに概要調査に進むことに反対の意向だが、今後の働きかけにより次の段階に進む可能性もあるのか。
回答3
条例は2000年に幌延深地層研究センターを建設する際に制定されたが、25年を経て技術や知見が進歩しており、道議会では、「概要調査の段階では特定放射性廃棄物が搬入されるわけではないのだから、国民的議論を喚起するためにも次の段階に進み、条例についても検討すべき」との意見もある。報告会でも住民から同様の意見はあった。
質問4
調査に時間がかかりすぎるのではないか。
回答4
文献調査は約2年とされているが、初の調査であり丁寧に進めた。文献自体かなりのデータ量があり、国が示した評価の考え方が後から示されたことも時間を要した原因である。
質問5
対話の場で将来のまちづくりについて議論したとのことだが、交付金を活用した地域振興や最終処分場に決定した場合の町・村の在り方について話す場となったのか。
回答5
必ずしも交付金や地層処分と直結したものだけではなく、地域の将来について考える場となった。詳細はHP等に掲載されている。
質問6
対話の場にはその都度、地域の色々な方々が参加したのか。
回答6
メンバーは固定したが、1年ごとに交代する等、多様な立場の住民が参加するようにした。
質問7
対話の場で出たまちづくりについての意見は自治体の総合計画等に反映されるのか。
回答7
対話の場では寿都町、神恵内村職員もオブザーバーとして参加した。施策にそのまま反映するものではないが、参考にする部分もあったのではないかと思われる。
日本のエネルギー政策において、核燃料サイクルを機能させること、特に高レベル性放射性廃棄物の最終処分場を決めることは、原子力発電を活用する上での重要課題です。
最終処分場の選定は、文献調査・概要調査・精密調査の3段階を経て行われますが、今回の視察では、北海道の2自治体(寿都町、神恵内村)で行われた文献調査の状況や、今後のプロセスを知ることができました。
また、北海道への特定放射性物質の持ち込みを拒む条例の背景や、文献調査のパブリックコメントに意見書を提出した現知事の真意についても理解を深める機会となりました。
市町村の意向で文献調査から概要調査、精密調査に進み、「適地である」と判断されたとしても、都道府県が最終処分地となることを拒否すれば、それまでの努力は水の泡になってしまいます。
そうならないよう、まさしく国が前面に立ち、政治的な働きかけを行うのと並行して、地層処分が国民的な理解を得られるよう、働きかけていくことが重要だと感じました。
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