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2025年8月 8日 (金)

【北海道視察3】旭川市の観光政策

8月8日は、旭川市の観光政策について学びました。

<旭川市 観光政策>

◆地域連携DMO(一社)大雪カムイミンタラDMOについて
・1市8町(北海道旭川市、鷹栖町、東神楽町、当麻町、比布町、愛別町、川上町、東川町、美瑛町)で構成され、代表者は旭川市長。マーケティングの責任者(CEO)は、市役所の観光課から派遣されている(任期3年。最長5年)。

・区域に観光協会があるが、元々大雪山を基軸に観光で広域連携してきた経緯がある。

・平成26年にDMO発足の話があり、役割分担をした上で、平成29年10月に設立。現在8年目なる。その後、当麻町、美瑛町が加わり令和6年7月より現在の形となった。

・主な収入は、カムイスキーリンクス事業であり、各自治体から負担金を徴収。旭川市は交付金が多いので、他8町より多く出資している。

◆令和7年度の事業計画について
・北海道第二の都市、旭川市として『都市型スノーリゾート』を形成。中心地からスキー場までバスで30分。スキーをして都市部に宿泊し、夜は街中で楽しんでもらうことで滞在時間の延長を目指す。

・北海道のスキー場はニセコが有名であり、オーストラリア、北米からのスキー客が多いが、ニセコに飽きた客が、異なる雪質を求めて流れてくるようになった。そこで、富良野、トマム、カムイスキーリンクスで「北海道パウダーベルト推進協議会」を構成し、道内の各スキー場を切り口に広域連携しており、トータルで見ると利用客は右肩上がりである。

・降雪期前後の4月、11月が閑散期となっていたことから、「温泉+食」をベースに、年間を通して誘客が出来るよう工夫をしている。

◆旭川市観光振興条例について
・令和4年4月、コロナ禍が終わってから条例を施行。これま旭川観光基本方針を定め、原則5年で見直してきたが、時代にとらわれない普遍性を盛り込み、新たに条例を制定した。

・コロナ禍を経て、宿泊事業者や交通事業者と行政とで共に作った条例であり、同じ意識で進められているが、理念条例のため、市民や各種事業者への浸透、啓発が今後の課題。

・DMOが主催する大雪エリアの自然体験をサポートするアウトドアガイド育成のための実践プログラムを実施。ガイドがいる事で、客の満足度が上がるので、人材育成には力を入れている。

・DMO圏域におけるプランの立案・実行のための基礎的ノウハウ・知識を学ぶ研修会を実施。夏はグリーンシーズンとして観光客が人気だったが、近年はパウダースノーが認知され冬のスキー客が増加している。

・北海道は自然体験が主となるため、ハイシーズン間に停滞が発生していたが、補完するものとして、旭川家具や木工クラフト、日本酒・醤油・チーズなどの醸造文化やアイヌ文化の学習などにも力を入れている。

◆旭川観光コンベンション協会について
・旭川市には医大があるので、以前から学会を誘致してきた経緯がある。

・市の職員が1名、旅行代理店より1名、飲食店:約100社、宿泊・会場業者:約40社、印刷・出版社:14社等で構成。7月末現在、会員4493社が加入する。

・令和6年度に当協会として初めて観光庁から採択を受け「日本の夜の文化スナック」を旭川で開催。一人で入るには敷居が高いと言われるスナックを紹介することで好評を博した。

◆極寒体験証明書について
・旭川は1902年1月25日、史上最低気温マイナス41度を記録した国内屈指の寒冷地である。観光客が厳しい寒さを楽しい体験として記憶し、記念品として持ち帰ってもらえるよう「極寒体験証明書」を発行。ただし現在は温暖化が進み、冷え込んでもマイナス20度(まつ毛が凍る程度)までしか気温が下がらない。

<質疑応答>
質問1 
広域連携の成果と課題

回答1 
以前より大雪山を基軸に観光で広域連携してきた経緯があるので、連携の素地はできており、良い関係性の中で進めている。

質問2
インバウンド需要の現状やオーバーツーリズムの課題について

回答2 
オーストラリアや北米からのスキー客が増加し、スキーのレンタル料やスキー時後のレストラン利用がある事で、来場者以上に売り上げが伸びているのは、インバウンド効果といえる。
旭川ではオーバーツーリズムの問題はないが、美瑛町では元々観光地ではなかった青池が素晴らしい景色であると紹介されたことで、たくさんの観光客が訪れ住民が困っている現状がある。トイレを和式から様式へ変えたり、駐車場を広げたり、農地へ入らないよう伝えたり、観光庁より補助金を頂き対策を行っている。オーバーツーリズムというより、オーバーキャパシティーの状態であり、こちらとしては、観光客が来ていただくことは感謝でしかないので、地元住民へのストレスがかからないよう、事前にツーリズムマナーを伝え対策するようにしている。

質問3 
今後の展望について

回答3 
DMOとして、観光庁としては当初100程度を見込んでいたが現在、全国に準備段階も含め353団体ある。登録条件の見直しが観光庁より言われているが、当初よりKPIをしっかり設定し、来訪者へのアンケートも行っていたのでこのまま継続予定。マーケティング戦略、人材育成がとても重要であると感じている。

質問4 
行政、DMOとの関わりについて

回答4 
旭川観光コンベンション協会は、市の観光施策を実行する「実働部隊」的な位置付けであり、市からの補助金・委託事業が多い。「案内・実装」面を観光協会が、「戦略策定・広域連携」をDMOが担い、互いに補完しながら広域観光の発展を共に進めている。インバウンド・データ活用・地域資源の磨き上げ等の観点で協働している。

質問5 
カムイスキーリンクスについて

回答5 
元々民間が始めたスキー場であるが破産し、現在は、旭川市が市民のスキー場として引き取り、(一社)カムイミンタラDMOが指定管理者として委託され運営。委託料は無く収入は売り上げのみ。メンテナンスは旭川市が行っている。・地元客が7割で地域を大切にしている。
Fits認定コースのある大きなスキー場で、上が国有林、下は市有林となっている。

DMOは元々、海外の観光地域づくりを担う組織を指す言葉ですが、大雪カムイミンタラDMOは、観光庁が推進する「観光地域づくり法人」、すなわち日本版DMOに該当し、1市8町が加入する広大な地域連携組織であり、win-winとなるよう相互協力しています。視察前はDMOと観光協会の違いがよくわからなかったのですが、DMOが戦略策定・広域連携、観光協会が実働を担うとの説明を受け、それぞれの役割を理解できました。

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次に市営の観光資源「旭山動物園」を視察しました。

◆旭山動物園について
・昭和42年に開園し、今年で58年目。

・人口規模程度の30~40万人の来園を想定した動物園であり、地域を代表する観光拠点である。一時は26万人まで来場者が減ったが、工夫を凝らした行動展示が話題となり、メディア効果により年間300万人を超える年もあった。現在は年間140万人程度。

・インバウンドの数は近年増加し、特に冬は7~8割が外国人観光客である。サンプルによる国籍のアンケートによると、台湾からの観光客が最多であり、次いで中国本土、東南アジア、シンガポールからの来場者が多い。

・インバウンド需要はコロナや国際的な不安定要素により乱高下するために、地元の客の割合を増やしたい点が課題となっている。現状は、地元にお客さんが来た時に連れていく施設というイメージが定着している。市民特別料金を設けているが、全体の2~3%程度の利用。パスポート利用は10%くらいが現状。

・指定管理や民間へ外部委託などをせず、完全に市直営で運営しており、人事異動により動物園の部署に配置されている。動物園運営の専門教育を受けていない職員により構成されているが、「お客様と動物の橋渡し役」というスタンスで職務に臨んでいる。

<質疑応答>
質問1 
地元客を増やすための取組について

回答1 
駅から動物園までのバスを動物ラッピングしてPRしている。
キッズZooという日を年1回設け、子どもだけが入園できる日を昨年より試験的に導入。申込制とし、保護者は待機してもらい、子どもだけで自分の興味のままに動物園を楽しんでもらえるようにと考えた。

質問2 
市の直営との事だが、飼育経験のない職員が移動してくる事などについては、どのように考えているか。

回答2 
飼育知識はゼロでもよい。今までは客として動物を観ていた職員が飼育スタッフとなる事で、新たに気づき感動したことを、お客様へ動物の素晴らしさを自分の言葉で伝えてもらいたいと考えている。

質問3 
アニマルウエルフェア・動物福祉についてどう考えているか。

回答3
とても大事な考え方だと思っている。動物が動物らしくいられるために、個々の動物の習性を理解して見せ方の工夫をしている。・例えば、白熊の水槽の高さは、お客様が水槽の前に立ち観た時に白熊からは水面から人間の頭の先だけ飛び出て見える高さに設定している。これは、白熊が、氷の上で海水面から飛び出したアザラシをねらう習性を逆手に取ったものになっている。

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旭山動物園は知名度が高く、強い集客力を持つテーマパークですが、指定管理者制度を入れていないことに驚きました。

近年ようやく認知度が上がりつつあるアニマルウェルフェア(動物福祉)をいち早く取り入れたことも含めて、飼育専門ではない職員の視点やアイディアが生かされ、常にブラッシュアップされているのだと思います。

園内は大勢の来場者がいたとしても、混雑や渋滞を避けられる配置となっており、動物と来場者がともに心地よい状態で出会える場になっていました。

DMO、市営動物園それぞれの取組に共通するのは、地域資源の魅力を十分引き出しながら、常に進化を遂げている点だと感じました。柏崎市の観光戦略や地域資源の活かし方を考える上で参考としたいと思います。

 

 

 

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