令和7年6月一般質問1「柏崎刈羽原子力発電所立地自治体としての使命」
6月10日、一般質問を行いました。
以下はその内容です。
おはようございます。会派「明日への希望」の近藤由香里です。
最初の質問 1 柏崎刈羽原子力発電所立地自治体としての使命 では、まずは(1)「福島」及び「新潟」における再稼働の価値 について伺います。
柏崎刈羽原子力発電所を巡る現状は膠着し、6,7号機の再稼働を見通せないのが現状です。新潟県知事は、同発電所の電気は首都圏だけに送られ、地域にとって恩恵・メリットがないとして、国に電源三法交付金制度や、避難道路等の整備に必要な特別措置法の見直しを求めています。
しかし、同発電所の再稼働は、地域の恩恵・メリットだけの問題ではなく、福島の復興にも大きく影響します。福島第一原子力発電所の事故に伴う賠償、廃炉、除染費用は約23兆円と試算され、国が設立した原子力損害賠償・廃炉等支援機構が国債を原資として、東京電力HD(株)に資金援助、すなわち立替を行い、事故後の処理を進めています。
東京電力HD(株)はこのうち約16兆円分を自社で確保するため、再建計画である第四次総合特別事業計画に基づき経営努力を続けてきました。ですが、収支改善の柱として位置付ける柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が見通せず、昨年度に行うはずだった総合特別事業計画の全面改訂は先送りとなっています。柏崎刈羽原子力発電所を再稼働できない状況が続くことにより、東京電力HD(株)の経営状況は悪化し、福島復興は遅れ、国の財政負担は増えていきます。
また、同・支援機構における業務の費用は全国の原子力事業者から徴収し、新潟県内に電力供給している東北電力(株)も、年間に約106億6千万円を負担しています。同社は厳しい経営環境にありますが、昨年10月に女川原子力発電所2号機が再稼働したことにより、令和6年度決算において、約125億円の収支改善効果があったことを発表しました。つまり、福島復興のために負担している費用は、原子力発電所を動かして得られる利益の約5か月分という計算になります。
尚、東北電力(株)は女川原子力発電所の再稼働を前提に電気料金の値上げを抑制しており、順調に稼働しても、経営状況がすぐに好転するわけではないと思います。
そもそも電気は人と社会に必要不可欠なライフラインであり、電力事業者の安定的な経営環境があってこそ、持続可能な供給がなされるのではないでしょうか。
こうした現実は、新潟県における柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を巡る議論の訴状に上がってきません。しかし、櫻井市長は、エネルギーセキュリティや脱炭素とともに、福島復興のために再稼働は必要であると、一貫して述べられており、今あらためてそのお考えを柏崎の意思として示していただくことが、柏崎刈羽原子力発電所立地自治体としての使命ではないかと考えます。
そこで質問します。福島の復興に向けた諸費用の捻出、および、新潟県を含む日本全体に対する安定的な電力供給という観点から、柏崎刈羽原子力発電所の「再稼働の価値」について、市長の見解を改めて伺います。
市長
これまで私は、この市議会をはじめとする様々な場において、何度も繰り返し、原子力発電所の再稼働の意義をお伝えしてまいりました。その意義とは、一部、近藤議員からも今ご紹介いただきましたけれども、福島の復興のため、我が国のエネルギーセキュリティを確保するため、そして地球規模の温暖化防止に寄与するための三つでございます。
福島の復興につきましては、近藤議員のおっしゃる通りであります。その費用の大半を担う東電の経営が傾いては元も子もありません。23兆円を超える中で、東電が負担するべき部分は16兆円超えるという部分であります。しかし、この東電の経営が傾いては福島の復興は成し得ないというのはご指摘の通り事実であります。また、エネルギーセキュリティに関しましても、地球温暖化防止のためにも、今の日本には原子力が必要であります。データセンターなど電力需要の伸びを考える時、なおさらであります。そして、原子力発電を担う電力事業者の経営の安定は必須であります。これは東京電力のみならず、今ほどご紹介いただきました東北電力、あらゆる電力会社に言えることであります。
さて、今ほど近藤議員も知事の言葉として、またいろいろな首長さんが柏崎刈羽原子力発電所の電気は首都圏に送られるだけでメリットがない・恩恵がないということを、テレビの前でもいろいろな場面でもおっしゃっています。
これは明らかに事実と異なります。そのことをまずお示しておきたいと思っております。
まず雇用にしても、サイト内で働く方の約8割が新潟県人であります。また、協力企業として参入している県内事業者も多いわけです。長岡市、上越市はじめUPZ圏内、新潟市内の企業も大きな仕事を請け負っているはずであります。
原発誘致当時、田中角栄先生のご尽力で成立した、いわゆる三法交付金制度の恩恵を受けているのは、柏崎刈羽だけではありません。
電源立地促進対策交付金相当分として、過去累計で長岡市には約47億円、上越市には約31億円、新潟県には約115億円。電源立地給付金いわゆる電気料金の軽減分の過去累計では、長岡市で約990億円、上越約71億円、電力移出県等交付金相当分、これは火力も水力も含まれているわけでございますけれども、新潟県に1191億円、新潟県独自の課税であります核燃税は過去累計約945億円。近藤議員もご存知の通り、過去6年の中で、この核燃料税に関しては2回も税率を改定し、増税をしたわけであります。
先ほど申し述べた雇用・企業参入を含め、経済効果も新潟県において調査されたはずであります。先ほどお話しましたように、首都圏に電気を送るだけで何のメリットもないといいますが、実は近藤議員もご承知のように送るだけではないわけです。
私たち新潟県民は過去に使っています。ご存知の通り、東京電力柏崎刈羽原子力発電所1号機110万kwhの半分、つまり、55万kwhの権利は東北電力の持ち物であります。東北電力が1号機完成、つまり1985年から空いてる年もありましたけれども、24年間に渡ってその出力の半分、825億kwhだそうです。
東京電力・柏崎刈羽原子力発電所1号機の24年間分の出力の半分は東北電力が権利を持ち、新潟県内及び東北電力管内に供給をしております。今もちろん動いていません。24年間にわたって825億kw/h、これはどういう数字なのかなと思って確認をしましたら、新潟県は約90万人世帯です。
新潟県が90万人世帯の一般家庭が、24年間すべて使える電力を825億kwhという数字になります。繰り返しになりますけれども、東電の一号機の半分は東北電力の権利であり、すでに新潟県民はもちろん、柏崎のみならず、新潟市も含めて新潟県民は、原発の電気を使っております。
そしてさらに、これは近藤議員もすでにご承知の通り、女川原子力発電所2号機は昨年12月26日から営業運転を始め、直接・間接は別として、東北電力が動かしている原発の電気を宮城県のみならず東北六県プラス新潟県は共有してるわけであります。こういった事実を無視して、メリットが何もないとおっしゃるのは事実誤認も甚だしいわけであります。
そういった意味で近藤議員からお話しいただきました、この再稼働の意義というものは、福島の復興のためにも、そのためには経営をしっかり確保してもらわなきゃいけないということを含めて、非常に重要であるということをご答弁させていただきます。
近藤
今ご答弁いただきました福島における、そして新潟における再稼働の価値。この今の市長のお話、ぜひ市内市外問わず、この新潟県全体に、また全国に届くように発信を続けていただきたいとお願いいたします。
また、新潟県内ではいまだに原子力災害時の「避難」に特化した議論が続いていますが、UPZ住民が取るべき行動は「屋内退避」であります。そこで、次の質問では
(2)「屋内退避」に重点を置く原子力防災の推進 について伺います。
今年3月8日に、福井県で「これからの原子力防災―屋内退避を考えよう―」とのセミナーが開催され、柏崎市職員も参加したことが報じられ、今後の本市の取組に行かされるものと受けとめます。
また、3月22日、柏崎市主催・防災士対象の研修会「原子力防災と放射線~行動を起こすために知っておくべきこと~」は、放射線防護と原子力防災への理解促進の機会となりました。
放射線防護の3原則は「距離をとる」、「遮へいする」、「時間を短くする」であり、原子力災害時の屋内退避は「遮へいする」、避難は「距離をとる」に該当し、どちらも余計な被ばくをしない有効な方法だと学びました。避難が目的ではない、避難できないから屋内退避ではないことは、さらなる周知が必要だと思います。
そして、3月28日には、原子力規制委員会の「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム会合報告書」が公表されました。原子力災害対策指針の考え方を変える必要はないとしながらも、屋内退避について曖昧だった部分が整理され、実際に屋内退避した場合の懸念事項への対応策等も示されています。櫻井市長は、「国、県、私たち基礎自治体が国民、県民、市町村民に客観的な事実関係、屋内退避の効果、科学的分析などを『分かりやすく普及啓発することが必要である』という結論はもっとも重いものである。」とコメントされています。
そこでまずは、「普及啓発・教育における展望」 について質問します。
原子力防災に関する普及啓発や子ども達への教育において、市民向けの研修や原子力防災出前講座への反映、屋内退避を想定した訓練やワークショップの開催、学校での防災学習への落とし込み、広報かしわざきや公式サイト、SNS等での情報提供・発信強化といった取組を今後進める考えがあるか、お聞かせください。
危機管理監
原子力規制庁が設置いたしました原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チームは、福島第一原子力発電所事故では被爆に伴う急性の健康影響が報告されていないのに対し、避難行動に伴う多くの災害関連死が発生し、その教訓から被爆によるリスクよりも、自然災害による被害、避難行動の心身への負担等が直接的に生命にも関わる重大なリスクであるとの検証結果を、会合報告書に明記をしております。
また、屋内退避の運用に関する普及啓発についても、国、県、そして私たち基礎自治体が国民、県民、市町村民に客観的な事実関係、屋内退避の効果、科学的分析などをわかりやすく普及啓発することが必要であると結論づけており、櫻井市長もその結果を最も重いものであるとの認識をどう報告書の取りまとめに対するコメントで示しております。
市といたしましては、これまでも様々な年代や立場の方々に対して、原子力防災知識の理解を深める取り組みを行ってまいりましたが、今後はさらにUPZにおける屋内退避の有効性を研修等の内容に落とし込み、これまで以上に具体的かつ、よりわかりやすい研修等を実施してまいりたいと考えております。
あわせて、研修動画の配信など、これまでにない新たな手法での情報発信等を検討し、より多くの市民の皆様への原子力防災に関する正しい知識の普及啓発に取り組んでまいります。防災士でもいらっしゃいます近藤議員からも、引き続きお力添えを賜りたいと思っております。
近藤
今ほどのご答弁で、さらなる普及啓発を進めていくという方向性示していただきました。また、今、防災士という言葉が出ましたが、防災士は地域の自助・共助の要であります。
そこで次に「屋内退避を想定した自助、共助、公助の強化」について、例えば、家庭での備蓄品リストの提案、地域コミュニティでの屋内退避を想定した訓練の実施支援、防災士への継続した研修、指定避難所における備蓄品の拡充といった取組を進める考えがあるか伺います。
危機管理監
まずもって、万が一の原子力災害発生時において、市民の皆様の生命と安全を守るためには、自助・共助・公助の三位一体となった原子力防災体制の強化が不可欠であります。
特に自助につきましては、市民の皆様への普及啓発が重要であり、これまでも原子力災害特有の備えとして、雨具や安定用素材、車の燃料半分以上入れておくなど、平時からの準備を周知してまいりました。
また、市内全てのご家庭に配布しております「災害ガイドブック 原子力災害編」に屋内退避の有効性や屋内退避のポイントなどを記載させていただいております。
加えて、原子力災害時において地域を牽引し、自助共助を実践できる的確な判断力を備えた防災士を養成すべく、複数年にわたる継続的な研修会を今年度から開催いたします。具体的には今年3月に研修会を開催し、近藤議員からもご参加いただきました。原子核や放射線の専門家でいらっしゃる福井大学の安田教授を講師にお招きし、防災士の皆様から原子力災害に対する知識の向上を図っていただきたいと考えております。
あわせて、各地域の指定避難所での屋内避難を想定した場合、備蓄物資の拡充や充実が必要なことから、国の補助金を活用し、食料、飲料水、簡易トイレなどを順次配備して参りたいと考えております。
近藤
屋内退避は原子力災害だけでなく、例えば豪雪や大雨での在宅避難、自然災害での避難所での生活でも必要となります。そういった意味では、あらゆる災害において必要なことかと思いますので、それも含めて、より一層のあの現実的なこの遺品の準備等につながっていくようにお願いしたいと思います。
最後に「要配慮者入所施設に対する支援」 についてお聞きします。
福島第一原子力発電所の事故では、近隣の病院の入院患者や介護・施設入所者らが、十分なケアを受けられないまま、長期間の避難により亡くなりました。この反省を踏まえ、原子力災害対策指針では、要配慮者が入所する医療・介護施設等では屋内退避する方針となっています。
6月7日には、原子力災害により屋内退避指示が出た場合の近隣の医療機関の業務継続に向けて、内閣府は情報収集に着手したことが報じられました。具体的には松江の島根原子力発電所の近隣の病院での業務継続計画への支援を通して、情報収集を図るということでした。
このような国の動きも踏まえ、柏崎市の対応について質問します。病院、介護・福祉施設等の要配慮者入所施設に対して、例えば、施設ごとの屋内退避計画の策定支援、放射線防護のための職員研修、備蓄品拡充に対する支援、屋内退避となった場合の外部からの支援体制の構築といった取組を進める考えがあるか伺います。
危機管理監
先般、内閣府が主導する柏崎刈羽地域原子力防災協議会作業部会で取りまとめられました。柏崎刈羽地域の緊急時対応案において、柏崎市内のすべての医療機関や社会福祉施設における避難計画は、屋内退避計画を含めてすでに策定済みであるというふうにされております。
このことから、市といたしましては、引き続き国や県と連携しながら、さらなる計画の充実化を支援するとともに、原子力災害時における屋内退避の有効性や避難によるリスクなど、科学的客観的な事実に基づいた正しい知識が施設職員の皆様へさらに浸透するよう、研修会や情報発信の充実等に取り組んでまいりたいと考えております。
また、万が一、原子力災害が発生し、屋内退避が実施された場合においても、医療機関における診療等の医療提供、入所者を有する社会福祉施設等の運営の継続など、要配慮者の方々に対する活動が、今般の原子力規制庁による屋内退避の運用に関する検討結果として具体的に示されたところであります。
市といたしましては、さらなる不測の事態が生じた場合も想定し、平時から国や県、関係機関と連携しながら、原子力災害時における対応力の向上を図ってまいりたいと考えております。
近藤
方向性としては承知いたしました。今、普及啓発、知識を持つことが必要ということでしたが、やはり計画があっても、それを実践していくには正しい知識を身につけることが必要かと思います。介護・福祉施設、また病院職員等への放射線防護の知識に対する啓発、さらに進めていただきたいと思います。
柏崎刈羽原子力発電所立地自治体としての使命は、事実に基づき、広い視野のもと、再稼働の必要性を論理的に捉えて発信するとともに、原子力防災を実のあるものにしていくことだと思います。
引き続きの実践をお願いしまして、次の質問に移ります。
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