令和6年12月一般質問3「市民の安心・安全につながる事前防災の推進」
令和6年12月定例会議において一般質問を行いました。以下はその内容です。
近藤
最後の質問では、3 市民の安心・安全につながる事前防災の推進 をテーマに、まずは(1)災害関連死を防ぐ取組の強化 について伺います。
石破政権では、災害対応のエキスパートを揃え、政府の災害対応の司令塔となる「防災庁」設立に向けた準備を進める他、災害が起きる前に被害軽減のための対策を講じる「事前防災」を推進する方針を示しています。
事前防災の具体的事例として、ハード面では、砂防ダムや堤防の整備、河川改修、住宅耐震化等があり、ソフト面では、ハザードマップ等によるリスクの徹底的周知、避難体制の整備、タイムラインの策定、平時からの訓練・ワークショップ・防災情報の発信等が挙げられます。
また、国の方針として、能登半島地震等を踏まえ、避難所運営に関する自治体向け指針を本年度内に改定し、国際的なスフィア基準をもとに、トイレ数や被災者1人当たりの専有面積など避難環境を改善させる方向で検討していることも報じられています。
【防災ニッポン】「避難所ガチャ」解消へ国際指標!「スフィア基準」を知っていますか?
こうした動きからは、「災害関連死」を防ぎたい、との意思が感じられます。
災害関連死とは、災害発災後に健康を害し命を失うことであり、避難中の車内での疲労による心疾患、避難所生活での肺炎や栄養障害及び持病の悪化、疲労が原因と思われる交通事故、地震や余震のショックによる急性心筋梗塞などの事例が報告されています。
能登半島地震では、災害関連死として認定された方が247人となり、直接死の人数を超えたことが12/6のNHKニュースで報じられていました。
中越沖地震等を経験した柏崎市においては、事前防災対策は進んでおり、今般の大雨・土砂災害に備えた早期の避難所開設などにも、その一端を見ることができます。
しかしながら、頻発する災害から市民の命と健康を守るため、災害関連死を防ぐための備えを厚くすることが重要だと考えます。
そこで質問します。頻発する災害や国の方針を鑑み、災害関連死を防ぐ観点から、フェーズフリーの概念や専門家の知見を入れた避難所の資機材・備品の再検討、被災後の健康維持のための防災教育や体制整備の強化、他の自治体や民間団体等との更なる連携といった取組を進めていくことについて、見解を伺います。
危機管理監事務取扱
今ほどご紹介いただきましたように、災害関連死の方が直接死よりも、能登半島地震においても増えており、昨年5月に報告されている内閣府の災害関連死事例集によれば、避難生活の肉体的・精神的負担、被災のショック等によるものも含めて、52.7%ということで、災害関連死をどのように防いでいくのか、ということが防災において極めて重要な課題と認識しております。
柏崎市においても、ご指摘にもありましたように、中越沖地震以降、種々の災害に見舞われている中で、心して対応してきたつもりです。備蓄品の選定におきましては、本市の栄養士の意見を反映し、低たんぱくフードやアレルギー対応ミルク等の備蓄はしております。
また、避難所開設時には、保健師等による巡回訪問を行って、被災者の心と体のケアを行う体制を構築しており、これはもうどこの自治体でも当たり前にやらなければいけないことになっていると認識しております。
また、民間との連携においては、本年2月定例会議で近藤議員からご質問いただきました畳の活用という点については、以前から協定はあったものの、あらためて新潟県とも対応について、どのくらいの枚数が市内ですぐに用立てできるのか、といったことも確認しております。
先般の11月29日の石破首相の所信表明でも言及されているように、年度内に国から示されるというスフィア基準についても考えていきたいと思います。
私どもとして重要視するのは、スフィア基準の数値に関しては柏崎市では概ね満たしつつあると考えておりますが、本来的な意味として、避難所における人間としての尊厳を持って生活が送れるように、いわゆる質的向上において、小さなところからやっていく必要があるということです。
特別な予算をかけるとか、民間のコンサルタントを入れる前に、防災担当職員の気付き、例えば毎年一定額で予算を認めていただいている備蓄品において、冷たい食料ではなく温かい食事が出せるようなものを取り入れてみるなど、まずは既決の予算の中でどのような工夫ができるのか。例えば、トイレは準備できても、その消臭剤は用意できているのか等、こういった部分は特別に大きな予算を措置しなくても、従来の予算の中で十分に質のアップはできるものと考えております。
常に避難者の方の肉体的・精神的負担を軽減するためにはどうしたらいいのか、市が普段から保有している人的・物的資源を、災害時に特別な予算を増額することなく有意義に活用できるのかということは、常に検討を繰り返してまいりたいと考えております。
近藤
ご答弁の中で避難所における尊厳、そして質の向上というところを伺いました。既に色々とご検討いただいているとのことですが、せっかく命を守ることができたのに、その先に命を健康を害して失うといったことがないように、命をつなぐ方向性で強化していただきたいと思います。
次の質問は、(2)原子力防災対策への更なる理解促進に向けて です。
原子力発電所の再稼働に不安を抱く方々の中には、UPZ住民がまずは屋内退避することに疑問を抱く方や、福島1F事故を連想し、「原発は事故を起こし、住民はふるさとを追われて帰れなくなる」とのイメージを抱いている方々が少なくないと感じます。
このような疑問や不安を払拭するような理解促進に向けて、現在行っている柏崎市による啓発事業の効果をはかるため、質問してまいります。
まずは「ア 啓発事業の検証と今後の対応」について伺います。
現在、本市では原子力防災出前講座を実施し、様々な地域や団体に出向くともに、小・中学校においても原子力防災対策について説明していますが、時間は各地域や学校の判断によって異なり、わずか10~15分しか時間を割かないケースもあると承知しています。
原子力災害時の行動は、1度の講座や説明で理解できるものではないため、短時間の開催で、断片的な情報により不安が印象に残り、誤解を招くこともあるのではないかと危惧するところです。
また、柏崎市防災ガイドブック<原子力災害編>では「指示があるまで避難先で避難継続」と記載されているものの、避難指示の解除(帰宅可能)時期については明記されていません。
新規制基準に適合した原子力発電所においては、福島1Fのような事故を起こさないための安全対策が講じられ、仮に避難指示が出されるとしても、フィルタベント設備によって放出される放射線量はかなり抑えられます。
そして、放射線濃度が低減すれば、避難指示が解除され、帰宅できるようになります。それがいつなのかは言えないとは思いますが、こうしたことも、防災教育や啓発の機会に含めるよう工夫や配慮をしていただきたいと感じるところです。
そこで質問ですが、令和6年度上半期の原子力防災啓発の取組の検証及び市民の理解促進・不安払拭に向けた今後の対応について、見解を伺います。
危機管理監事務取扱
誤解なきよう一点申し上げますが、議員からもご理解いただいております通り、15分で全ての出前講座を終わらせているわけではございません。要請のあった学校や団体のスケジュールに合わせてやっているということで、1時間でも2時間でも必要であれば対応させていただきますので、そういった点についてはご理解いただきたいと思います。
昨年から実態に即した内容に変えようということで、それに対して必ず統一したアンケートを講座開催後に取っております。
令和6(2024)年11月末までに実施した原子力防災講座・研修の実施状況としては、小・中学校、各種団体、企業、消防団、市職員等に対して、83回・4273人の方に対して実施しているわけですが、アンケート結果における理解度については、「大変よくわかった」が18%、「大体わかった」が68%ということで、足しますと86%ということです。もちろんこれをもって十分に理解していただいていると解釈するわけにはいかないわけですが、それなりに効果は上がってきていると思います。
また、自由回答の部分で、「実際に訓練に参加してみたい」、「定期的に講座を受講してみたい」といった理解促進につながるようなご感想をいただいており、今後どのようなことを講座としてお聴きになりたいかについては、「安定ヨウ素剤の服用」、まだご指摘にあった「避難のタイミング」、こういったことをもっと知りたいと列挙される方が多くなっております。
色々な意味で原子力災害についてご不安を抱えている市民の方が、多くいらっしゃることは間違いのない事実でございます。講座に1回だけ受講して終わりではなく、繰り返し学び、自分事として捉えることは重要だと思います。ただそうは言っても毎月1回必ず参加してくれ、というのは難しいものがございます。講座を今後どのように体系化していくのかというのは、今後も課題として検討してまいりたいと思います。
また、現在は発電所の新規制基準において、それに基づきどのようなタイミングで避難をし、避難所における生活を続け、どのようなタイミングでそれが解除されるのかというのは、ご承知のように現在、原子力規制委員会をはじめ、国で能登の地震を受けて、具体的な運用に関してマニュアルを作っており、年度内にまとまるものと考えております。
こういった国から出された種々のガイドラインについて、あらためて確認した上で、実際に自分事として捉えられるようにしたいと思います。いつも言っているように、市民の皆さんに「特定重大施設対処施設」といった説明をしてもピンとこないわけでして、こういった点も含めてご不安の軽減につながるような研修の仕方を今後も工夫したいと思います。
近藤
検証の結果、8割以上が理解し、前向きにとらえていることには安心しました。引き続き、お願いします。
次に、「イ 普及・啓発に向けた人材育成」について伺います。
柏崎市では平時からの防災啓発や防災訓練、地域活動に積極的に携わり、地域の防災力向上のために尽力できる人材として、防災士を養成してきました。
しかし、防災士の養成カリキュラムには原子力防災は含まれていないことから、防災士のスキルアップ研修等において、原子力防災についての理解を深める機会を設けてはどうかと思います。
また、防災士の中には、自分の得意分野を生かして、あるいは関心のあることを極めて、更に活動の幅を広げたいという方々もいらっしゃいます。
一例を挙げれば、子ども達への防災教育にもっと関わりたいという防災士が、中越沖地震メモリアルまちからが行う学校での防災学習をお手伝いする「防災学習サポーター」養成講座を受講するケースもあります。
そのため、当初は、原子力防災出前講座のサポーターを市が養成し、認定したらどうかとも考えましたが、現実的にはそぐわないようです。
しかしながら、原子力災害時の対応について詳しく理解し、普及・啓発に努める人材を育てていくことが、誤解や不安を払拭し、原子力発電所があるまちで市民が安心して暮らしていくことにつながるのではないかと考えます。
そこで質問ですが、防災士へのスキルアップ研修や、学びを深める環境の整備等、原子力防災の正しい知識・行動を普及・啓発できる人材を育成する取組について、見解を伺います。
危機管理監事務取扱
防災士の資格につきましては、議員ご承知のように、あくまでも防災全般の基礎的な知識を習得し、資格として認定されているものです。従いまして、その中には原子力防災が特殊化されたレベルの中で含まれていないのは事実であります。
一方で原子力発電所の立地点である本市を含めて、原子力発電所の立地点においては、原子力防災は重要な分野であります。近年では資格取得後のスキルアップを目的に、毎年行っておりますフォローアップ研修の方で、令和3(2021)年度に原子力災害広域避難計画をテーマとして、実施したところではあります。
昨今は災害が頻発していることもあり、研修テーマが知識習得型の内容から、防災士の知識やスキルを地域に還元するための、より実践的な内容となるよう取り組んできているところでございます。
そういった観点からも、まさに実践的に、柏崎地域ということを考えた場合には、原子力防災の内容が日々変わってきている状況もございますので、防災士の方々の意向も踏まえながら、原子力防災を取り上げることも含めて、より効果的なスキルアップにつながるよう、今後内容を検討してまいりたいと考えております。
更に、防災士の方々につきましては、市主催のイベント、県主催のセミナー等に現在も参加していただいていますが、防災関係の情報をメール等で市からもお伝えし、参加を一層促していきたいと考えております。
原子力防災を含めて、知識の習得の様々な場を提供し、引き続き普及啓発、人材の育成、ご指摘のあった得意分野を生かした活躍をしていただきやすい環境整備に努めたいと考えるところです。
近藤
柏崎の防災士だからこそ、本市特有のある意味で課題でもある原子力災害について詳しくなっていただきたいとの想いもあります。フォローアップでの見直しも考えるとのことですので、そのようにお願いいたします。
最後に(3)ペット同行避難の体制整備に向けて 質問いたします。
今年の10月末、新潟県獣医師会から柏崎市に「ペット同行避難支援キット」が寄付されたことが報じられました。
キットは一般的に、優先開設避難所の開設時(特に初期)に繁忙な担当職員の手を煩わせることなく、ペットを連れて避難してきた人が自ら「ペット専用避難スペース」を設営するための手順書や資材がセットになっています。
キットについては、9月末に実施された柏崎ファミリードッグ主催・柏崎刈羽動物愛護協会・後援のペット防災研修会において、講師に迎えたNPO法人アナイス代表の平井潤子先生から紹介されていました。
同研修には、防災・原子力課の職員さんにもご参加いただきましたが、ペット同行避難の具体的な事例を学んだり、ペット同行避難の受入れを想定した避難所運営の机上訓練を行ったりしており、本市の防災訓練や防災教育等において共有したい内容だったと思うところです。
また、現在は柏崎市の優先開設避難所ではペット同行避難を可能としているものの、3月の一般質問では「ペットを連れて来た場合は軒下に置いてもらう」といった答弁がありました。
ですが、炎天下や極寒、風雪時を想定すれば屋根付きのペットが入れるスペース確保は必要であり、各優先開設避難所で「ペットを入れてよいスペース」を想定しておくことが望ましいと考えます。
そこで質問します。ペット同行避難支援キットの寄付を一つのきっかけとして、本市におけるペット同行避難の体制整備を進めることについて見解を伺います。
危機管理監事務取扱
今ほどご紹介いただいたように、新潟県獣医師会からご寄付いただいたペット同行避難用キットは大変ありがたく考えており、市内のペット愛好家・愛護団体の皆様からご協力いただいたことについて、御礼申し上げます。
市民課のデータでは今年10月末現在、犬だけでも市内に3053頭、全国的な状況では、一般社団法人ペットフード協会の昨年の全国犬猫飼育実態調査によると、飼育頭数推計は犬で6,844,000頭、猫で9,069,000頭、合計で約1591万頭ということで、この数は我が国における15歳未満の子どもの数よりも多い調査結果であり、災害時にペットと同行避難をされる方も多いことは容易に想像できます。
多くの方を受け入れるペット同行避難の体制整備には、必要物品の備え、ペットの避難スペース、同行避難の運営ができる人材育成、飼い主の理解、それぞれが必要となってまいりますが、新潟県獣医師会からご寄付いただいたキットの活用、関係団体からのご助言などをいただきながら、今後、物品の整備や、円滑にペット受入れを行いながらの避難所運営といったものについてのマニュアル作成を、現在少しずつですが検討を進めております。
ペットの避難スペースにつきましては、避難者と隔離され、風雨がしのげる倉庫や自転車小屋をまずは指定させていただいているところでございます。一方でもっと良い環境をというペット愛好家の方々からのお声があることも認識はしております。
このような中で現在の避難所の環境を見ながら、それができる場所・できない場所について、あらためて市の職員の方で環境調査を行ってまいりたいと考えております。
場合によっては、発災直後はご勘弁いただくとしても、落ち着いてきた中で、よりペットにとって、また飼い主にとって良い環境にご移動いただくということも、全ての避難所で雨風しのげて、四方囲まれた環境を作っていくのは中々難しいことですので、そういった手法も含めて、今後の体制ということで、適切な場所の選定・確保も検討に加えてまいりたいということで考えてございます。
ペット同行避難の受付・運営ということに関して、避難所の職員、行政側の対応ももちろんでございますが、飼い主の皆様のご理解も何より重要と考えております。今後、防災訓練を行っていく中で、飼い主の方々へのご理解・ご協力の促進につながるような訓練・研修もやっていく必要があると考えているところでございます。
近藤
前向きなご答弁をありがとうございました。ペット同行避難は、ペットとともに避難しないことにより、飼い主の方が命を落とすことがないように、ということで推奨されている面もあります。それも含めて進めていただきたいと思います。
事前防災については、様々な切り口がございますので、私の方でも調査・研究を進めながら、質問につなげていきたいと思います。
これで私の一般質問は終わりとさせていただきます。ありがとうございました。
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