「原子力災害における実効性ある避難計画の策定実現を求める請願」について
令和6年6月21日の柏崎市議会本会議 最終日に、「請第3号 原子力災害における実効性ある避難計画の策定実現を求める請願 」の採決がありました。
本請願は6月19日、柏崎刈羽原子力発電所に関する調査特別委員会で審査され、賛成多数で否決されています。
令和6(2024)年6月19日 柏崎刈羽原子力発電所に関する調査特別委員会1
令和6(2024)年6月19日 柏崎刈羽原子力発電所に関する調査特別委員会2
令和6(2024)年6月19日 柏崎刈羽原子力発電所に関する調査特別委員会3
令和6(2024)年6月19日 柏崎刈羽原子力発電所に関する調査特別委員会4
本会議では委員長の報告の後、討論となりました。
<討論順>
近藤由香里(柏崎の風)反対
佐藤正典 議員(社会クラブ・柏崎のみらい連合)賛成
相澤宗一 議員(民社友愛)反対
池野里美 議員(無所属)賛成
持田繁義 議員(日本共産党柏崎市議員団)賛成
真貝維義 議員(公明党)反対
近藤の討論内容は以下のものです。
*****
請第3号 「原子力災害における実効性ある避難計画の策定実現を求める請願」 に、会派「柏崎の風」を代表し、反対の立場で討論させていただきます。
原子力災害における避難計画は、災害対策基本法、原子力災害対策特別措置法などの関係法令に基づき、地域防災計画(原子力災害編)の枠組みの中で、策定されています。
市町村の避難計画は、国の原子力災害対策指針を順守し、都道府県の計画にあわせてつくられるものであり、柏崎市が独自にルールを決めたり、勝手に内容を変えたりすることはできないものだと捉えています。
ただし、国や県が主体となって実施している原子力防災訓練の結果等を踏まえて、避難計画は常にブラッシュアップが図られているものと認識します。
これまでにも、関係法令や原子力災害対策指針の改正、国の防災基本計画や県の地域防災計画(原子力災害編)の修正に伴い、本市の避難計画は随時更新・修正されており、柏崎市議会では、その都度報告を受け、関係する予算を審査し、大半の議員が、その予算措置を認めてきました。
こうした背景のもと、今回提出された請願の一文一文を読み解きながら、一昨日6月19日に開催された「柏崎刈羽原子力発電所に関する調査特別委員会」での審査を経て、「本請願には賛成できない」との結論に達しました。これより、その理由を述べさせていただきます。
まず、請願の趣旨では、<原子力災害における柏崎市民の被ばくを防ぎ、健康な生活を維持するため、市民の被ばく線量が平常時の基準を超えないよう考慮するなど実効性ある避難計画を策定することを求める>、としています。
しかしながら、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告として示されている被ばく線量限度が、日本人の実態と乖離していることに加え、被ばくを防ぐのは、第一義的には放射性物質の放出を抑えること、すなわち、原子力発電所の安全対策にあると考えます。
したがって、「市民の被ばく線量が平常時の基準を超えない」ようにすることを、避難計画に求めるのは、筋が違うのではないかと感じるところです。
次に、請願の理由において、「柏崎市の原子力防災計画は市民の安全を保障するにはいくつかの間題があり不十分なもの」とし、
第一に、避難指示が出た時に、激しい渋滞が予想され、市内を脱出できない可能性が大きい。
第二に、複合災害において、地震や土砂崩れで道路が損壊した場合、渋滞はさらに激しいものになり、避難そのものが不可能になる可能性が大きい。
第三に、大雪や地震などとの複合災害において、ほぼすべての市民が屋内退避を指示され、避難可能な状態であってもUPZ 住民は避難指示があるまで屋内待機を強いられる。
としています。
しかしながら、国の新規制基準により運転が認められた原子力発電所においては、自然災害と同時に原子力災害が発生しないよう、多様化・多重化した安全対策を講じています。
柏崎刈羽原子力発電所においても、二度と福島のような事態とならないよう、代替循環冷却設備やフィルタベント設備などを設置しており、仮に放射性物質を大気中に放出するとしても最小限に留め、その時期は、自然災害発生から相当の日数が経過した後となります。
もし、大きな自然災害が起きたらどうなるの?|柏崎刈羽原子力発電所
そのため、自然災害によって道路の損壊や寸断があったとしても、避難指示が出されるまでの間に、道路を復旧する猶予が生まれるものと考えますし、いよいよとなれば、国の支援を得て、海路や空路を使うことも想定されています。
加えて、市長が県知事、刈羽村長とともに国に対して行ってきた避難道路整備の要望が実り、先ほど可決した令和6(2024)年度一般会計補正予算第6号において、避難の円滑化に向けた第一歩となる予算措置がなされたところであります。
また、PAZ区域の住民に避難指示が出されるのは、放射性物質が放出される前の段階であり、放射性物質が放出される頃には、避難先に移動を完了している計画となっています。
一方、UPZ区域の住民には屋内退避指示が出され、放射性物質放出後も、避難や一時移転指示を受けた地域以外は、屋内退避を継続することが求められます。
しかしながら、UPZ区域住民が、指示に従わず、放射性物質の放出前に自主避難してしまえば、渋滞が発生し、PAZ区域住民が安全圏に脱出できなくなります。
つまり、どんなに素晴らしい避難計画であっても、住民の理解と協力がなければ、絵にかいた餅になってしまいます。
まずは、市民ひとりひとりが防災ガイドブック<原子力災害編>を読み込み、自分が住む場所や職場はPAZなのかUPZなのか、原子力災害が発生したらどのように行動すればいいのか確認し、市からの指示に従って落ち着いて行動することが、避難計画の実効性を高めるのではないでしょうか。
尚、第四の問題として避難時のスクリーニングの簡略化が挙げられましたが、参考人として特別委員会に出席された危機管理監 事務取扱 より、スクリーニング方法の改正は、放射性物質の拡散を防ぐための措置であるとの見解を伺い、避難の迅速・円滑化に向けた対応であると理解した次第です。
更には、請願の終盤で「不完全」としている、要支援者の避難、放射線防護施設、移動用のバスの確保、学校等での子どもの引き渡しなどについても、毎年の原子力防災訓練を通して検証し、実現性を考慮しながら、計画の更新時に反映されているものと承知しているところです。
以上のように、原子力災害における本市の避難計画は、現状においても市民の安全と生命を守るという柏崎市の最大の責務を実現する観点から、国、県と連動して、より良いものを目指して改善を重ねていることに鑑み、本請願には賛同できないと判断いたしました。
最後に、避難計画の実効性を高めるのは、私たち市民ひとりひとりの意識と行動であり、避難計画も含めて原子力防災に対する正しい知識を自ら身に着け、いたずらに不安を煽ることなく、普及・啓発に努めていきたいと申し添え、反対の討論と致します。 以上です。
*****
採決の結果、賛成5人、反対16人(議長は裁決に加わらない)で不採択となりました。
請願のタイトルは誰もが望む「実効性ある避難計画」ですが、討論で述べた通り、賛同できる内容ではなかったことから反対しました。
市民の皆様の不安を払拭し、誤解のない知識・情報を伝えていけるよう、私自身が精進したいと思います。
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