12月15日の総務常任委員協議会の中で、新ごみ処理場建設・運営事業の実施方針について、柏崎市市民生活部環境課から説明を受けました。
背景として、現在のごみ処理施設は平成4年に完成し、焼却炉80トン×2基を稼働してきましたが、施設・設備の老朽化に加え、人口減少に伴うごみの減少によって、非効率な状態となっていることから、新ごみ処理施設が建設されることになりました。
2020年には柏崎市一般廃棄物中間処理施設整備基本計画 を策定し、当初の財政計画では建設費・維持費20年間あわせて185億8千万円~234億3千万円とされていました。(90ページ前後参照)
しかし、エネルギー価格や物価・資材高騰により、財政計画は見直されています。
以下は協議会での内容です。(写真は現在のクリーンセンターです)
1 実施方針の概要
・実施方針は、新ごみ処理場の設計・建設・運営のほか、募集・選定に関する市の考えをまとめたもの
・民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に準じ、事業者の参入促進、準備期間確保、事業内容の改善を目的に、要求水準書(案)とともに令和 6(2024)年 1 月に公表予定
・さらにパブリックコメントと近隣町内への事業説明・意見聴取を行い、事業者や市民の意見を反映した事業仕様(要求水準書)を決定し、次年度の事業者選定への準備を整える
(1)一般事項
・現施設の敷地内に令和 11(2029)年度の稼働を目指し、新ごみ処理場を建設
・一般廃棄物中間処理施設整備基本計画における施設整備方針及び各種要件を実現
・現施設の稼働に与える影響を最小限に、仮設施設の整備及びし尿処理場の解体工事等を実施
◆新ごみ処理場の整備コンセプト
①循環型社会を推進する施設 ごみの適正処理と排熱や焼却灰を有効活用
②市民が身近で安全・安心を感じられる施設 市民の利便性と災害時の機能維持を両立
③高効率なエネルギー回収を可能とする施設 エネルギー地産地消を実現するベース電源
④ふるさとの環境を守る施設 循環型社会推進や環境問題等を学べる拠点
⑤経済性に優れた施設 効率的規模や設備配置を活かす高効率運営
(2)施設概要等
◆エネルギー回収型 廃棄物処理施設
〇処理対象物
・燃やすごみ、可燃残渣 ・ボランティア清掃ごみ ・剪定枝及び庭の草 ・災害廃棄物
*現施設と同等の処理対象物を基本
*発電により循環型社会への貢献が可能となるため、外部処理している庭木等を追加
〇炉形式 ストーカ式焼却炉
*灰再資源化に優れ最終処分量減少
〇施設規模 80t/24h(40t×2 炉)
*将来のごみ量推計から必要規模算出
*現施設から規模半減し効率化
〇エネルギー回収
・蒸気タービン発電 ・場内熱利用設備
*焼却の排熱を発電などで有効活用
*余剰電力は電力小売により地産地消
◆マテリアル リサイクル 施設
〇処理対象物 ・不燃ごみ ・粗大ごみ
〇施設規模 6.7t/5h
*現施設と同等の処理対象物
*中間処理施設整備基本計画から増強
*ごみ多様化を見据えた処理能力確保
◆関連施設
・計量棟・管理棟・洗車棟・会議室・見学通路・ 駐車場・構内道路・構内サインなど
*施設見学・環境学習の拠点
*発電を活かした避難所機能
*個人搬入の受け入れ
・事業方式 DBO 方式により、施設の設計・建設及び 20 年間の運営業務を行う
・契約形態 基本契約、建設工事請負契約、運営業務委託契約にて構成
◆設計・建設に係る補助金・交付金収入と余剰電力販売収入(20 年間)シミュレーション
〇循環型社会形成推進交付金
交付率:概ね 1/3 FIT・FIP 併用可
対象:ごみ処理施設・マテリアルリサイクル施設
〇二酸化炭素排出抑制対策事業費補助金
補助率:主設備 1/2 FIT・FIP 併用不可
対象:ごみ処理施設
◆余剰電力の活用方法
・有利な国補助金活用のため、FIT・FIP ではなく市内供給の電力小売事業者と相対契約とする
・電力卸市場への売電が市に著しく有利になる可能性を考慮し、市場動向を確認して決定する
(3)事業の対象となる事業範囲
◆柏崎市
〇設計・建設に関する業務
交付金・補助金申請、設計・建設モニタリング等
〇運営に関する業務
ごみの搬入、焼却灰や処理困難物の運搬・再資源化・処分、市 ごみ処理政策に係る対応、運営モニタリング等
◆事業者
〇設計に関する業務
施設設計及び事前調査、交付金・補助金申請支援、許認可申請等
〇建設に関する業務
施設建設、仮設施設の設計・建設・解体、し尿処理場等の解体、 許認可申請、近隣への安全配慮等
〇運営に関する業務
年間運転・発電等計画作成など運転管理業務、計画的修繕等 の維持管理業務、測定管理業務、防災等管理業務、運営関連 業務、情報管理業務、近隣への安全配慮等
・市に帰属する事業収入⇒ごみ処理手数料、有価物の売却収入、余剰電力の売却収入
・事業者に帰属する収入⇒市が支払う運営業務委託料
(4)事業の募集及び選定に関する事項
・事業者選定方式 :公募型プロポーザル方式
<選定スケジュール>
◆事業者募集前
・実施方針の公表 令和6(2024)年1月
・パブリックコメント・地元町内会説明 令和6(2024)年1月
・債務負担行為設定 令和6(2024)年2月
◆事業者選定及び契約
・募集公告及び募集要項等公表 令和6(2024)年4月
・最優秀提案者の決定 令和6(2024)年12月
・基本協定締結 令和7(2025)年1月
・仮契約・議会審議・本契約締結 令和7(2025)年 3月
◆事業期間
・本施設の設計・建設 契約締結~令和11(2029)年3月
・本施設の運営(20年間)令和11(2029)年4月~
(5)主な参加資格要件
・プラントの設計・建設業務を行う者を代表とする複数企業によるグループで構成すること
・設計・建設業務及び運営業務の実施に当たっては、本市の住民を対象とした雇用に配慮し、本市に本店がある企業を積極的に活用すること
・応募者のうち、下表の各業務を行う主たる1者は、当該業務の主な要件を満たすこと
◆プラント 設計・建設
・過去10年間に稼働した一般廃棄物処理施設で、ボイラ・タービン式発電設備を設置し、80t/日以上かつストーカ式の受注実績を有すること
・建設業法に基づく許可(清掃施設)を受け、総合評定値が1,300点以上
◆建築物
〇設計
・ボイラ・タービン式発電設備を設置した一般廃棄物処理施設の建築物の設計を一括して実施した実績を有すること
〇建設
・建設業法に基づく許可(建築一式)を受け、総合評定値が1,300点以上
・ボイラ・タービン式発電設備を設置した一般廃棄物処理施設の建築物の施工を一括して実施した実績を有すること
・新潟県内に本店があること(構成企業のうち1者は、市内本店)
〇解体
・アスベストを含有する建築物の解体工事を元請として受注し、実施した実績を有すること
・本市に本店があること
◆運営・維持管理
・過去10年間に稼働した一般廃棄物処理施設で、ボイラ・タービン式発電設備を設置し、80t/日以上かつストーカ式の運転管理業務の実績を有すること
2 見込まれる事業費と財源措置について
・昨今の物価高騰や建設費高騰を受け、新ごみ処理場に係る費用を検証した結果、設計・建設・管理に要する費用は160億円~200億円程度、運営に要する費用は20年の総額で130億円~160億円程度の見込み
・プラント事業者に対するヒアリング調査、専門家による回答内容精査、近年の他自治体における予定価格設定状況検証等により事業の適正金額を把握
・令和2(2020)年3月の一般廃棄物中間処理施設整備基本計画における見込み金額に対し、1.5倍から2.0倍程度の事業費を要するが、現施設の状況を踏まえ、計画どおり整備を進める考え
・設計・建設費用には、国交付金や補助金適用を最大化し、起債を最大限活用することを優先に、最も有利な財源構成を措置する方針
・運営事業は、現施設と同様に一般財源で措置する方針
・事業者の参入及び競争を促す予算計上に向け、令和6(2024)年2月定例会議に債務負担行為を上程予定
<質疑応答>
Q1 地元町内会はどこまでか。
A1 橋場、山本、松波(環境アセスメントの説明範囲)
Q2 現在のごみ処理場が建設される際、春日地域など収集車が通る区域にも説明した。説明範囲を広げてはどうか。
A2 現時点では3町内だが、建設にあたっては丁寧に説明していく。環境アセスメント上では交通障害はクリアしている。まずは地元3町内に説明後、コミュニティセンター等を通して広く知らせたい。
Q3 そもそもなぜあの場所につくるのか。他の場所に移転することは検討しなかったのか。
A3 現在の場所ありきではなく、ごみ収集運搬と人口密集地との効率を考え、現在の松波が適地と判断した。
Q4 新ごみ処理場の排熱発電の事業リスクは。
A4 発電する側としては市場電力価格の上下が販売リスクと関係する。施設の自家消費で電力を使い、余剰電力を売電する中で、シビアな売電状況であったとしても、発電コストはペイしていけると判断している。
Q5 建設・維持費用の増嵩が予測されるが、ごみ袋の金額や手数料を上げる考えは。
A5 ごみの排出抑制が主目的であり、直ちに見直さなければならないものではない。物価高騰もあり、近隣市町村と足並みを揃えて慎重に検討していく。
Q6 建設費・運営費が当初案より高くなるが、刈羽村との交渉状況は。
A6 現在も協議中であり、信頼関係を持って丁寧に行っているが、スケジュール感を持って話を詰めていきたい。刈羽村のごみは今後も受入れするが、負担金の協議が決着しなければ建設できないわけではないと考えている。
Q7 新ごみ処理場の運営費を20年間で160億円とすると、年間に8億円かかる見込みだが、現在のごみ処理場と比較するとどうなるのか。
A7 現在の運営費は平成4年以降、経常的には毎年4億2千万円ほどかかっており、20年間分に置き換えると84億円になる。この他に修繕費用が21億円ほどかかり、合わせて105億円になる。新ごみ処理場の運営費としては物価高騰を見込んだ額を示している。
Q8 事業費の市負担分はどうなるのか。起債には交付税措置もあるのか。
A8 200億円を想定した場合、補助金58億円、起債120億円、一般財源22億円となる。
補助対象事業の起債には交付金によるバック率50%、対象外事業30%が期待できることから、これを最大限充てていきたい。
Q9 起債の償還年数は。また一般財源はどこから出すのか。
A9 起債償還年数は20年。一般財源は全体を見ながら検討する。
Q10 関連施設として環境教育機能や防災機能を追加しているが、補助金交付の要件なのか。また避難所の収容人数は。
A10 関連施設は補助金交付要件ではないが、熱回収が必須であり、いちばん効率的なやり方が発電になる。この発電を生かすには、ごみ焼却中は停電しない利点を生かして、会議室やフリースペースを施設内に設置することで、災害時の避難所としても使うことができる。
加えてこれまで継続してきた環境教育(小学4年生は必ず訪問)の一環として、多くの他のごみ処理施設で見学対応や社会勉強への活用に力を入れていることから、本市においても必要な機能として判断した。収容人数は事業者提案も影響するが、現時点では100人クラスを想定している。
Q11 発電の部分は施設内で循環させているのが主目的であり、余剰電力の売却益は大きな目的としていないということか。
A11 そういうことになる。国の補助金は熱回収が条件であり、可燃による排熱を回収し利活用する目的で発電を行う。発電であれば施設内外での使用を踏まえ、将来的にもメリットがあり、余剰電力の大きさによってどれだけ地域に還元できるかも決まっていく。
最大限、国の補助金を活用する中で、建設費を抑えるには従来の交付金ではなく、今回活用を見込む熱回収を要件とする補助金を使うにあたり、発電が妥当と判断した。地域で出たごみを活用し、発電を通して地域に還元していきたい。
Q12 同じくDBO方式でプロポーザル公募していた旧庁舎跡地利活用事業では、要求水準書の上限価格では必要とされる事業を実施できないとして応募していた事業者が辞退し、プロポーザル中止となった。先が見通せない状況で長い年月の委託を担うDBO方式は事業者にとってリスクが高いのではないかとの指摘もある。実施方針において維持費を130億~160億円としたのは、物価・エネルギー価格が増嵩してもDBO方式でやりたいという意向もあるのか。
A12 金額幅は廃棄物処理施設の積算方法が特殊であり、プラント建設にあたって様々な事業例や最新の事業費を参考にしているため、建設方法によって金額幅が出ている。物価・資材高騰を受け、金額はギリギリまで検討していきたい。(DBO方式のためというわけではない)
Q13 新ごみ処理場の建設ラッシュにより補助金が減額され、市の負担が増えることを危惧しているが、いわゆるデッドラインを想定しているか。
A13 国の調査では令和2年度末に30年以上経過したごみ処理場は全体の1//4であり、建設ピークを想定して延命や改修も検討した。その一方で循環型社会形成推進交付金 はこれまでにない規模となることも公表されている。今回、国の交付金を使う条件として循環型社会のための地域計画を策定し、承認されることが必要であり、柏崎市は既に策定・承認済みなので確実に交付金を得ることができる。また、二酸化炭素排出抑制対策事業費補助金も特別会計なのでベーシックな補助金よりも余裕がある。こうした情報を最大限注視し、市の財政を圧迫しないよう努めたい。
Q14 人口減少によるごみ削減、ごみの変質により熱回収が難しくなる可能性はないか。
A14 ごみ処理場の規模設定は難しい。令和5年度段階で95トン/日であり、令和11年度以降に80トン/日のごみ処理量になるのかわからないが、場合によっては2炉を1炉にすることもあり得る。
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今回の実施方針で示された費用は、建設費・運営費あわせて280億~360億円となりました。
国の交付金や補助金を活用したとしても、非常に大きな額ですが、現在のごみ処理場は老朽化が進み、新ごみ処理施設は絶対に建設しなければなりません。
今後も進捗を注視していきたいと思います。
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