【令和5年6月一般質問1】「脱炭素のまち柏崎」のエネルギーミックス推進
令和5年6月8日、2期目最初の一般質問を行いました。以下はその内容です。
おはようございます。柏崎の風 近藤由香里です。
今期も率直に質問してまいりますので、宜しくお願い致します。
まずは
1「脱炭素のまち柏崎」のエネルギーミックス推進
(1)「原発への賛否」を超える理解促進
について伺います。
柏崎市は原子力発電所立地自治体として、国のエネルギー政策を担いながらも、長年、原発への賛否で世論が二分されてきました。
ですが、今回の市議会議員選挙をはじめ、この数年間に行われた各選挙においては、原発への賛否はあまり争点にならず、原発容認・推進の意思を示す候補が当選する傾向が続いています。
その背景には、原子力発電所が本市の基幹産業として、市民の雇用や暮らしを支えてきた歴史、脱炭素に向かう時代の潮流があり、昨今では電気料金・物価高騰によるダメージを受け、世界情勢に影響を受けないエネルギーの必要性を、多くの方々が実感していることもあると考えます。
先月、国会では「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が成立しました。
こちらは2月に閣議決定された「GX基本方針」の法的な枠組みとして、5本の関連法の改正をひとつに束ね、脱炭素電源として、再生可能エネルギーと共に、原子力発電所を中長期的に活用する方針が明確になっています。
特に原子力発電所については、2011年の福島での事故後、「原則40年、最長60年」として定めた運転期間の枠組みは維持しつつも、経済産業大臣の判断で、安全審査や裁判所の命令による停止期間を除外し、安全を大前提に60年を超える運転を認めるものであります。
このことは原子力政策の転換として報じられていますが、もともと国のエネルギー基本計画では、様々な発電手段を組み合わせて、電力を安定的に供給するエネルギーミックスにより火力発電の比率を下げ、原子力や再生可能エネルギーの比率を上げることを目指しています。
この度の法整備は2019年度の原子力の電源比率3.2%、これを2030年度の目標20~22%に近付けるための具体的な方針が示されたとも言えるでしょう。
ウクライナ・ロシア情勢が長期化し、社会経済活動に必要なエネルギーを妥当な価格で安定的に確保・供給するエネルギー安全保障が脅かされる今、エネルギーミックスの一環として原子力を位置付け、賛否を超えて安全な活用を目指す時期に来ているのではないでしょうか。
柏崎は原子力発電所の立地地域であり、再生可能エネルギーの普及促進、水素エネルギーの実用化や、二酸化炭素の分離・回収・有効活用に向けた研究が行われる、脱炭素エネルギーミックス先進地としてのポテンシャルが高い地域です。
今後は原発への賛否を超えて、電力の安定供給に協力・貢献する意識を市民全体で共有することが、「エネルギーのまち柏崎」としての価値を高めるのではないかと思います。
また、原子力発電所の再稼働の条件となる地元同意の「地元」は新潟県全体であることから、県および県内各自治体に対する本市の働きかけ、電力の安定供給をともに目指す意識を広げていくことが重要だと考えます。
そこで質問です。
エネルギー安全保障の危機に直面する現状を、原発への賛否を超える転換期と捉え、技術・意識の両面からエネルギーミックス先進地を目指す考えがあるか。
また、一般市民および子ども達~学校教育現場におけるエネルギーミックスに関する啓発・教育の現状と今後の取組について。
そして、新潟県および県内の他の自治体に対し、今後どのように働きかけていくか 伺います。
市長
おはようございます。今期もまた近藤議員と率直に意見交換させていただけることをありがたく思います。
さて、質問は脱炭素のまち柏崎のエネルギーミックスの推進です。近藤議員にも議場の皆さんにも何度も申し上げてきたように、私自身はまさにエネルギーミックス、今この時点における原子力発電所の重要性、再稼働の意義を認め、かつそこに留まらず、柏崎は原子力、そしてまた再生可能エネルギーをも、両方とも大切なものとして、産業構造を組み立てていくと就任以来ずっと申し上げてきたところです。この考えは微塵も変わるものではございません。
そして、近藤議員が最後の方で「先進地」と話されたように、柏崎市は原子力発電所の再稼働の意義と、再生可能エネルギーをも引っ張っていく、全国のトップリーダーでありたいという願いのもと、いま施策を進めているとご理解いただければありがたいところです。
全国的な電気料金・物価高騰の影響は、本市においても例外ではなく、エネルギー安全保障の確保は喫緊の課題であります。エネルギーミックスは、火力、原子力、太陽光など、それぞれの発電方法の長所と短所から最善の組み合わせを見出し、安定供給、経済性、環境、安全を達成することを目指すものであります。
エネルギーミックスの視点で本市の状況を見ますと、(株)INPEXの水素実証フィールドを活用した発電が、明後年2025年から始まると承知しています。また(株)リケンが進める水素エンジンの実証など、次世代エネルギーの調達や、産業界への波及効果などを目指します。
更に柏崎あい・あーるエナジー(株)が進める太陽光発電からの電力調達や、大型蓄電池の運用、将来的には海底直流送電の揚陸や、柏崎刈羽原子力発電所からの電力融通などの構想があり、本市がエネルギーミックスを推進することで、全国的な電力の安定供給に貢献できるポテンシャル、大きなポテンシャルが柏崎にはあると考えております。
エネルギーミックスの考えは、まさに本市が取り組んでいる脱炭素政策の推進であり、脱炭素電力を調達し、市内に優先的に電力融通する柏崎あい・あーるエナジー(株)が強みとなることで、関連産業の誘致や創出にもつながり、市内外への脱炭素政策の周知にもつながると考えます。
次に学校教育に関しましては、小学校5年生の社会科では化石燃料を含んだ天然燃料のほとんどを海外に頼っている(輸入している)ことを学び、中学校の社会科では、安全で持続可能な再生可能エネルギーを基盤とした社会の実現や、電力政策のあり方について学びを深めていると承知しています。
最後に新潟県および他の自治体に対する今後の働きかけについてお答えします。原子力発電は国のエネルギー政策の一環として進められております。GX実現に向けた基本方針を定め、エネルギーの安定供給、脱炭素化に向けた再生可能エネルギーの活用などの取り組みを進めております。GXは文字通りgreen transformation であり、原発のGではないわけです。
従いまして原子力政策を含むエネルギー政策の理解促進は、国が進めるべきものであり、県や県内各市町村に対し、原子力発電所立地自治体として、特別に働きかけを行うことは考えておりません。
私も就任以来、色々な自治体の長から、柏崎ばかりいいなあ、と言われるわけです、つまりお金の面で。というわけで私は色々な自治体の長に事実関係をお話ししております。例えば原子力発電所が立地することによる交付金は、柏崎のみならず、他の自治体にも及んでいること、また新潟県税である核燃料税は年間約47億円であり、このうちの2割、正式には16%が柏崎ですが、それ以外の8割、つまり40億円弱のお金は、柏崎・刈羽以外の県内28市町村に使われているという事実を、残念ながら他の市町村長さん達にはご存知ない方もいらっしゃる。
つまり新潟県が核燃料税を受けていて、柏崎以外の自治体、皆さんの自治体にも使われているんですよ、というインフォメーションがまだ足りないと考えており、それに対しても数値的に、他の自治体にもこういう風に使われているんですよ、と示すことを実施していただけるよう求めているところであります。
近藤
一点だけ確認させていただきます。エネルギーミックスに関する啓発について、学校教育についてはお答えいただきましたが、一般市民に対する啓発は、あえて特別なことはせず、産業を通して理解していただくということなのか、あるいは新たな取り組み、例えば電気料金高騰の原因に対する理解促進も必要かと思いますが、そういったことも含めて、一般の方々への働きかけについて、お考えがあるようでしたらお願いします。
市長
ご指摘の通りでございます。ただエネルギー政策、今の時代における原子力発電所の有効性といったもの、大切なものであると同時にリスクもあるということを説明するのは、国であります。私も自分の選挙、近藤議員もご自分の選挙で、色々なところでお話ししているわけですが、基本的には国が、一般市民、国民に対して、今の時代における原子力発電所の意義といったものをわかりやすく伝えるよう、国にも要望してまいりたいと思います。
近藤
それでは国との連携を含めて啓発を進めていただきたいと思います。次の質問に移ります。
(2)時代に即した柏崎市地域エネルギービジョン
平成30(2018)年3月、「柏崎市地域エネルギービジョン」が策定されてから、5年が経過しました。
これまで柏崎市が石油産業のまち、原子力産業のまちとして歩んできた歴史を踏まえ、豊かで持続可能な脱炭素のまちを10年後の将来像とし、その実現に向けた方向性を示したものであり、本市のエネルギー政策の指針であるとも認識しています。
そして、この5年間、「脱炭素のまち柏崎」を目指して、地域エネルギー会社設立をはじめ、施策の実現をはかってきたことは承知しています。
しかしながら、エネルギービジョン策定当時の予測と異なる社会・世界情勢の中で、実現可能なこと、あるいは困難なことが見えてきたものと推察しますし、時代とともに、注力・優先する施策も変わってきているのではないでしょうか。
脱炭素社会である「エネルギーのまち3.0」を、本市の将来像とすることに変わりはないにせよ、その実現に向けたロードマップや数値目標の見直し、また海底送電線の陸揚げなど、新たな取組を追加することは、必要ではないかと考えます。
特に地域エネルギー会社である柏崎あい・あーるエナジー(株)が将来構想として掲げる「脱炭素エネルギーの拠点化」は、ビジョンの原文「市外にエネルギーを供給する地産外消エネルギーによる豊かなまち」から、大きく広がっていると感じます。
そこで質問です。
柏崎市地域エネルギービジョンの進捗管理をどのように行っているのか。
また、実情に合わせて見直し・変更する考えはあるのか。
そして、海底送電線の柏崎での陸揚げ構想を含む「脱炭素エネルギーの拠点化」実現の見通しについて伺います。
市長
柏崎市地域エネルギービジョンは地域としての魅力向上を考え、エネルギーのまちとして歩んできた歴史を地域の特性と考え、脱炭素エネルギーの供給や利活用を軸に、環境・経済両面から持続可能な地域社会をつくろうという方向性を示したものであります。ビジョン策定時から世界的にエネルギー情勢は変化しており、国内でもGX実現に向けた基本方針や広域連携系統のマスタープランを策定するなど、目まぐるしく情勢が変化していることは承知しています。
近藤議員からは、現状を捉えて見直しが必要ではないかとのご指摘ですが、変化に応じるために細かい軌道修正は必要かと思いますが、本市が目指す「脱炭素のまち柏崎3.0」」という将来像が変わるわけではございません。まずはエネルギーの地産地消を推進することで、産業競争力を強化し、市民の暮らしやすさを向上させていく考えです。
たしかに世界情勢は変わっていますが、私たちが5年前に策定した地域エネルギービジョンは、かなり先を見たものであったと思っています。ところが今、現実が私どもに追いついてきたような感覚です。ですからまったく時代観に外れているものではなく、今まさにピッタリと合っている感覚でございます。
ビジョンの進捗管理につきましては、目指す方向性を示したものでありますので、詳細な進捗を把握するものではありませんけれども、当初からビジョンが示す先に向かって、着実に歩みを進めており、その大きな一歩が地域エネルギー会社、柏崎あい・あーるエナジー(株)の設立であります。
柏崎あい・あーるエナジー(株)は、地域にとって有益な脱炭素電力のHUB役を担う会社として設立しました。エネルギー安全保障が危機的な状況においても、市内外から様々な電力を調達し、系統線を介して広域に安定した電力を供給することや、大型蓄電池の運用によって、将来的には他地域への電力融通や、系統全体への安定化に寄与することで、脱炭素社会の実現に貢献するものと自信を持っております。
また海底直流送電の揚陸による関東圏への送配電プラットホームとしての役割を、柏崎あい・あーるエナジー(株)が担うことで、国のエネルギー政策にも貢献し、揚陸した脱炭素エネルギーの一部を、市内にも融通することができるならば、地域の脱炭素電力の普及を促進し、柏崎のものづくり産業に大きな付加価値をつけるものと期待するところであり、それを目指しております。
尚、今年3月に示された国の広域系統連係マスタープランでは、いまだに海底直流送電の揚陸地についての明記はありませんが、引き続き市にとって大きなメリットとなり得るよう、各所に働きかけを行っているところであります。
近藤
2点確認させていただきます。まず、ビジョンが大きく目指すところは変わらないとわかったのですけれど、策定から10年後となる2028年度以降はどうされるのか、これが1点目です。
もう1点は、もし海底直流送電の柏崎での陸揚げが実現した場合、その事業主体や費用負担がどのようになるか、今の段階で情報もしくは構想があるようでしたらお願い致します。
市長
まず2028年度以降は、正直に申し上げて検討はまだ進めておりません。ですが2番目の質問にも関係しますが、国の方では海底直流送電を北海道・青森・秋田、新潟県内では村上沖、胎内沖に洋上風力電力を、国の計画では2030年までに200万kwhというものが、今年3月に出されております。
そうしますと今ほど近藤議員からご指摘ありましたように、2028年というのは2030年の2年前でありますので、たしかにご指摘のように、その前後になりましたら、国の大きな動きの中で、地域エネルギービジョンを見直す部分も出てくるかもしれません。
2点目の陸揚げの部分に関しましては、私どもが聞いている限りにおいては、今年12月末までに揚陸地点が定まるのではないかとの情報でございます。ただその事業主体に関しましては、送電そのものの事業主体と、私どもが目指している揚陸地点での変電機器、変電所の事業主体は、いまだ確定はしておりません。
もしそこに変電施設、揚陸施設等に柏崎市もしくは柏崎あい・あーるエナジー(株)が関与することで、柏崎、特に産業界に大きなアドバンテージを得られると考え、今頑張っているところでございます。
近藤
それでは今後の計画においても大きな存在
(3)柏崎あい・あーるエナジー(株)の事業展望 について伺います。
柏崎あい・あーるエナジー(株)は、鯨波地域と北条地域に設置したオフサイト型太陽光発電を使用して電力供給を行う予定ですが、事業開始の延期が続いています。
当初は昨年の秋頃としていたのが、電力市場価格の高騰を受け、令和5年4月1日~に延期され、次いで系統接続の追加工事により再度の延期となり、5月1日~と報じられたものの、現時点でも事業開始には至っていません。
本工事の契約では、工事期間が令和5年3月15日になっていたことから、担当課に確認したところ、3月中に2度の変更契約が行われ、工事期間は6/30に延長されていました。となると、事業開始はいつになるのでしょうか。
また、電気料金についても、従前よりも安価に設定する方針が示されているものの、柏崎地域に電力供給を行う東北電力(株)を含む大手電力7社の電気料金値上げ幅が確定し、今月以降は家庭向け電気料金が約25%上がる見込みです。
こうした状況下で、柏崎あい・あーるエナジー(株)が予定通り安価な電力を供給しようとすれば、市財政が補填しなければならないのではないか、柏崎あい・あーるエナジー(株)は将来的に独立採算を見込めるのだろうかと、危惧しています。
もうひとつ危惧するのは、柏崎あい・あーるエナジー(株)の社内体制です。
この2月に系統接続負担金として2,264万円の追加補正が発生しましたが、総務分科会ではその要因として、系統線上にある設備の逆潮流対策の負担が求められることを、当初予算段階で予測できなかったとの答弁があり、委員からは見通しの甘さ、専門的な知見の弱さを指摘する声が相次ぎました。
また、6/5の本会議では、5月に柏崎あい・あーるエナジー(株)が実施した、安政町緊急資材置場でのオフサイト型太陽光発電設備整備工事の公募型プロポーザルで、施工場所の地番を間違えて記載していたとの答弁もありました。
現在、柏崎あい・あーるエナジー(株)の住所は柏崎市役所内にありますが、事務委託先は東京都千代田区のパシフィックパワー(株) 柏崎あい・あーるエナジー担当となっています。これから事業を進めていくにあたり、現体制に問題はないのでしょうか。
そして、芋川の旧ぶどう村の太陽光発電用地開発要件調査委託業務の公募型プロポーザルも告知されていますが、特別高圧への系統接続には約10億円かかり、国の補助対象にはならないことや、建物・構造物の除去費用は市の負担となることが、委員会等で問題視されてきました。今後、市有地を活用した再生可能エネルギーによる発電事業を進める上で、土地整備や系統接続における課題に、どのように対応されるのでしょうか。
このように色々と申し上げるのも、柏崎あい・あーるエナジー(株)を心配するからです。国の補助金は国民の税金ですから、それを使って事業を進める以上は、国策における責任を果たし、本市にとっても有益な、市民に信頼される地域エネルギー会社に育つことを願っています。
そのためにも、まずは最初の事業となる37か所の公共施設に対する電力供給を軌道に乗せることが先決であり、今後の事業展開に向けて体制整備、役割分担、リスク管理等をしっかりと行うことが必要ではないか、との観点から、質問します。
今年度の柏崎あい・あーるエナジー(株)による発電事業の見通し、
安価な電力供給と独立採算性の両立に対する見解、
今後の社内体制と事業拡大に伴う課題とその対応策について お聞かせください。
市長
柏崎あい・あーるエナジー(株)発電事業の今年度の見通しは、令和5(2023)年度から国の補助制度において、市と共同申請を行うことで、第三セクターが所有する設備についても直接補助金が受けられるよう法改正されました。これにより、今後は柏崎あい・あーるエナジー(株)が設備を設置・所有し、これらの設備設置に対して、未利用地の有効活用に向けた貸付を行っていく考えであります。
令和5(2023)年度事業を具体的に申し上げますと、市においては長年活用されてこなかった、旧ぶどう村跡地を太陽光発電所として利活用するため、雨水処理対策などの整備要件や、系統連系を含む事業可能性調査を実施し、今後の方策を決定してまいります。
実行部隊である柏崎あい・あーるエナジー(株)においては、国の補助金を活用して、安政町に太陽光発電を、自然環境浄化センターの未利用スペースに大型蓄電池を設置して、この電源をもとに市内電力事業者への電力販売を開始するものと承知しております。
また今年5/1からは市の公共施設37か所において、柏崎あい・あーるエナジー(株)からの電力供給を既に受けており、昨年度から市が整備を進めている西長鳥発電所893kwと鯨波発電所648kwの太陽光発電所は、系統連系を経て近日中に運転開始の目途が立った状況と承知しています。
次に安価な電力供給と独立採算制に対する見解は、世界的な燃料高騰の影響により、電気料金は大手電力会社でも軒並み上昇し、事実上の変動料金の様相となっており、柏崎あい・あーるエナジー(株)においても安価な電力を供給するためには、変電施設のコスト削減に努めなければなりません。太陽光発電や蓄電池の整備につきましては、国の補助金を活用させていただきながら、市は遊休市有地の可能性調査を、柏崎あい・あーるエナジー(株)は発電施設の整備を進めてまいります。
また運用面においては、系統線を利用するには30分同時同量の計画策定や託送料金が必要になりますし、計画の予測精度を高めるためには、需要規模を大きくして、個々の需要量変動の影響を小さくする「ならし効果」が有効なため、株主であり実務を担うパシフィックパワー(株)の持つバランシンググループに加入して、インバランスリスクを抑えることと承知しております。
最後に今後の社内体制・事業拡大に伴う課題とその対応策についてであります。柏崎あい・あーるエナジー(株)の運営につきましては、全国で16社の自治体出資型地域エネルギー会社の
運営を行っているパシフィックパワー(株)に当面の間、運営を委託し、経営の安定を図ってまいります。
事業を拡大するために、電源を国の補助金を活用して整備することにより、市場調達比率を下げていく必要があります。国からの財源を確保することに努め、令和9(2027)年度までに8.500kw=8.5mwの太陽光発電および31.500kw=31.5mwの大型蓄電池整備の事業計画について、株主の同意を得ながら進めていくものと承知しております。
尚、この大型蓄電池は再エネ特有の出力変動に対応する系統用で、長寿命かつ安定性が高いとされる、住友電気工業(株)のレドックスフロー電池を設置していく予定と承知しています。
加えて(株)INPEXが平井地内で展開しようとしている水素発電の電力や、市の新ごみ処理場のごみ発電による電力を活用し、市内事業者にも安定的に供給できる再エネ電源を設置することとしております。
このように市は政策推進を行い、柏崎あい・あーるエナジー(株)が事業実務と事業に必要な備えを整備していく役割であることは、何度もお伝えしてきた通りであります。それぞれが役割を担い、脱炭素社会を目指す市のエネルギー政策を推進してまいります。
近藤
2点確認です。1点目は37か所の市内公共施設には既に電力供給を受けているのか、すでに準備が整って開始時期がいつからだとハッキリと言える状況ということでしょうか。2点目は社内体制を変えずに行くということでしょうか。
市長
今ほど申し上げた通り、すでに電力供給を受けております。社内体制は現状のままです。
近藤
では5/1から事業開始しているということで承知しました。次に今の答弁にもあった
(4)新ごみ処理場における焼却熱利用の方向性 を伺います。
令和5(2023)年度施政方針において、市長は新ごみ処理場を、「循環型社会のシンボルとなる高効率なエネルギー回収を可能とする施設とするため、実施方針及び要求水準等の機能要件を整理し、整備に向けて作業を進める」としています。
令和2(2020)年3月に策定した「柏崎市一般廃棄物中間処理施設整備基本計画」では、新ごみ処理場で発生する焼却熱を蒸気エネルギーとして回収し、熱利用および発電する方針が示されています。
また、新ごみ処理場で回収可能なエネルギーのうち、ごみ処理場内の熱利用以外は全て発電するものと仮定し、処理場内で必要な電力を除いた量をエネルギー供給可能料とした場合、年間の余剰電力は月に約368万kwh、約1200世帯分に相当するとしています。
新ごみ処理場で発電された電力は、柏崎あい・あーるエナジー株式会社が活用する方向で検討していることが示されています。
その一方で、ごみ処理場と利用施設の距離が遠ければ熱効率が落ちることや、人口減少に伴うごみ減量により熱量も低下する、といった課題もあると考えます。
また、他の自治体では、焼却熱発電による電力・CO2を施設園芸や植物工場に利用するケースも見受けられます。
もしそういった使い方をするのであれば、新ごみ処理場を刈羽村も利用することを踏まえ、焼却熱の活用に伴う共同事業等を検討してもよいのではないかと考えます。
そこで質問します。
本市の新ごみ処理場の焼却熱利活用に対する検討状況、
具体的な方向性、
刈羽村と共同事業等の可能性について 伺います。
市長
新ごみ処理場における焼却熱利用の方向性についてお答え申し上げます。ごみ処理場建設におきましては、国は効率の高いエネルギー回収、災害等に対する強靭化、地域への付加価値などを求めており、建設費を支援する交付金や補助金においても、ごみ焼却による排熱を有効に活用することが要件とされています。
このため、新ごみ処理場の建設にあたりましては、焼却熱を活用する機能を検討した結果、発電を行うことと致しました。ごみ焼却時に発生する熱で水蒸気をつくり、発電タービンをまわす火力発電と同じ仕組みですので、安定した電力供給が期待できるものであります。
熱の活用方法としては、ボイラーを有する施設へ高温の水蒸気を循環・供給する方法や、比較的低温のお湯として循環・供給する活用など、多様な方法がございます。しかしながら、このような熱を「熱」として活用する場合は、温度低下の問題があるため、近隣で活用する必要があります。本市のクリーンセンター周辺には高温の水蒸気を受けられるような施設はないこと、電気としての活用は利用度が広く、安定的であると考えられることから、ごみ処理場として一般的な発電により、焼却熱を有効に活用することとするものであります。
尚、低温のお湯の活用は、クリーンセンター近隣のエリアにおいて将来的な可能性はあると思いますが、ご提案がありました刈羽村との共同事業については現時点では想定しておりません。
近藤
現時点での検討状況を確認させていただきました。最終的にどうなるのか、今後も注視していきたいと思います。
最後の質問は昨年12月に続き、
(5)脱炭素先行地域選定に向けた今後の取組 です。
環境省は2030年度までに、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする取り組みを進める地域を「脱炭素先行地域」として、全国で少なくとも100か所選定し、優先的に予算を配分する取り組みを進めています。
本市は国の脱炭素先行地域選定を目指して、官民連携で全庁的に取り組むとし、昨年12月の一般質問においては、水素利活用の先行的普及促進について、(株)INPEX、(株)リケンとともに推進したいと考え、脱炭素先行地域の選定を念頭に、既に両社と事業構想の方向性に関する協議をしている・・と答弁されています。
今年4月末に公表された第3回脱炭素先行地域の選定結果によれば、現時点で全国32都道府県83市町村の62提案が採択されていますが、第3回から提案の実現可能性を高めるため、民間事業者等との共同提案が必須となっています。
また、地域特性に応じた地方創生やまちづくりにも資する多様な脱炭素化モデルを創出するため、
①関係省庁と連携した施策間連携
②複数の地方公共団体が連携した地域間連携
③地域版GX(グリーントランスフォーメーション)に貢献する取組
④民生部門電力以外の温室効果ガス削減に貢献する取組を「重点選定モデル」としました。
第3回選定では青森県佐井村「海ごみ×漁業振興×脱炭素」、高知県黒潮町の「津波避難対策×脱炭素」等が選定されています。
第4回公募は8月頃に実施予定であり、年2回程度、2025年度まで募集実施されますが、次第にハードルが高くなっていると感じます。
本市が引き続き「水素利活用の選考的普及促進」を掲げて挑戦するのであれば、(株)INPEX、(株)リケンの取組を市内製造業等に波及させるロードマップ策定や、自動車・環境エネルギー産業等新分野展開支援補助金等、既存施策の効果を検証することも必要ではないかと考えます。
そこで質問します。「脱炭素先行地域」第3回選定結果を受け、挑戦に向けた本市における進捗と今後の取組について伺います。
市長
市では水素エネルギーの先行的普及促進について、(株)INPEX、(株)リケンとともに、脱炭素先行地域選定を受けて進めていくよう、検討を進めておりますが、申請期限が迫る脱炭素先行地域の選定を受けることは困難、との判断に至りました。
限られたエリアとはいえ、民生部門のゼロカーボン達成という脱炭素先行地域の要件に合致させることにより、水素の利活用方法でもっとも現実的なモビリティの分野に注力すべきとの考えに至ったものであります。
このような背景から、市は今年度も引き続き(株)INPEX、(株)リケンとともに、水素の先行的普及促進の検討に取り組んでいるところです。
具体的には専門的知見を持つ委託事業者とともに、令和4(2022)年4月に策定したゼロカーボンシティ推進方針を具体化し、脱炭素社会への行動計画や指針を定めていく事業において、水素モビリティの推進を位置付けていきたいと考えております。
水素モビリティは運輸部門の脱炭素化に向けた有力な選択肢でありますし、電気自動車より航続距離面で有利な点は、雪国においては絶大な安心感であるとも考えております。
当然ながら水素の供給インフラも必要となりますし、水素モビリティの普及に向けた課題は少なくはありません。しかし水素事業を行う両者をはじめとして事業者の参入があれば、環境と経済の好循環を実現する地域社会づくりにつながるものと考えております。
既に(株)INPEXと(株)リケンによる意見交換や協議が進められているところでございます。市は両者と意見をすり合わせ、地域産業への波及と地域の脱炭素化を擁立することを念頭に、先行的普及への道筋を立ててまいります。
近藤
では、国の脱炭素先行地域への選定にはこだわらず、柏崎の水素産業を進めているという理解でよろしかったでしょうか。
市長
その通りでございます。ある意味で国の枠組みよりも大きな、(株)INPEX様、(株)リケン様という力強いプレイヤーを得て、そしてそのプレイヤーが連携することで、今までより以上に脱炭素先行地域的な事業が進められるものと期待するところでございます。
近藤
承知しました。ではこの水素産業の流れが市内中小企業にも波及していくよう、進めていただきたいと思います。そしてその上で「脱炭素のまち柏崎」を目指していただきたいと思います。
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★補足
市内37か所の公共施設に対しては、今年5/1から柏崎あい・あーるエナジー(株)による電力供給を、電力市場からの電力調達により行っているとのことです。尚、2か所のオフサイト型太陽光発電設備を使っての発電は、近日中に実施の見通し・ただし時期未定だそうです。
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