1月17日、防災士チーム柏崎の勉強会に出席しました。
もと消防長で現在はチーム柏崎副会長の近藤尚文様から以下のご講演をいただきました。
「雪害から命を守るために」
1 雪害とは
(1)多量な雪によって生ずる災害
①交通障害とそれによる経済活動の阻害
②生鮮食料品などの生活物資の流通が阻まれることによる生活上の支障など
③雪下ろしによる労働過重や出費、転落死
④家屋や公共建物の倒壊(損害)
雪の荷重
・新雪 0.03~0.15g/㎤
・こしまり雪 0.15~0.25g/㎤
・しまり雪 0.2~0.5 g/㎤
・こしもざらめ雪 0.2~0.4g/㎤
・しもざらめ雪 0.25~0.4 g/㎤
・ざらめ雪 0.3~0.5g/㎤
柏崎市内の積雪
・12/18 積雪ほとんどなし
↓
12/19~22にかけて一機に降ったため、除雪が間に合わなかった
同じ柏崎市内でも地域によって降り方が違った
2 被害状況(主に柏崎地域)
①積雪害
道路・線路が埋もれる(路面の凍結→スリップ事故)
道路・鉄道線路などの交通機関の混乱
ア 関越自動車道閉鎖、北陸自動車道閉鎖
イ 信越本線、越後線運休
②雪圧害:屋根や木に積もった重みで損壊・倒木
ア 家屋、カーポートの倒壊・破損
イ 倒木による道路封鎖
★救急車が通れずスノーボートで搬送する事例もあった
③着雪害
送電線に雪が付着し、送電線の切断や鉄塔倒壊による大規模停電
④雪崩
表層雪崩:速度100~200㎞/h 厳冬期1~2月に多く発生
全層雪崩:速度40~50㎞/h 雪解け期3~5月に多く発生
★人の歩く速度は5㎞/h程度
新潟県は災害救助法を適用
災害救助法(国の責任で救助を行うことを趣旨とした法律)
災害救助法は1946年に起きた南海地震をきっかけに、翌1947年に施行。
国の責任において被災した国民を救助する趣旨でできている。
食事の提供、避難所や仮設住宅の提供は災害救助法に基づいて行われる。
★決定するのは都道府県・市町村単位
災害救助法の適用を決定するのは都道府県。ただし、管轄内の市町村から被害情報の報告があり、災害救助法の適用申請が行われて初めて適用となる。
【ポイント】
適用までの流れが以下のようになる
・市町村単位で被害状況を取りまとめる
・都道府県に被害状況を報告する
・災害救助法の適用申請を市町村が行う
・都道府県が災害救助法の適用を決定
・内閣府に情報提供を行う
★災害救助法が適用されない場合
災害救援などにかかった費用は全て市町村が賄う。
甚大な災害の場合、避難所運営だけで相当な予算が必要となるので、市町村の財政を圧迫しかねない。
【ポイント】
・災害救助法が適用されないと市町村が困る
・全ての支出を市町村が賄うことになる
・予算が不足するので全ての住民を助けることができなくなる
・財政を圧迫して正常な住民サービスができなくなる
★災害救助法が適用された場合
被災した市町村に対して、都道府県や国庫から支援金が出る。
【ポイント】
・避難所の設置にかかる費用 1人=330円以内 7日間以内
・炊き出しスタッフの雇い上げ
・被災者用の弁当の購入
・エアコン、扇風機などのレンタル費用
・応急仮設住宅の供与など
★日常生活が困難な場合は日常必需品も支給される
住宅が全半壊、全半焼、流出、床上浸水によって生活に必要なモノが無くなり、日常生活に支障をきたす場合は次のモノを給与または貸与。
・洋服、作業着、下着、毛布、布団、タオル等
・石けん、歯みがき、トイレットペーパーなど
・炊飯器、鍋、包丁、ガスコンロ、茶碗、皿等
・マッチ、ライター等
かかる費用は1人世帯で最高は夏:18,800円。冬:31,200円。4人世帯だと夏:42,800円、冬:65,700円を限度に支給される。
その他、障害物等の除去費、埋葬費、学用品の給与もある。
12月21日 今冬の雪害状況(新潟県発表)
・死者数累計3人、重傷者累計12人、軽傷者累計12人 合計27人
(新潟市3人、長岡市17人、三条市1人、柏崎市3人、小千谷市1人、五泉市1人、阿賀町1人)
・住宅被害1件(阿賀町)
・死亡したのは柏崎市の20代女性。12/20、自宅前の雪で埋まった車内で意識がなくなっているところを発見された。車内で暖をとっているうちにマフラーが雪で埋もれ、車内に排気ガスが充満し、一酸化炭素CO中毒だと推測される。
・除雪中に亡くなった事例もある。
・亡くなった方、怪我をされた方の半分以上が65歳以上の高齢者
★停電
東北電力ネットワーク(株)新潟支社によると、18日から新潟県内にて延べ6万400戸の停電が発生し、21日10時現在では約1万700戸が停電している。
*21日10時現在の停電地域:佐渡市、新発田市、村上市、関川村、阿賀野市、胎内市、新潟市秋葉区、五泉市、阿賀町、見附市、長岡市、小千谷市、魚沼市、刈羽村、柏崎市、上越市
復旧作業が可能な地域については、懸命に復旧作業を進めている一方で、積雪や倒木の影響により、停電が新たに発生する地域もある。
停電により小型発電機を使用する場合は、運転中の廃棄の中に一酸化炭素が多く含まれ、大変危険なため、屋内で使用しないよう呼び掛けている。
3 対策
大雪で心配なこと
・停電や電話の不通が発生
・積雪により、建物から出られない
・車が使用できない(食料、燃料等の買い出しができない)
・人工透析・投薬など生命にかかわる通院ができない
・コンビニエンスストアなどでは品物の搬入に時間がかかる
・降雪・積雪時に車で出かけた場合、タイヤが雪に埋まり立往生する
・家屋等(カーポート、ビニールハウス)が倒壊・損壊する
(1)車の運転
①携行品
・チェーン、スコップ、搬出用マット、笛など
・防寒具(手袋・帽子含む)、長靴、水、非常食、携帯トイレ、毛布、ホッカイロ
②注意点
・ホワイトアウトで停止する際は、ハザードランプを点灯させる
・雪で車が覆われたら、エンジン停止またはマフラー周囲を除雪(CO中毒防止)
・ドアが開くか確認
・急発進・急ブレーキはしない
・予備燃料の傾向
一酸化炭素COは無色無臭の毒性ガス
・0.02% 2~3時間で前頭で軽度の頭痛
・0.04% 1~2時間で頭痛、悪心、2.5~3時間で失神
・0.06% 45分で頭痛、めまい、悪心、嘔吐、けいれん、2時間で失神
・0.16% 30分で頭痛、めまい、嘔吐、けいれん、2時間で死亡
・0.32% 5~10分で頭痛、めまい、30分で死亡
・0.54% 1~2分で頭痛、めまい、10~15分で死亡
・1.28% 1~3分で死亡
スタックの理由:なぜくぼみができるか
・車の重み、タイヤの温度、タイヤの空転:3回転で7㎝深さになる
〇停車の状態
車の重み+タイヤ温度が路面より高い
20分で4センチ、70分で8センチのくぼみ
〇タイヤ空転の状態
3回まわると7㎝のくぼみ
★タイヤ周りに空間をつくって掘り起こす
〇エコノミークラス症候群(脳血栓塞栓症)を防ぐために
狭い座席で長時間(4時間以上で2倍)同じ姿勢のままでいると血流が悪くなり、血のかたまりができてエコノミークラス症候群の危険性が高まる。以下の点を心掛け、定期的に体を動かす。
・足の指を開いたり閉じたりする
・足首をまわす
・つま先を引き上げ足首の曲げ伸ばしをする
・ふくらはぎや足首をマッサージする
・背伸びや上半身をひねる
・水分を補給する
(2)歩く時の注意
①歩幅を狭くして歩く
②足の裏全体をつけることを意識して歩く
③転んでもすぐに手をつけるよう両手を空けておく(リュック等)
④屋根からの落雪を避けるために、屋根下付近を通らない
(3)除雪中の事故を防ぐ
①屋根からの転落→命綱、ヘルメットの着用
*新築・改築時には自然落下式(出入口に落下しない構造)、融雪屋根
②軒下の除雪中に落雪が直撃
→1人で除雪作業をしない、暖かい日は屋根の雪が緩むので注意
③融雪層、河川への落下→危険個所に目印
④除雪機使用時の巻き込まれ事故
→雪詰まりを除く等の時はエンジン停止(安全装置が働くようにする)
⑤急病(心筋梗塞)の発症→無理をしない、1人で作業しない
⑥携帯電話を持つ
⑦除雪は屋根を優先し、落下によるけがを防ぐ
⑧雪に埋もれたら、呼吸ができるよう口の前に空間を確保
雪下ろし10か条
①作業は2人以上
②建物の周りに雪を残して雪下ろし
③晴れの日は要注意(屋根の雪が緩んでいる)
④梯子の固定を忘れない
⑤低い屋根でも油断禁物
⑥除雪機はエンジンを切ってから雪詰まりを取り除く
⑦作業開始直後と疲れた頃は特に慎重に!
⑧命綱とヘルメット
⑨命綱、除雪機などの用具はこまめに手入れ・点検を!
⑩作業の時は携帯電話を持って行く!
停電への備え忘れず(最低3日分)
〇懐中電灯、ランタン、ヘッドライト、ローソク、マッチ、石油ストーブ、灯油、カイロ、木炭、練炭、練炭コンロ、発電機、カセットコンロ、カセットボンベ
〇ラジオ、携帯電話、携帯電話用充電器(乾電池型、飲料水など)
〇食料品、飲料水など
4 まとめ
①大雪時には、不要不急の外出をしない
②気象情報、道路情報(渋滞情報)などの情報収集をする
③自宅、車、出先でそれぞれ過ごせる備えを徹底(最低3日分)
水、食料、暖房機器(石油ストーブなど)、燃料(ガソリン、灯油)、使い捨てカイロ、予備電池、懐中電灯、ラジオ、処方薬(冬季は少し長期間分をもらうようにする)
④家屋等(カーポート、ビニールハウス)の耐雪化
⑤家族、関係者への連絡手段の確保
⑥スコップ、スノーダンプ、除雪機など除雪用具の備えと点検
⑦ふだんよえい時間に余裕をもって行動する
意見交換
・道路沿いや電柱電線沿いの樹木管理(所有者がいる場合は責任を持って管理する)すべき
・カーブなどシャーベット状になる箇所には融雪剤を設置してはどうか
・雪道の運転技術の周知が必要
・渋滞時には沿線住民の協力(トイレ、仮眠場所貸出、軽食の配布など)が見られた
・運送会社によっては大型車は除雪車を通すために脇に寄せるようルール化しているところもある
・除雪車があってもオペレーターが到着できず除雪に取り掛かるのが遅れた→早目出勤が必要ではないか
・長距離ドライバーには中間情報が入りにくい。通行止めなどの情報は適宜発信してほしい
・テントや携帯トイレなども車中に積んでおくとよい
・市や県、国に要請する前に、まずは地域単位での自助・共助が必要ではないか
ーーーーーーー
先般の大雪被害を教訓として、今後もし同様またはそれ以上の大雪に見舞われた場合に備えて、何をすべきか、細かくご教示いただきました。
柏崎市および地域の防災力を高めるために、学んだことやご意見を活かして活動していきたいと思います。
ありがとうございました。
最近のコメント