柏崎市ろうあ協会との意見交換
「手話言語条例の制定を求める陳情」に対する1月6日の文教厚生常任委員協議会を受け、2月4日に柏崎市ろうあ協会との意見交換会を行いました。
(令和3年12月定例会議に提出された柏崎市ろうあ協会の「手話言語条例の制定を求める陳情」を受けて、文教厚生常任委員会が主体となって調査研究を進めることになり、当事者であるろうあ協会の方々からお話を伺うこととなったのでした。)
夕方6時からのスタートであり、質疑を簡潔に行うため、事前質問と回答を表示しながら、追加・補足の説明・質問を行う形式でした。
ろうあ協会からはN会長、K事務局長、また手話通訳士の方々2名が出席されました。以下はその内容メモです。
N会長
本日はこのような機会をいただきありがとうございます。今日お話しする目的は何か、それは聞こえない人の人間としての根本、権利の侵害、聞こえる世界・社会にあわせなければならない状況があることを、皆さんに知っていただきたいのです。
私たち聞こえない者たちの苦しいこと、たくさんの悩み事をどのくらいご理解いただけているでしょうか。
根幹的なところを理解していただきたいのです。困っていることの現状を、それぞれ点のように解決すればよいわけではないのです。
意思疎通のためには手話以外にも、UDトークという音声から文字情報に変換するアプリや、筆談といった方法もありますが、聞こえない人が来たらそれで対応すればいいわけではありません。中には読み書きが苦手・できない人もいます。だから手話が必要です。
今日は私たちが手話通訳者2名を依頼しました。一般的には私たちろうあ者がどこかに呼ばれる場合、手話通訳者をこちらから依頼して参加します。でも現状は病院等に行きたい時、福祉課に赴いて、毎回要請を頼まなければなりません。通訳者を「聞こえる方々に準備していただく制度」もあるとよいです。
聞こえないために、様々な苦しみや悩みがあります。これまで依頼しても手話通訳が派遣されない、断られることもあり、あきらめることも多々ありました。いま社会で起こっていることが、手話通訳なしで情報が得られないことが多々あります。
聞こえない子が生まれた場合、その子の親は長岡の聾唖学校幼稚部に通わせるために、仕事を辞めたり休んだりしなければならないのが現状です。でも通学には様々な課題があり、通えない子もいます。
聞こえない人、ひとりひとり悩み事は異なります。ろうあ協会が発足してから70年になりますが、これまでいろいろな苦しみあり、我慢しながら歩んできました。
今日この場で手話言語条例の制定をお願いするのは、手話を使う人とろう者が生き生きと働ける社会、聞こえない人があきらめることなく普通に生活できるまちになってほしいからです。
市外から移住してきた人にとっても、手話言語条例やそれに伴う制度があることは、聞こえない人にもやさしいまちのイメージにつながるのではないでしょうか。
長くなって申し訳ありませんでした。
事前質問1
ろうの皆様にとって困りごとがあった場合、命に関わるような心配事があった場合、今まではどのように解決してきましたか。
事前回答1
筆談・身振り・音声変換ツール(UDトークなど)でコミュニケーションをとっていました。
大事な場面では、手話通訳派遣制度を利用していました。しかし、音声変換ツールは誤変換もあり、筆談、身振りでは伝えられることに限界がありました。
また、市内にはろう学校に通えなかった方や日本語身振りでは伝えられることに限界がありました。また、市内にはろう学校に通えなかった方や日本語の文章が苦手なろう者もいるため、文章でのやりとりが難しい状況もあります。
そのため、大事な場面で手話通訳をお願いしていましたが、日常生活の手話ができるレベルの手話奉仕員が派遣されたことがあり、意思疎通がとれず十分に情報保障がされない場面が多々ありました。
そのために、現在では資格をもっている手話通訳者以上に通訳を依頼することが多いです。
補足・追加
◆回答の中に意思疎通がとれず、十分に情報保障できない場面がたくさんあるというが、その場合はどうしているのか。
⇒筆談、UDトークは時間がかかり、相手に時間を切られてしまう。手話通訳も技術的なばらつきがある。
手話通訳士は全国的、手話通訳者は各県、手話奉仕員は市が認めた資格だと言える。(N会長)
◆資格を持つ手話通訳士を依頼するのか。通訳は依頼通り来てくれるのか。
⇒以前はお願いしても手話奉仕員が来る事例が多かった。以前は市に依頼すると手話協会を通して通訳者に依頼していたが、3年前に市の福祉課が直接依頼することになり、手話通訳士以上の人が派遣されるようになった。大事な会議、病院、命にかかわることは手話通訳士が必要。イベント等は手話奉仕員で代替えすることが多い。
手話通訳士は3名 派遣登録されている手話奉仕員は6名だが、手話奉仕員には事前に話したい内容を文面で伝えなければ伝わらない。手話奉仕員ではうまく通じないことがある。(N会長)
事前質問2
ろうの皆様自身の妊娠から出産に至るまでの困りごと(通常の検診や突発的な病院受診についてなども)、子育てをしていての困りごと(集団乳児検診や子どもの病気への対応、学校との連絡なども)はどういうものがありましたか。その困りごとはどのようにして解決してきましたか。
事前回答2
<困りごと>
・緊急事態で学校や病院に連絡したが手話通訳は確保できず、市外も手話通訳は派遣されなかった。 仕方がなく、筆談で対応した。
・緊急の時に福祉課に手話通訳依頼のファックスを送ったが回答が遅く、仕方なく自分でなんとか筆談した。
・婦人科に男性の通訳者が派遣され不快感を感じたが、我慢して通訳を受けた。そのため、通訳を頼むのをやめて、筆談で対応していた。
・手話通訳には頼れず、家族に同行を頼むという時もありました。
・手話通訳依頼すると派遣制度外と言われ自己負担金が発生するため申し込みをせず、筆談で対応した(市の派遣金いただいてから通訳派遣。市から派遣金がない場合は通訳派遣できない。)
今は電話リレーサービスが普及され、学校や病院の予約は直接連絡をとれるようになりました。
しかし、診察や重病な病気の場合や緊急時、災害時などに電話リレーサービスは使えません。
また、スマホを持っていない人は電話リレーサービスが使えないため、高齢の聴覚障がい者やスマホを持っていない人は FAX するか予約のために自分からわざわざ出向くしかありません。
補足・追加
◆困りごとの様々なご苦労をされた結果として、問題は解決したのか。
⇒「仕方ない」とあきらめることが多い。(N会長)
⇒コミュニケーションが大事だが、意思疎通できないままのことがある。例えば交通事故に遭った場合、自分ではメールできない。誰かが連絡をとってくれるとありがたいが、私たちが自力で連絡できないと分かる人がいないのが現状。SOSを示す媒体を前もって用意をしておくしかない。突然の事態が発生しても通訳を頼めるわけではない。頼んでも都合がつかない場合も多い。その場合は筆談でやりとりするしかない。(K事務局長)
◆筆談した場合、意思はどこまで伝わるのか。
⇒筆談での情報提供範囲は決まっているので情報量が少なくなる。短い文章で端的に伝わる情報しかやりとりできない。(N会長)
⇒家族内でも筆談だけなら同じことがいえる。身振りで補足するにしても限界がある。(K事務局長)
事前質問3
長い期間不自由をされ、現在でも不自由を感じている実情を、ろう者の団体の皆様はどのように国や関係機関に支援措置を要望してきたのでしょうか。また、これまで要望等により改善されたことにはどんなことがありますか。
事前回答3
国に対して全日本ろうあ連盟、関係機関及び各県・市町村の聴覚障害者協会は、幾度となく要望を出しています。
実績として、「手話通訳者の公費派遣と養成」「聴覚障碍者の運転免許の取得」「一部政見放送に手話通訳の設置」、「情報保障としてテレビや掲示板に字幕がつく」「手話による教育が受けられる権利(口話教育の廃止)」「医師・薬剤師、バス運転手などの欠格条項の撤廃」などがあります。
柏崎市ろうあ協会としては「手話言語法、手話言語条例の制定」「障害者差別解消法・合理的配慮」「手話通訳派遣制度」「タクシーチケット」などを訴えてきました。
改善されたことにより、タクシーチケットによる補助金ができ、移動しやすくなりました。
また、手話通訳派遣制度の設立により手話通訳派遣がスムーズに使えるようになりました。
追加・補足
◆今回こうして手話言語条例を求める陳情を出された背景には、手話は様々なコミュニケーションツールに勝る意思疎通手段であり、柏崎市に対して求めるのは、スキルの高い手話通訳者を増やしてほしいということになるか。
⇒スキルの高い手話通訳者を増やしてほしい。そして市が開催するイベント等、あらゆる場面に手話通訳者を配置してほしい。聞こえない人たちが、聞こえる人たちと同じように情報が得られ、意思疎通ができる環境を整備してほしいと願っている。(N会長)
事前質問4
ろうの皆様の世代や年齢によっては、困り感や生活におけるニーズ年齢によっては、困り感や生活におけるニーズに、どのような差が生じている現状がありますか。
事前回答4
昔のろう者は義務教育を受けることができずに育った人が多く、文字が書けない・読み取れない・簡単な手話しかできない人がいます。
他に就学した人でも手話による教育が受けられず、発声練習などを中心とした口話教育だったため、十分な教育が受けられず日本語の読み書きが苦手で、学力の差があります。
そのためにろう者の間でもコミュニケーション力に差が生じています。
若いろう者は、一部手話による教育を受けられているので、まだ筆談もでき、スマホを使ってやりとりができます。
追加・補足
◆スマホを使いこなす人は、コミュニケーションの課題を解消できるのか。
⇒スマホやPCの技術が上がっても100%とは言い切れない。文章の読み書きが苦手な若い人達もいる。若い人たちの中にもろう学校に通えなかった人もいる。(N会長)
◆様々なツールあることは確認したが、いちばんは手話通訳か。新しいツールで手話に近いものについての認識は。
⇒スマホで遠隔地から手話通訳する電話リレーサービスもある。(N会長)
⇒人によっては筆談(文字でのコミュニケーション)を拒否する人もいる。「手話が必要なのか」との考え方を持つ人がいるように、「筆談が必要かどうか」との考え方を持つ人もいる。(K事務局長)
事前質問5
ろうの皆様にとって、社会や地域の人たちに理解してほしいこと、一緒に取り組んだりする協働や精神的な触れ合いの在り方についてのお考えをお聞かせください。
事前回答5
ろう者に出会う、訪問される時(病院や家を建てる時の交渉など)に聞こえないことを配慮した上で、筆談ボードやメモ書きを用意したり、手話通訳を手配してくれる環境になってほしいと思います。
また、市内で開催されるイベントにも必ず手話通訳をつけて頂き、市内だけでなく、市外のろう者が参加した時にも自然ときこえる人と触れ合うきっかけがつくれると良いと思います。
学校や公共施設、市役所などで「ろう者と交流してみよう!」や「ろう者はどんな人?」の講演会や体験会を開き、ろう者ときこえる人のつながりをつくるきっかけにもなると思います。
追加・補足
◆柏崎市において、ろう者の皆様に対する市民の理解についてどう感じているか。
⇒理解の定義はまちまちだが、聞こえない人のことをまったくわかっていない人が多い。聞こえない人と会った時に、口でしゃべるだけで筆談もしてくれず、聞こえないことがわかると無視する人もいる。その一方で聞こえないとわかった時に、身振り手振りでなんとか意思疎通をしようとする人もいる。聞こえない人に対する理解を持つ人、持たない人は同じくらい(半々)だと感じる。(N会長)
事前質問6
他の市町村に行った時に、「柏崎市よりも聴覚障がいがある方々への理解・配慮が進んでいる」と感じた経験はありますか。それはどのような時ですか。
事前回答6
・新潟市では、「障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例」というパンフレットがあり、暮らしやすい環境づくりをしているんだなと感じた。
・イベント(講演会、フェスティバルなど)にろう者がいない場合でも手話通訳がいて、いつ、ろう者が参加しても困らないような配慮を感じた。
・市長のあいさつや会見でも手話通訳がついている。
・ハローワークに手話通訳がいる日が月に 2 回あり、行きやすさを感じた。
追加・補足
◆事例はすべて新潟市のことか。
⇒新潟市では手話言語条例ができる前に、「障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例」がまずつくられた。(K事務局長)
⇒新潟市だけではなく、小千谷市、三条市、糸魚川市など、すでに条例制定されているところの事例となる。
小千谷市では条例制定後、手話フェスティバルが開かれている。十日町市では手話コーラスのイベントが開催された。(N会長)
◆手話通訳が市長会見についている事例はどこになるのか。
⇒新潟県知事、新潟市長、三条市長の会見には手話通訳がついている。柏崎市長の会見にも手話通訳がついているとありがたいが、手話言語条例が制定された自治体でも市長会見時に手話通訳がつかない事例が多い。(N会長)
事前質問7
柏崎市内で、手話ができる一般の人(手話通訳士等ではない)と出会ったこと、交流したことはありますか。その場合、意思疎通はスムーズでしたか。
事前回答7
手話サークル、職場、お店、レストランで手話ができる人に出会ったり、交流したことはあります。
ですが、手話レベルにばらつきがあり、意思疎通がスムーズな方とそうでない方がいます。
追加・補足
◆食堂やレストランの注文の仕方はどうしているのか。
⇒身振りで店員を呼び来てもらう。こちらを見てくれない時は立ち上がって大きく手を振る。テーブルに呼び出しベルあれば使うが、壊れていることもある。メニュー表があれば指差しで、壁に貼られていればそこまで行き、指差しをして指示する。目立ってしまうが意思疎通のためには仕方ない。(K事務局長)
全体を通して
◆外見から「聞こえない」とわからないことにも課題があると感じる。聞こえないことを示す印となるバッチ等はあるのか。またSOSを発する行動やサインはあるか。
⇒緊急時のSOSを示すものがないが、Deaf Heart(デフハート)という団体でエコバッグをつくり、聞こえる皆さんがわかるようにしている。そのバックを持っていれば、いざという時にそれを見せて伝えられると思う。(N会長)
⇒SOS手段としてはメールを使うことが多い。困ったら家族や仲間にメールをしている。(K事務局長)
◆2020年に全日本ろうあ連盟が以下の3つを目指すべき課題として掲げている。
1,手話通訳制度の発展
2,ろう者等への情報コミュニケーション保障など法制化に取り組む
3,対面手話通訳と遠隔手話通訳を適切に組み合わせ利用することで諸課題を解決
手話言語条例をつくったことで、市民、一般、市外、行事イベント等の関係者の理解が深まるのは事実だろうが、変化のない自治体もあるようだが、この3項目を踏まえて協議するのが重要なのか。
⇒柏崎市ろうあ協会は全日本ろうあ連盟の下部組織なので、そこに準じる部分はあるが、市町村に応じた内容となる。すべて統一的、画一的にできるわけではない。(N会長)
⇒2の法制化と手話言語条例の制定は別だと考える。手話を獲得する、学ぶためのコミュニケーション保障の法制化は、手話言語条例を制定した後に行うべきことだと思う。そうでなければ混乱してしまう恐れがある。順番からいけば、手話言語条例→コミュニケーション保障法→障害者差別禁止法→合理的配慮への公費使用となるだろうか。段階を踏んでつくるべきであり、その考えからいけばコミュニケーション法の制定は先だと考える。(K事務局長)
ーーーーーーー
今回の意見交換を通して、
●様々なツールが開発されているものの、ろう者の方々にとって、手話は速報性の高い最適なコミュニケーション手段である。
●スキルを持つ手話通訳者が少なく、適時適切な手配や配置ができない現状があり、手話通訳者の質の向上、スキルを持つ手話通訳者の増加をはかる必要がある。
●聴覚障害がある方々の日常や、聞こえない人がどのような困難さに直面しているか、市民の理解促進が必要である。
いうことを確認しました。
また今回はお二人の手話通訳士の方々が交互に通訳をされていましたが、手話のスキルはもちろんのこと、集中力・体力・繊細さを要することが見て取れました。手話通訳士の身分保障や待遇についても課題があるのだと思います。
意見交換を通じて、聞こえない当事者の皆さんが置かれている切実な状況を知りましたが、まだほんの一端に触れたにすぎません。
条例制定を目指す一方で、課題解決のために施策の中でいち早く取り掛かれることを模索していくことも必要だと思います。
帰り際に手話通訳士の方から「ありがとう」を教えていただきました。
「聞こえない世界」への想像力を働かせ、手助けできることを実践していきたいと感じています。
N会長、K事務局長、そして手話通訳士のお二人には貴重を機会をいただきました。ありがとうございました。
尚、日本財団ジャーナルの良記事「聴覚障害者も聴者も、互いに歩み寄る社会を目指して。」 も添付させていただきます。
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