令和3年6月一般質問「3,ヤングケアラー問題と子供・若者支援」
続いて「3.ヤングケアラー問題と子供・若者支援」では、困難さを有する子供達・若者達のSOSをどう察知し、健やかな成長や学びの保障、将来への希望につなげていくか、質問していきます。
ヤングケアラーは、日本ケアラー連盟によれば、大人が担うような家事や家族の世話、介護、感情面のサポートを行う18歳未満の子供とされます。学業や人間関係の構築、健全な発達に支障を来すことが指摘され、新たな社会問題として注目されています。
今年1月に行われた国の調査では、中学2年生の17人に1人(5.7%)、高校2年生24人に1人(4.1%)がヤングケアラーとの結果が示されました。
これを受けて厚生労働省と文部科学省の共同プロジェクトチームが発足し、今後取り組む方針として、早期発見・把握、家族を含む具体的な支援策、社会的認知度の向上が示されています。新潟県でも検討委員会を立ち上げ、実態調査を行うとしており、今後はヤングケアラー支援において、市に求められる役割も増すと予想されます。
そこで「(1)教育現場における認識と対応」について伺います。
ヤングケアラーの実態をもっとも把握しやすいのは、児童・生徒が通う学校だと考えます。しかしヤングケアラーには明確な基準はなく、いわゆる「お手伝い」との線引きが難しい上に、児童・生徒本人に自覚がない・あるいは人に知られたくないケースも想定されます。
平成27年に日本ケアラー連盟が行ったヤングケアラー調査では、南魚沼市の教員を対象に「家族のケアをしていると感じる児童・生徒の詳細」、「教員としてどんなサポートができると思うか、どんな支援が役立つと思うか」を聞くものでした。
その報告書では、ヤングケアラー本人が学校に望むこととして、「自分からは恥ずかしくて言い出せないが、家庭の問題を聞く機会をつくってほしい」「家族の世話で遅刻することや宿題ができない時もあることを理解してほしい」「ヤングケアラーや障がいに関わる問題を授業で取り上げてほしい」といった切実な訴えが示されています。
そこで質問ですが・・・ヤングケアラーが新たな社会問題として注目され、国を挙げて支援に取り組む方針が示されたことを、本市の学校教育現場ではどのように受け止めているか、また今後の実態把握、支援に対する見解をお聞かせください。
教育長
児童・生徒が家庭において家事の手伝い、家族の世話をすることは、家族の一員として大切な営みであり、必要なことであると考えます。一方で過大な負担を負うことで、学校や家庭での生活に支障を来すようになることは、憂慮すべき問題であると、こちらの方も大変重要であると受け止めております。
児童・生徒がヤングケアラーであるかどうかの判断も、非常に難しいのが現状です。
学校では児童・生徒への教育相談や、心のアンケート調査を定期的に実施し、家庭内で問題を抱えていないかという視点で実態把握に努めている状況ですが、各家庭のプライバシーまで踏み込んだ内容は中々把握しきれていないのが現状です。
今後はこれらの相談・調査とともに、気になる児童・生徒にヤングケアラーの可能性がないかという視点で見守ったり、調査の中にヤングケアラーの実態を把握するための項目を設けたりするなど、実態把握の方法を検討する必要があると考えています。
そして把握した実態をもとに行政部局、例えば子育て支援課・福祉課など関係部局を通じて、要保護児童対策地域協議会(要対協)等、関係機関と連携し、児童・生徒のための策を講じたいと考えています。
文部科学省では厚生労働省と連携して、ヤングケアラーに関するリーフレットを中学・高校向けに配布する予定だと聞いています。
市ではこれに先んじて教育研修を進め、児童・生徒は誰もがヤングケアラーあるいはヤングケアラー予備軍であるかもしれないと、常にアンテナを高くし、子ども達、児童の発するSOSを確実にキャッチできるように教職員の力量アップをはかっていきたいと考えております。
近藤
確かに家庭への介入は大変難しいと思います。ただこの質問をする前に元教員の方とお話をして、「今思えば、もしかしたらあの子はヤングケアラーではなかったか、という子はいたが、当時はそういう概念がなかった」とも伺っております。
ですので、ご答弁いただいた要対協も大切な枠組みであることから、次に「(2)ヤングケアラーを支える連携体制」について伺います。
「ヤングケアラー」が新たな社会問題として注目される以前から、家庭環境が原因で、学業や成長に支障を来している児童生徒は存在していたと考えます。
また中には児童虐待の1つであるネグレクト(育児放棄)と表裏一体のヤングケアラーもいるのではないでしょうか。
ヤングケアラーを発見するには、子ども達が発するSOSサインに気付き、本人および家族に対する適切なケアにつなげる仕組み・連携体制が重要だと考えます。
本市においては児童福祉法に基づき設置された、柏崎市要保護児童対策地域協議会(略して要対協)が、法務、教育、保健、医療、福祉分野等の連携により、虐待など困難さを有する要保護児童の発見・保護・支援を担っていると認識しています。
ヤングケアラーが要保護児童に該当するかどうかは整理が必要ですが、すべての子ども達の人権を尊重し、健やかな成長と学びを保障するという意味では、目指すところは同じではないかと考えます。
そこで質問ですが・・・今後、国は市町村による相談支援体制の整備を求めると予想されますが、これまでの実績を鑑み、要対協の枠組みが、ヤングケアラー支援にも展開できるか、あるいは新たな体制整備が必要と考えるか、見解をお聞かせください。
子ども未来部長
国が令和2(2020)年3月に報告したヤングケアラーへの早期対応に関する研究報告書によると、ヤングケアラーに対する支援においては、ヤングケアラーであることを発見することと、子どもの状況や意向に応じた支援の二つをセットで考えていくことが、重要であると言われています。
あわせて学校や福祉・医療サービス、行政機関等の連携・協力が必要と述べています。
本市のヤングケアラーを支える連携体制が、児童虐待防止への支援を行う柏崎市要保護児童対策協議会(要対協)で展開できるか、という点につきましては、児童福祉機関に限らず、学校、警察、民生委員協議会など、多様な関係機関で構成されており、各機関の役割と連携、そして情報共有の必要性について、認識されていることから、今後も要対協による支援が重要であると考えております。
現在、要対協で対応している事例や、関係機関からの情報提供により、ヤングケアラーである状況が確認できた場合は、その子供が担っているケアや介護の状況に応じて、子育て支援課が中心となり、介護高齢課や福祉課、健康推進課、小・中・高等学校などと連携し、改善に向けた支援を実施しております。
具体的な支援といたしましては、児童が祖父の介護を担っていましたが、児童が介護に対応しないよう、ケアマネージャーと連携し、特別養護老人ホームへの入所に至った事例があります。
また母に精神疾患があり、不登校傾向にあった児童については、両親と話し合いを行い、家庭内で児童が担っているケアを軽減するとともに、登校時間帯に登校支援の声掛けを行うことで、登校状況が改善に向かった事例などがございます。
また幼いきょうだいの世話をする子どもの場合は、ファミリーサポートセンター事業の活用や、家事等を支援する育児支援ヘルパー事業の活用も考えられますが、ヤングケアラーの支援は家族の状況やケアを必要とする要因により、多様な対応が求められます。
今後も児童が担っているケアや介護などの負担の改善に結び付くよう、国・県の動向を注視しながら、庁内関係課や関係機関が連携し、ヤングケアラーの解消に向け、支援に取り組んでまいります。
近藤
今ご答弁を伺い、要対協の枠組みの中でかなり対応されているのだなと思いました。
子供達の人権擁護に対する、要対協の果たす役割は本当に大きいと感じます。
後はやはり、子供さんから家族につながる場合もあれば、逆に大人、成人した方だったり、高齢者だったりが市の相談支援につながった場合、そのご家族となるお子さんやお孫さんが、もしかしたらヤングケアラーではないかという可能性も考慮しながら、引き続き適切な支援をお願いしたいと思います。
最後に「(3)困難さを有する若者への支援」について伺います。
ヤングケアラーの年齢は18歳未満とされていますが、18歳以上でもケアラーとしての役割によって、進学や就労、社会生活に支障を来す若い方々はいると思います。
児童福祉法では18歳に達するまでが児童とされますが、では18歳になれば抱えている問題を自力で解決できるかといえば、そういうことはないと思います。
数年前に22歳の女性が祖母の介護を一身に背負い、周囲の理解やサポートが得られない中で仕事と介護の両立に行き詰まり、自ら祖母を殺めてしまう痛ましい事件がありました。
そこまで行かないにしても精神疾患や不登校などの二次障害を発症し、その後の社会生活に適応できず、夢や希望を持てないまま年齢を重ねてしまうケースもあるのではないかと思います。
ヤングケアラーはもちろんですが、困難さを有する若い方々が、適切な支援につながるには、自らアクセスしやすい相談窓口が必要だと思います。ですが柏崎市の相談窓口一覧を見たとき、どこに相談すればよいかわかりにくいと感じます。また相談に行きたくても行けない、相談することを人に知られたくない、というケースもあるのではないでしょうか。
そこで質問ですが・・・困難さを有する若い方々が、自ら相談にアクセスしやすい環境整備・・例えば相談窓口の名称変更や具体的な相談内容の提示、ライン等SNSを通して相談先に誘導する仕組みの構築、相談につながる柔軟なアウトリーチ等に、今後取り組む考えがあるかお聞かせください。
福祉保健部長
柏崎市では何らかの困難さを有する若者への総合相談的な窓口は設けていませんが、HPや広報を通じて、福祉や介護など部署ごとに相談先を案内しているところです。
年齢に関わらず庁内各部署で相談があった場合は、関係課に相談をつなげて支援できる体制をつくっております。また相談者の特性に考慮して、相談を通じてHPでのメール申込や問い合わせを受け付けております。
一例を申し上げますと、引きこもり支援センター「アマ・テラス」では、その名前の由来である「相談者の未来をあまねく照らす、将来を見通せない雨模様を照らす」の通り、引きこもりの相談を幅広く受け付けるとともに、必要な関係機関や部署につなぐようになっております。
どこに相談したらよいかわからない、相談しずらい・複雑な問題を抱えている、他人に家庭の事情を知られたくないなど、様々な状況の中、当事者やその家族が支援機関に相談しないケースもあり、また行政がアウトリーチにより、個人や家庭の問題に積極的に介入することが難しいことから、HPやメールでの相談や問い合わせの他に、庁内各部署や関係機関からの情報提供が重要と考え、支援内容を介護事業所や学校、民生児童委員や町内会などに周知する活動を行い、連携をはかっているところです。
今後もHP等で情報発信に工夫をしながら、相談者に寄り添った支援を検討してまいります。
またLINEを活用した相談窓口、特に若者を対象としたものを設けている自治体が多いことは承知しており、有効な方法の一つだと思いますが、国はプライバシー性の高い相談業務等でのLINE活用にあたっては、個人情報保護に十分な措置を講じることとしており、LINEを含めたSNSでの相談窓口の周知については、慎重な検討が必要と考えております。
近藤
総合窓口はないものの、必ずどこかにつながれば支援につなぐことができるというお話を伺いました。LINEに関しては、直接の相談をするというよりは、LINEを使って適切な相談窓口を紹介するような誘導の仕組みがあるとよいのかな、と思います。
若い方々は、自ら相談にアクセスしずらい、困難さを抱えていることが恥ずかしいと考えている方もいるかと思いますので、「困難さを抱えることは恥ずかしいことではない。相談につながれば絶対に見捨てない。」という、そういうメッセージも必要かと思いますので、情報発信とあわせてお願いしたいと思います。
子供達が健やかに成長し、希望を持って柏崎で暮らして行けるように、引き続き温かい支援をお願いしするとともに、私も一人の大人として応援していきたいと思います。
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