令和3年6月一般質問「4,福島復興を進めるために」
最後の質問は「4,福島復興を進めるために」です。
東日本大震災、そして原子力事故から10年が経ち、途上ながらも着実に復興を進めてきた福島ですが、現在、国民的理解が必要な、大きな課題に直面しています。
そこで「科学的な見地から福島の復興を応援したい」との想いを込めて、まずは
「(1)ALPS処理水・処分方法への理解」について伺います。
今年4月、福島第一原子力発電所ALPS処理水の処分方法として、海洋放出の政府方針が示され、IAEAも支援を表明しました。ですが国内外での反発や風評被害を危惧する声が連日、報じられています。
私たちの会派は昨年12月に福島第一原子力発電所を視察し、発電所で発生する大量の放射性物質を含む汚染水が、ALPSと呼ばれる多核種除去設備によって浄化され、タンクに保管されていることを確認しました。
ALPS処理水は大部分の放射性物質が除去されていますが、トリチウムだけは残ります。
しかしトリチウムは自然界に広く存在し、人体への影響は極めて低いとの研究結果も出ており、世界中の原子力関連施設から、すでにトリチウムを含む水は放出されています。
視察した当時はまだ処分方法が確定していませんでしたが、処理水の処分を進めることは地元の双葉町・富岡町の悲願であるとお聞きし、被災地の切実な思いを痛感しました。
また5/13には会派で柏崎市荒浜に位置する公益財団法人・海洋生物環境研究所を視察し、これまでの海洋調査データ等、各種資料を見せていただきました。原子力施設周辺の海洋環境調査では、これまでにも一定量のトリチウムは検出されてきたものの、海洋生物への影響は発見されていないことを、あらためて確認したところです。
そこで質問ですが・・・福島第一原子力発電所内の処理水タンクは2022年度内に上限に達します。処分できなければ廃炉作業が中断することから、福島復興のためにも処分方法への理解が必要と考えます。
原子力発電所立地自治体である柏崎市として、科学的見地も踏まえ、今回の処分方法決定をどのように捉えているかお聞かせください。
市長
まず結論を申し上げますが、今回の国ならびに東京電力HD(株)等の決定を、私は評価すべきことと考えております。福島原子力発電所のALPS処理水の処分方法につきましては、政府・国から海洋放出という方針が示され、この問題が廃炉作業の安全で着実な進展を進めるものであり、かつ何よりも福島の復興のために必要であるという関係から決定されたことから、私は評価すべきものと考えております。
もちろん、それに反対する方々がいらっしゃることも承知しております。ALPS処理水にはトリチウムという放射性物質が含まれていますが、トリチウムは三重水素であり、普通の水素は軽水素と呼ばれますが、水素が三つくっついたものです。柏崎刈羽原子力発電所をはじめ、韓国も中国も含め、世界中の原子力発電所がこのトリチウムを含むものを放出しているのは事実であり、今始まったことではありません。
ただ一方、漁業関係者など、風評被害を心配する方も多いわけです。こういった風評に対応した取り組みを、やはり国は今まで以上に進めてきたと称しています。科学的根拠に基づくわかりやすい情報の発信、国際機関とも協力をし、モニタリングの拡充・強化など行うという方向性を、もっと情報発信していくべきだと考えております。
柏崎市は同じ原子力発電所立地自治体として、福島の一日も早い復興を心から願っております。国ならびに東京電力HD(株)においては、福島の復興の歩みを止めないよう、ALPS処理水に対する正しい情報の発信や、海洋放出への理解をしていただけるような説明を、繰り返し繰り返し丁寧に進めてきたと、考えております。そして、いたずらに決定したことを先延ばししないということが、私は大切だと考えています。
また一方で、当初予定されていた凍土壁等で、地下水が流れ込むところを止めるという計画が、どれだけ機能しているか私は承知していませんが、凍土壁のみならずコンクリートの遮水壁などを設置して、流入する地下水などを少しでも軽減する措置も含めて、対応されるべきではないかと考えるところです。
近藤
非常に心強いお言葉をいただきました。凍土壁等、地下水流入を防ぐ仕組みは視察に行ったとき、だいぶ進んでおりまして、福島では廃炉作業を一所懸命に安全性に考慮しながら行っているのを見てきました。
現実として風評被害をなくすのは非常に難しいことではありますが、物事の前進や解決のためには、風評被害を判断材料にしてはならないと考えます。
だからこそ公の立場にある私達は、風評被害をなくすための行動・努力を続けなければならないと思います。
最後に、風評被害を乗り越えるための次世代育成の観点から「(2)放射線教育の効果と今後の展開」について質問します。
私が所属する市議会「柏崎刈羽原子力発電所にかかわる調査特別委員会【第二部会】」では、「放射線への正しい理解と対応について」を検討課題の一つとしています。
昨年1/22には柏崎市原子力広報センターを視察し、舟生武司(ふにゅうたけし)先生から、柏崎市内での小中学校での出前授業「放射線を正しくしって正しくこわがろう」を再現していただきました。
授業では身近な事例をもとにしたわかりやすい内容で、子ども達は放射線が日常的に存在し、微量なら人体に影響はないことや、一定量の放射線をきちんとコントロールして医療などに使われていることを学びます。
その一方でコントロールできない大量の放射線は危険が伴うことも知り、最終的には「有益性とリスク」の両面について理解を深めるよう配慮しているそうです。
尚、教え方に差が出ないよう、市内学校での講師は舟生先生に統一しているとも伺い、本市では質の高い放射線教育がされていると感じました。
さて学校での放射線教育は、福島復興のための風評被害払拭を主目的としていることが、国の資料「風評払拭・リスクコミュニケーションに関する文部科学省の主な取組について」の中で、明確に示されています。
そして令和3年度の方針として、放射線副読本に最新の状況を踏まえた時点更新を行うとともに、復興が進む被災地の紹介、教育のICT化に対応したより分かりやすいデジタルコンテンツの活用などを進める、としています。
風評払拭・リスクコミュニケーションに関する 文部科学省の主な取組について
そこで質問ですが・・・・・本市が行ってきた放射線教育は、児童生徒の科学的根拠に基づく思考や行動につながっているか、また国の新たな対応も踏まえ、福島に対する風評の払拭、復興への理解につなげていく考えがあるか、見解をお聞かせください。
教育長
教育委員会主催の放射線教育研究会は、今年度で12年目を迎え、教職員の放射線に関する知識・理解も深まっていると考えています。
放射線教育に関する内容は、小学校では新潟県防災教育プログラム・原子力災害編や、文部科学省の放射線副読本を活用して、防災学習の中で学習しています。中学校では2年生理科・電気の世界の単元の中で、学習をしているところです。
また平成20(2008)年度から、原子力広報センターによる、小中学校放射線教育も行われており、児童生徒は放射線についての理解を一層、深めていると考えるところです。過去5年間で延べ56校、約4000人の児童生徒が授業を受けました。今年度は市内14校が実施を予定しています。
これらの取組は放射線への知識・理解だけに終わることなく、福島に対する風評被害の払拭、復興への理解につながるよう、指導内容等も改善しながらも今後も継続してまいりたいと考えています。
またICT機器の活用につきましては、国のGIGAスクール構想によるひとり1台端末の整備が完了し、教育活動全体においてデジタルコンテンツの活用を進めているところです。
放射線教育においても、文部科学省によるデジタル教材や、市の教育センターが作成した放射線実験に関わるデジタル教材等の活用も、今後とも推進していきたいと考えております。
近藤
本市の放射線教育は多くの子供達の正しい理解を育んできたのだと思います。またICTの活用として、福島復興の今を画像・映像で見ていただくこともあわせてお願いいたします。
福島の復興は、原子力発電への賛否を超えて、国を挙げて応援していくべきことだと思います。私たち柏崎市民も、中越沖地震で被災した際は、多くの方々から助けていただき、復興を果たしたことを忘れずに、被災地を応援していきたいものです。以上で質問は終わります。
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