7月1日は原子力特別委員会第二部会でした。
令和元年度新潟県原子力防災訓練の柏崎市としての実施報告のあと、質疑・意見交換を行いました。
◆訓練の目的
・関係機関との相互連携
・住民参加による理解向上
・現行計画見直しに反映
◆訓練日時
令和元(2019)年
11月8日(金)10:00~15:00
11月9日(土) 8:00~15:30
◆訓練想定
柏崎市、刈羽村等で震度6強の地震が発生し、唯一運転中の柏崎刈羽原子力発電所7号機の原子炉が自動停止。
その後、炉心冷却機能が喪失し全面緊急事態となる。
◆訓練内容
1日目(11/8)
訓練①(AM)柏崎市災害対策本部運営訓練
●施設敷地緊急事態になった場合に備えて作成する「施設敷地緊急事態における防護措置の実施方針(案)=A」をTV会議で確認することを中心に実施。
・発災後~現在の状況までにおいて、市がとるべき行動の確認
・現在の状況説明(途中で24時間スキップ)
・市原子力警戒本部会議の実施(Aの確認)
・TV会議(Aの確認)
訓練②(PM)緊急時通信訓練
●全面緊急事態になった場合を中心に実施
・訓練①~現在の状況までにおいて、市がとるべき行動の確認
・現在の状況説明(スキップ部分も含め)
・市原子力災害対策本部会議の実施
・TV会議(原子力災害合同対策協議会)
2日目(11/9)
●PAZ(即時避難区域)内住民の広域避難訓練(高浜・松波・西中通地区)
●バスによる避難(高浜・松波・西中通地区169名)
9:00放送の防災行政無線等により各地区のバス避難集合場所へ集まり、バス(各地区2台・計6台)により避難経由所を目指した。
避難経由所にて受付、および避難所の案内を受けるところまで訓練を実施。
*避難経由所(今回は近隣の代替施設で実施)
・高浜地区(大湊・宮川)→村上市神林農村環境改善センター
・松波地区→糸魚川ふれあいセンター
・西中通地区→糸魚川市ふれあいセンター
・西中通地区→妙高市体育館
●船舶による避難(高浜地区=大湊、椎谷地区20名)
9:00放送の防災無線等によりバス避難集合場所へ集まり、高浜漁港から海上保安庁および海上自衛隊の船舶で避難を実施。
〔海上保安庁〕
高浜漁港でボートに乗船し、洋上の船艇付近にて収容態勢まで実施。ボートにて高浜漁港へ戻る。
〔海上自衛隊〕
高浜漁港でボートに乗船し、洋上の船艇に収容、柏崎港へ移動し下膳、バスにて椎谷へ戻る。
●安定ヨウ素剤の緊急配布訓練
・PAZ内住民の広域避難訓練と同時に実施。
訓練参加者があバス避難集合に来た際に所持の有無、服用可否を確認し、代替品(あめ玉)と水を配布。
●UPZ(避難準備区域)内住民の屋内退避訓練
・9:00放送の防災行政無線等により、各家庭で屋内退避訓練を実施。
実施にあたり、リーフレット「原子力防災7つの基本」を全戸配布し、屋内退避のポイントを周知。
●広報活動訓練
・防災行政無線→訓練実施予告放送(前日、当日)、訓練開始放送(避難、屋内退避指示)、屋内退避訓練終了放送
・緊急速報メール・エリアメール→訓練開始放送(避難、屋内退避指示)
・その他、市HP、Twitter、Facebookに訓練情報を掲載
*広域避難訓練参加者は事前に該当地区から抜粋。
*避難後のバス内にて市独自の聴き取り調査を実施。
(1)訓練で見えた課題と要望(第二部会での質疑Q&A)
ア 訓練全体に対して
<計画的な訓練の開催について>
【課題】
今回は災害時の基本的な対応について共有。1回の訓練では全て網羅できない。
複数年かけてステップアップしながら計画的に実施し、様々な課題を洗い出し、実効性ある避難計画を策定しなければならない。
【要望】
住民の理解を得られる実効性ある避難実現のため、計画的な訓練実施をお願いしたい。
Q.実行性ある避難計画とは?
A.県・市双方の避難計画を指す。課題を共有し県および柏崎市の計画双方に反映させたい。
Q.計画的な訓練とは?
A.しばらく県による訓練が行われていなかった。年数を空けずに行うことで継続性・連続性を持たせることができる。
Q.訓練は毎年行うべきと考えるが今後の課題は?
A.大規模災害の場合は避難先も被災の可能性がある。避難先自治体との関係性も重要となってくる。
その他意見
・コロナ対策は避けて通れない。課題として含めていただきたい。
・毎年の訓練、人事の問題も大きい。
<訓練想定について>
【課題】
参加者から冬季、夜間、悪天候での訓練を提案する声があった。
実効性ある避難計画策定には、様々な状況、もっと厳しい条件での訓練を実施し、様々な課題を洗い出し、実効性ある避難計画を策定しなければならない。
【要望】
災害時に厳しい条件で避難しなければならない可能性はある。
冬季、夜間、悪天候を含めた想定での訓練を検討していただきたい。
イ 本部運営訓練・緊急時通信訓練
<原子力災害のTV会議について>
【課題】
今回の訓練で実施した2回のTV会議については、内容を把握できた。
市長の回答場面では事前に市災害対策本部の意思決定を市、TV会議の進行に影響しないよう準備をした。
【要望】
原子力災害時に開催される全てのTV会議について、開催順に会議概要および市への確認事項を事前にまとめていただきたい。
【柏崎市の対応】
今回の訓練で、TV会議開催に合わせた事前の市対策本部会議のイメージがつかめた。
原子力災害時に開催されるTV会議を把握し、TV会議に係る市災害対策本部会議の開催タイミングなど、原子力災害時の会議系統を整理する。
Q.テレビ会議までの事前方針決定が速かった理由は?
A.訓練には状況付与型とフライング型訓があるが、今回は県との協議によりしっかりとした対応とれたと考える。職員がどういう動きをしているか確認できた。
Q.方針決定までにどの程度の時間を設定しているか。
A.原子力災害の場合まずは複合災害を想定。震度6以上で発電所の状況把握を行う。震災対応→想定時間は東電も抑えている。情報共有しながら全面避難までの段階へ。一定のタイムラインに沿って情報共有していく。
<オフサイトセンターを含めた訓練について>
【課題】
今回はオフサイトセンターで機能班の訓練(連携訓練)がなく、市として直接かかわることができず、職員の対応能力向上がはかれなかった。
【要望】
次回はオフサイトセンターで機能班の訓練を取り入れていただきたい。
Q.オフサイトセンターに市の職員入っていなかったのか。
A.県職員が担当する訓練だった。今後は市の職員もしっかり対応できるよう、訓練参加できるようにしていきたい。
(補足)別の日に設定された機能訓練には市職員が参加した。
ウ PAZ(即時避難区域)内住民の広域避難訓練
<訓練規模について>
【課題】
参加者から避難所までの訓練、高齢者や障がい者を対象とした訓練要望あり。
今回はGE避難(全面緊急事態)で避難経由所までの訓練として広域避難の一部について実施した。
広域避難全体を考えると、避難所までの訓練やSE避難(施設敷地緊急事態)訓練も実施し、様々な課題を洗い出し、実効性ある避難計画を策定しなければならない。
【要望】
訓練規模を拡張し、避難所を含めた訓練やSE避難を想定した訓練を実施していただきたい。
Q.高齢者、障がい者対象の訓練要望があったが人選は。
A.住民避難の人選は柏崎市が行う。各町内に声掛け。要配慮者の避難行動は次の段階。
(補足)全面緊急事態訓練であり、要配慮者はすでに避難済として設定されていた。
Q.避難先にはどこまで負担をかけられるか。近隣自治体との連携は。
A.避難先マッチングは柏崎市が行っている。妙高、村上、糸魚川等関係市町村決まっている中での対応。数年ぶりの訓練であることから、今回の規模で行った。避難先マッチングは県が主導していくと考えられる。繰り返し行うしかない。
<バスのルートについて>
【課題】
交通状況により想定ルートが通れなかったことにより、一時的に発電所に近づくルートを取らざるを得なかった。
バス避難集合場所においては、一部でイベントがあり、バス通行に苦慮した場所があった。
【柏崎市の対応】
運行ルート見直し、バス避難集合場所やバス停車位置について再度検討する。
<バスの配車について>
【課題】
参加者から災害時にバスが本当に来るのか売案の声が多かった。
災害時のバス手配について明確になっていない部分があり、バス会社が協力してくれるのかなど、住民がバス避難について不安に感じている。
【要望】
バス会社を含めた訓練が必要。バス協会との協定を早期に提携するとともに、バス会社の訓練を定期的に行うためにも、県で一括してバス手配していただきたい。
<船舶での避難について>
【課題】
高浜漁港の水深が浅く小型ボートでの輸送となり、一回の輸送能力が低く、ピストン輸送となれば時間がかかる。
併せて船舶による避難は天候の影響を受ける。大型船が入港できない場合、船舶避難の実効性が乏しい。
【要望】
船舶の最大輸送能力を考えた上で、船舶避難の在り方について再度検討していただきたい。
Q.船舶での避難は天候よくても波が高く住民は心配だと思うが。
A.孤立集落の避難を船舶で行う設定だった。今年8月の船舶訓練は大型船を入れて行うが日程等は調整中。孤立集落についての課題は他にもあるが、船の可能性は有効と考える。
<避難先について>
【課題】
受入市が被災した場合の対応について、受入市自身の災害対応で、柏崎市の広域避難に人員を搬出できるか不安の声があった。
併せて受入市が被災すると広域避難の避難所数も不足することが予測され、スムーズな広域避難が難しくなる。
【要望】
第2の避難先を設定するなど、複合災害を想定した準備を進めていただきたい。
併せて避難経由所の運営について、受入市の人員体制をふまえ、受入市、本市、県、事業者の役割分担も明確にしておく必要がある。
特に県による運営など、運営主体の見直しも視野に入れて検討していただきたい。
Q.受け入れ自治体との連携は大きな課題だが、どのように考えるか。
A.昨年の訓練は避難経由所までだった。初動では柏崎市職員が避難所まで行くことはできないことも課題。
エ 安定ヨウ素剤の緊急配布について
<緊急配布方法について>
【課題】
今回の訓練では口頭での確認による緊急配布を行ったが、参加者が少人数の為、スムーズに配布が行えた。
一方で対応したスタッフから災害時の大人数に対応できるか不安の声があがったことから、緊急配布の体制・配布方法に課題を残した。
【要望】
緊急配布の体制・配布方法について検討が必要。
人数の強化、緊急配布時の問診の仕方を含め、配布方法を早急に決定し、訓練実施につなげていただきたい。
<PAZ内住民の自家用車避難における緊急配布方法について>
【課題】
PAZ内住民について、今回はバス避難集合時に配布する訓練を実施した。
自家用車避難の場合の配布方法など、まだ決まっていない部分がある。
【要望】
配布方法を早急に決め、実際の場所で訓練実施していただきたい。
オ UPZ(避難準備区域)内住民の屋内退避訓練
<UPZ内住民の訓練範囲について>
【課題】
今回の訓練で柏崎市のUPZ内住民は屋内退避訓練の実施にとどまった。
今後は訓練規模を確認し、スクリーニングポイントの通過を含め、避難(一時移転)訓練を実施し様々な課題を洗い出し、実効性ある避難計画を策定しなければならない。
【要望】
スクリーニング会場を早期に選定し、次回の訓練では柏崎市のUPZ内住民が、避難(一時移転)経路上でのスクリーニング訓練ができるようにしていただきたい。
Q.訓練趣旨を理解せず、UPZ内でありながら避難所に来てしまった住民も見受けられた。周知の主体は市か。またどのように周知したか。
A.周知は市が対応。事前にチラシ回覧を行った。原子力防災はJアラート訓練も行っているが、今後の周知の仕方については検討したい。
カ 広報活動訓練
<緊急速報メール・エリアメールについて>
【課題】
現在、原子力災害時に住民がとるべき行動は、国の指示に基づき各市町村が各自のタイミングで発信する。
災害による混乱時に、隣接市町村との発信タイミング調整、発信自体の連絡は現実的ではない。
また発信内容(文面)は各市町村が独自で考えるため、市町村境目の人は複数メールを受信、別の市町村に避難中の人は統一されていない内容を受信することになり、混乱が予想される。
【要望】
情報発信の多重化を目的と市、県内市町村(今回参加しない自治体も含む)の情報発信方法を集約していただきたい。
緊急速報メールと同様に、防災行政無線など隣接市町村に影響が出るものは、検討の場を設けていただきたい。
(2)参加者の感想(帰路バス内でヒアリング実施)
●今回の訓練はスムーズに行えたが、災害時にスムーズに避難できるか不安である。特に渋滞発生が予想される。
●バスによる避難について、実際にバスが来るのか不安である。
バス集合場所も災害時にイベント等があるとバスの進入が困難になる。
また今回の訓練で一時バスのルートが発電所に近づいたため、ルートにも疑問を感じた。
●高齢者や障がい者の避難についても考えておくべきである。
●訓練の継続実施を望む。悪天候を想定しての訓練を実施してはどうか。
●今回は避難経由所までの訓練だったが、避難所までの訓練を実施してほしい。
(3)受入市の感想(12月に訪問し担当者にヒアリングを実施)
●すべての避難所に職員を配置し、また長期間に避難が及ぶと職員のローテーションも考慮する必要がある。
避難経由所の運営まで手が回らない。避難経由所の運営は県主体でできないか。
●受入市の自然災害によつ避難所と、柏崎市の広域避難の避難所は同じ施設である。
複合災害時に受入市が被災した場合、広域避難の避難所不足が考えられる。
●大人数に対応することへの不安がある。
今回は訓練のため、人数を制限したことにより避難経由所業務がスムーズに行えたが、災害時の大人数への対応に不安を感じた。
<訓練全体についての質疑>
Q.参加者169名設定にした意味は。
A.訓練による事故防止。あくまでも手順、避難先の確認が訓練の趣旨。訓練を重ねることで理解促進をはかることが目的。大勢参加の訓練を行うよりも訓練を重ねることが大切と考える。自家用車避難については県もシミュレーションを行う。繰り返し行うことが必要。
Q.地域・コミセンの訓練・出前講座などの状況は。
A.出前講座では令和元年度46回、2157名の参加がある。今年度はコロナ影響による出遅れもあるが、PRを重ねながら実施していきたい。11月の防災士要請講座でも自主防災会参加を呼び掛ける。今後も自助・公助の向上と住民~行政の連携をはかりたい。
Q.訓練自体はスムーズだったが、避難ルートの日吉町交差点などは渋滞しやすい。交通誘導体制の訓練は。
A.柏崎市では実施しなかったものの、県全体での誘導訓練はあった。役割としては県が担う。
Q.避難先(避難所)はどのように設定したのか。
A.地元自治体との協議による。
Q.新型コロナウイルス対策と原子力災害について、新しい生活様式を取り入れた原子力災害防護措置をどうするか。
A.まずは以下について留意する。●感染者の隔離 ●ソーシャルディスタンス、消毒、マスク着用など●まずは命を守る行動 屋内退避をしっかり行う。●自然災害同様に分散退避。
これらを受けて国、県、関係市町村との対応を協議。現時点でも避難所に全員は受け入れられない。避難先との関係を協議。(宿泊施設等も可能なのか等)今年10月実施予定の総合訓練にも反映させたい。
Q.原子力災害防護措置と新型コロナ感染症対策について、国からの通知は「万全を期す」と「可能な限り」の矛盾がある。市の対応は。
A.具体的な部分を整理していく。緊急事態措置、県・関係市町村の広域避難計画への反映など修正中。今後、避難計画にしっかり盛り込みたい。
Q.避難車両バスも県の想定した車両台数や運転者数を上回り、換気をどうするかなどの課題も多い。
市の方針としては原子力防護措置だけではなく感染対策をしっかりやることを重視するということか。
A.命を守る行動を最優先すべきと考える。被ばくしないことが第一。感染拡大防止はその後の対応となる。家庭内であれば部屋を分けての分散・屋内退避も推奨。
Q.県によるアンケート結果は市と共有・公表されているか。
A.市と共有・一部は公表(属性含む)また市独自に訓練参加者に対し個別ヒアリングを行い課題に反映。受け入れ自治体に対しても直接出向いてヒアリングしている。
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以上の報告を通して、昨年の訓練は「課題の抽出」が最大の成果?だったように感じました。
また避難先の自治体の負担をいかに減らすか、という視点も大切だと考えます。
感染症対策も含めて複合対策に自治体そして住民がどう備えるか、ということを真剣に考えていかなければならないと思います。
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