使用済核燃料税(累進課税化)の条例説明について
3/31本会議にて市長から累進課税が盛り込まれた「新潟県柏崎市使用済核燃料税条例(案)」についての説明がありました。
以下がその内容です(数日すれば柏崎市議会映像配信にて公開されます)。
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本案は、使用済核燃料税条例の制定についてであります。
去る3月19日午前、議会全員協議会において現行の「柏崎市使用済核燃料税条例」について御説明し、質疑をいただきました。
当日、午後から東京電力ホールディングス株式会社と協議を重ね、本案に関する基本合意を小早川社長の意を受けた新潟本社橘田代表と確認し、午後7時過ぎに社長に対し、私から最終了解を伝えました。
その後間もなく、基本合意に至ったことを議長、副議長、議会運営委員長、各会派代表などに電話で御連絡申し上げ、「3月23日月曜日に議案として提出させていただきます」とお伝えしたところであります。
もちろん1日で終わらせていただくつもりなど毛頭なく、議会としての東京電力ホールディングス株式会社に対する意見照会を含め、十分な御審議を、と夜遅くのお電話で恐縮でしたが、等しく皆様にお願いいたしました。
ただ、現在の条例においての税納付期限が4月30日であることを考えた場合、また、御承知のとおり新型コロナウイルス感染症に関して、国、世界を挙げて対応策を取っている中で、一地方自治体ではありますが、柏崎市においても1月下旬から平日、土日、祝日を問わず対応を繰り返しており、日程が更にタイトになってきているという事情は御理解ください。
具体的に御説明申し上げます。
本条例は、「柏崎市に使用済核燃料を長期保管することは認めない」という柏崎市の意思を表明し、実現化させるためのものであります。
野球に例えます。
柏崎市長たる私と東京電力ホールディングス株式会社社長は、この3年間キャッチボールをさせて頂きました。お互い、真ん中を目掛けてストレートを投げ合いました。
小早川社長からは「良い緊張関係を」という言葉をいただき、しっかり捕球していただきました。さて、国であります。
御承知のとおり、平成30(2018)年7月に策定されました国の第5次エネルギー基本計画における電源構成、原発は20%~22%の重要なベースロード電源、再生可能エネルギーは22%~24%の主力電源。さて、と思わざるを得ません。
その原発の行く末を左右する核燃料サイクル。日本のエネルギー政策にとって最も大切な部分の破綻又は破綻に近いことが長い間軽視されてきたように、見て見ぬふりをされてきたように思われます。
結果、柏崎刈羽原子力発電所構内にたまった使用済核燃料は保管容量の81%となり、再稼働を求められている6号機は93%、7号機は97%の保管率であります。
このままでは、再稼働したとしてもすぐに止めざるを得ません。
昨日、6号機、7号機の使用済核燃料の号機間輸送の計画が東京電力ホールディングス株式会社から発表されましたが、全体で81%に変わりはありません。
国の原発政策、エネルギー政策に光明がともったわけではありません。
私は、繰り返し繰り返し市長就任以前から「6号機、7号機の再稼働の価値を認める。同時に原発は、徐々に確実に減らすべきである」と申し述べてまいりました。
今もこの考え方に変わりはありません。
今回の御提案は、国にしっかりと自らが作ったエネルギー基本計画を実践するつもりがあるのか否か、その覚悟はあるのかを問うものでもあります。
現在、東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所においては、1号機から7号機までが停止状態ではありますが、世界最大の原発立地地点となっております。
使用済核燃料も発電所内で「一時保管」が長期化・常態化しており、現在の状況は、「使用済核燃料は発電所敷地外で適切に管理又は再処理されるべき」という本市の方針にも反しております。
このため、本来保管すべきところではない所に保管されている使用済核燃料に対し、税率を上乗せして賦課することにより搬出が促進されることで、使用済核燃料の長期・大量保管に伴う本市の負担及び市民の不
が軽減し、さらに、国の考えでもある核燃料サイクルの推進にも寄与するものと考えております。
こうした観点から、使用済核燃料税の経年累進課税化を目指し、納税義務者である東京電力ホールディングス株式会社と協議を重ねてきたところであります。
このほど、同社から「税率と仕組みについて基本的に合意する」との回答をいただいたことから、法定外目的税である現行の使用済核燃料税条例を廃止し、法定外普通税として、新たな使用済核燃料税条例を制定いたしたいものであります。
これまで取り組んでまいりました経緯について、御説明させていただきます。
本市では、平成29(2017)年2月から使用済核燃料税経年累進課税について検討を始め、翌3月には、庁内でプロジェクトチームを立ち上げ、平成30(2018)年3月までに、計10回の検討会を開催し、たたき台を策定したところであります。
このたたき台を基に、平成30(2018)年4月に東京電力ホールディングス株式会社に使用済核燃料税経年累進課税の協議について、文書により申し入れ、内容説明を始めました。
その後、平成30(2018)年10月まで4回の協議を重ねましたが、平成30(2018)年度中には協議は調いませんでした。
東京電力ホールディングス株式会社は、使用済核燃料税経年累進課税の導入に対し、厳しいとの見解を示していましたが、令和元(2019)年度も引き続き継続して協議し、合意に向けて強い姿勢で臨むように担当職員に対し指示いたしました。
私は、令和元(2019)年5月9日に、東京電力ホールディングス株式会社本社小早川社長を訪問し、継続協議を申し入れ、昨年12月まで、5回の協議を重ねた結果、導入に向けての方向性が見え始めてまいりました。
その後、本年令和2(2020)年に入り、1月から3月までの間に、これまでの事務方レベルの協議を含めると8回の協議を行い、先ほど申し上げましたとおり3月19日夜、「税率と仕組みについて基本的に合意する」との結論に至ったものであります。
このことから、去る3月23日に条例案を提出させていただきましたが、日程に追加されなかったため、本日、改めて条例案の議案説明をさせていただいているところであります。
条例の概要について申し上げます。 *赤字が「新潟県柏崎市使用済核燃料税条例(案)」本文
(課税の根拠) 第1条 市は、地方税法(昭和25年法律第226号。以下「法」という。) 第5条第3項の規定に基づき 、使用済核燃料税を課する 。
第1条は、「課税の根拠」であります。本条は、課税の根拠を地方税法に求めるものであります。
なお、現条例は、法定外目的税であったため、原子力発電所に起因する経費に税を充当しましたが、本条例案はそれを引き継ぎつつも、原子力発電所に起因する幅広い財政需要に対応するため、地方税法第5条第3項に定める法定外普通税としております。
(用語の定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定める ところによる。
(1) 発電用原子炉 原子力基本法(昭和 30 年法律第 186 号)第3条第4号に規 定する原子炉で発電の用に供するものをいう。
(2) 使用済核燃料 原子力基本法第3条第2号に規定する核燃料物質で発電用 原子炉に燃料として使用したものをいう。
(3) 原子炉設置者 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭 和 32 年法律第 166 号)第 43 条の3の5第1項の許可を受けた者をいう。
(4) 保管 原子炉設置者が使用済核燃料を発電用原子炉から取り出し、当該発 電用原子炉施設内の使用済燃料貯蔵設備において貯蔵する状態をいう。
(5)使用済燃料貯蔵施設等 原子炉等規制法第 43 条の4 第2項第2号に規定 する使用済燃料貯蔵施設又は第44条第2項第2号に規定する再処理施設をいう。
第2条は、 「用語の定義」についてであります。本条例の用語の定義を規定したものであり、「原子力基本法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の定義によるところも明確にしているものであります。
(賦課徴収) 第3条 使用済核燃料税の賦課徴収については、法令又はこの条例に別段の定め があるものを除くほか、新潟県柏崎市税条例(昭和 35 年条例第 10 号)の定める ところによる。
第3条は、「賦課徴収」についてであります。使用済核燃料税は、法令又は条例に別段の定めがあるものを除くほか、柏崎市税条例の定めるところによることを規定しております。
(納税義務者)第4条 使用済核燃料税は、使用済核燃料を保管する原子炉設置者に課する。
第4条は、「納税義務者」についてであります。使用済核燃料税の納税義務者を原子炉設置者と規定するものであり、本市においては東京電力ホールディングス株式会社となります。
(課税標準)第5条 使用済核燃料税の課税標準は、賦課期日において保管する使用済核燃料 の重量とする。 2 前項の重量は、使用済核燃料に係る原子核分裂をさせる前の核燃料物質の重量とする。
第5条は、「課税標準」についてであります。課税標準は、賦課期日において保管をする使用済核燃料に係る原子核分裂をさせる前の核燃料物質の重量とすることを規定いたしております。
(税率)第6条 使用済核燃料税の税率は、1キログラムにつき 620 円とする。
2 前項の規定のほか、経年累進課税分(原子炉置者が使用済核燃料として保管 を開始した日から起算して15年を経過しないものを除く 。) として、使用済燃料貯蔵施設等のしゅん工に係る使用前事業者検査についての原子力規制検査(原 子炉等規制法第 43 条の 9第3項又は第46条第3項の原子力規制検査をいう。) による原子力規制委員会の適合確認を受けた後であって、速やかに市長と 原子 炉設置者が 協議し、発電用原子炉から取り出した使用済核燃料を使用済燃料貯 蔵施設等へ搬出することが可能となったことについて両者が合意した年の 翌年 以後の賦課期日において保管する使用済核燃料について、使用済燃料貯蔵施設等 への搬出がされるまでの間、重量1キログラムにつき、次の額を加算する。
⑴ 1年目 50円
⑵ 2年目 1 0 0 円
⑶ 3年目 1 5 0 円
⑷ 4年目 2 0 0 円 ⑸ 5年目 2 5 0 円
( 搬出されるまでの期間が5年を超えたときは、5年 を上限とする。 )
第6条は、「税率」についてであります。税率は1キログラムにつき620円とするもので、これは、現行の条例で規定されている税率480円から140円引き上げるものであります。
また、現行の条例に対し、新たに1項を加え、第2項として経年累進課税分を規定しております。
具体的には、原子炉設置者が使用済核燃料として保管を開始した日から起算して15年以上のものについて、使用済燃料貯蔵施設等のしゅん工に係る使用前事業者検査についての原子力規制検査による原子力規制委員会の適合確認を受けた後であって、速やかに市長と原子炉設置者が協議し、発電用原子炉から取り出した使用済核燃料を使用済燃料貯蔵施設等へ搬出することが可能になったことについて、両者が合意した年の翌年以後の賦課期日において保管する使用済核燃料について、使用済燃料貯蔵施設等への搬出がされるまでの間、1キログラムにつき1年目が50円、2年目が100円、3年目が150円、4年目が200円、5年目が250円を経年累進課税分として使用済核燃料税に加算する規定であります。なお、経年累進課税分については、5年を上限としております。
(賦課期日)第7条 使用済核燃料税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日と する。
第7条は、「賦課期日」についてであります。賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日としております。
(徴収の方法) 第8条 使用済核燃料税の徴収については、申告納付の方法による。
第8条は、「徴収の方法」についてであります。徴収の方法は申告納付とし、
(申告納付の手続等) 第9条 使用済核燃料税の納期限は、4月 30 日とする。
2 納税義務者は、賦課期日における使用済核燃料税の課税標準、税額その他必 要な事項を記載した申告書を市長に提出するとともに、その申告した税額を納付書によって納付しなければならない。
3 前項の規定により申告書を提出した者は、当該申告書を提出した後において その申告に係る課税標準又は税額を修正しなければならない場合においては、 則で定めるところにより、遅滞なく、修正申告書を提出するとともに、当該修正 により増加した税額があるときは、これを納付しなければならない。
第9条の「申告納付の手続等」の第1項で、納期限を4月30日とするとし、第2項で、納税義務者は、賦課期日における使用済核燃料税の課税標準、税額その他必要な事項を記載した申告書を市長に提出し、納付書によって税額を納付しなければならないと規定しております。
第3項では、修正がある場合は、修正申告を提出し、増加した場合には、納付しなければならないことを規定しております。
(更正、決定等に関する通知)第10条 法第 686 条第4項の規定による使用済核燃料税に係る更正又は決定の通知、法第 689 条第 5項の規定による使用済核燃料税に係る過少申告加算金額又 は不申告加算金額の決定の通知及び法第 733 条の 19 第5項の規定による使用済 核燃料税に係る重加算金額の決定の通知は、更正又は決定の通知書を交付して行 うものとする。
第10条は、「更正、決定等に関する通知」についてであります。地方税法の規定により、税額又は各加算金額を更正又は決定したときに、更正又は決定した事項について、通知書を交付することを規定するものであります。
第2項では、その通知により、指定する期限までに納付書によって徴収金を納付しなければならないことを規定しております。
(減免) 第11条 市長は 災害その他やむを得ない事情がある場合において必要があ ると認められるときは、別に条例で定めるところにより、使用済核燃料税を減免することができる。
第11条は、「減免」についてであります。市長は、災害その他やむを得ない事情がある場合において、必要があると認められるときは、別に条例で定めるところにより、使用済核燃料税を減免することができることを規定いたしております。
(委任)第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
第12条は、「委任」についてであります。申告書の様式等、本条例の施行に関し必要な事項は、規則で定めることと規定いたしております。
附 則
(施行期日) 1 この条例は、令和2年 10 月1日から施行する。ただし、附則第6項の規定は、 公布の日から施行する。
第1項は、本条例の施行期日であり、令和2(2020)年10月1日から施行いたしますが、附則第6項の経過措置については、本条例の公布の日から施行するものと規定いたしております。
( 令和2年度における特例 ) 2 令和2年度における使用済核燃料税の課期日については 、 第 7 条中「当該 年度の初日の属する年の1月1日 」と あるのは「 令和2年 10 月1日 」とする 。 この場合において 、税額を算出するときは 、令和2年 10 月から令和3年3月 までの月数を 12 で除した数値を課税標準に乗じて計算するものとする。
3 令和2年度における使用済核燃料税の納期限については 、第9条第1項中 「4月 30 日 」とあるのは「 令 和 2 年 11 月2日 」とする 。
第2項及び第3項については、本条例施行日が本年10月1日であるため、第2項においては賦課期日を規定している第7条中の「当該年度の初日の属する年の1月1日」を「令和2年10月1日」とし、税額を算出するときは、令和2年10月から令和3年3月までの月数を12で除した数値を課税標準に乗じて計算するものと、第3項においては第9条第1項中の納期限について、「4月30日」を「令和2年11月2日」とすることを規定いたしております。
(検討) 4 市長は、この条例の施行後5年ごとに、条例の施行状況 、 社会経済情勢の 推移等を勘案し、必要があるときは、この条例の規定について検討を加え、その 結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
第4項については、本条例の施行後5年ごとに、条例の施行状況、社会経済情勢の推移等を勘案し、必要があるときは、検討の上、必要な措置を講ずることとする規定であります。
( 使 用 済 核 燃 料 税 条 例 の 廃 止 ) 5 新潟県柏崎市使済核燃料税条例(平成 15 年条例第 33 号 )は 、廃止する。
第5項については、現行の条例の廃止規定であります。
(経過措置) 6 廃止前の新潟県柏崎市使用済核燃料税条例(以下「旧条例」という。)によっ て課される 令和2年度の使用済核燃料税の税額については、旧条例の規定にか かわらず、旧条例の規定により算出された税額に令和2年4月から同年9月まで の月数を 12 で除した数値を乗じて得た額とする。
第6項については、旧条例による本年度の税額に関しては、現行の条例の規定により算出された税額に令和2年4月から同年9月までの月数を12で除した数値を乗じて得た額とする規定であります。
なお、条例案が可決、成立、施行された場合、得られる税収アップ見込みは基本部分において、年額にして約1億6千800万円でございます。
このところ毎年約5億7千500万円を税収に計上しておりますので、合わせて年額7億4千300万円を見込むものであります。
経年累進部分に関しましては、東京電力ホールディングス株式会社などの動きにも関わりますので、今のところ見込むことができません。
また、法定外目的税から法定外普通税になることにより、原子力発電所に起因する幅広い財政需要を見込むことができるわけですが、現行の使用済核燃料税の財政需要、つまり原子力発電所立地に関する安全対策、生業安定対策、環境安全対策及び民生安定対策並びに原子力発電所との共生に必要な費用など、具体的に申し上げるならば避難経路の道路整備事業、除排雪事業、環境保全事業、消防団経費、誘客宣伝事業、小・中学校整備事業などに加え、新たに教育、高齢者福祉、障がい者福祉など、それぞれの事業を充実させるとともに、各産業界の人材の育成、確保、新たな産業構築、定住人口の確保事業等に財政需要を見込むものであります。
むすびに、先程も申し上げましたが、私自身は「6号機、7号機の再稼働の価値を認める。同時に原発は、徐々に確実に減らすべきである」と公約に掲げ、立候補し、当選させていただきました。
一方、本条例が可決されたとしても、新潟県によるいわゆる「3つの検証」が終らないうちに、再稼働議論はしない、という県知事の御判断がある以上、再稼働に関しては凍結状態であることに変わりはありません。厳然たる事実であります。
しかし、再稼働の是非にかかわらず、使用済核燃料は潜在的なリスクを抱えたまま、サイト内に81%とどまり続けています。私はこの状態をまず少しでも改善したいと考えております。私自身は再稼働の価値を
認める立場に身を置く者ですが、再稼働を反対する皆さんにもこの部分、つまり市民の安全・安心、豊かさの向上という点において共有していただきたいと心より願うものであります。
何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
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説明は市長の想いの部分が主となったため、課税額の根拠や財政需要の詳細など今後確認していく必要があると感じました。
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