地層処分の仕組み・技術的背景・そして日本の地下環境について
「くらしを見つめる・・・柏桃の輪」勉強会にて、高レベル放射性廃棄物の地層処分について学びました。
講師は名古屋大学博物館教授・吉田英一先生。
具体的事例を交えながらの、とてもわかりやすいご講演でした。
昨秋にも別の会でお話を伺っていたのですが、
http://step-one.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-fd00.html
今回は日本各地の地質環境が地層処分に好ましいかどうか示した「科学的特性マップ」が出されたこともあり、興味深く拝聴しました。
主な内容は以下の通りです。
○原子力発電に対するスタンスに関係なく、放射性廃棄物の処分は必要。
○放射性物質には半減期があり、何十万年~の長いスパンではあるが減っていく。
○様々な方法が検討されてきたが、(宇宙処分、氷床処分、海洋処分、海溝処分など)もっとも現実的で安全性が高いのが地層処分。
○地層処分の発想の原点は、アフリカ・ガボン共和国の「オクロ天然原子炉」。
自然の状態で、地下で核分裂反応が生じた跡(化石)。
今から20億年前に発生し、地層に閉じ込められていた。
○地層処分は、高レベル放射性廃棄物(放射性物質をガラスに閉じ込めたガラス固化体)を、金属容器に封入し(オーバーパック)、その周りを締め固めた粘土で覆い(緩衝材)、地下深くで保管する方法。
○ガラス、オーバーパック用の鉄、粘土、そして地層それぞれに放射性物質を閉じ込める性質がある(多重バリア)。
○地下の岩石・地質には状態を維持する働きがある。
○日本の地質環境は、その土地により性質が異なる。
○科学的特性マップには、政治的な配慮はなされず、あくまでも地球的・地層的な点から地層処分に好ましいかどうかを示してある。
○火山・火成活動、断層活動、隆起・浸食などがある地域は、地下深部の長期安定性から見て好ましくないとされている。
○鉱物資源が存在する地域も、将来それを取り出す可能性を考え、好ましくはないとされる。
○上記に該当せず、長期安定性が見込める地域は、「好ましい特性があると確認される可能性が相対的に高い地域」として示されている。
○「輸送面でも好ましい地域」は、長期安定性に加え、海岸から20㎞程度を目安とした範囲。
○瑞浪、幌延にある地層処分の研究施設は、地上~地下環境を乱さず掘削する方法を探り、地下岩盤の調査手法を確立することが大きな目的。
(日本は石油、石炭採掘などで地下に穴を掘ってきたが、地質を調べることはなかった)
○瑞浪、幌延の施設はあくまでも借地であり、このまま処分地にはならない(科学的特性マップ上でも、好ましくはない地域)。
5~8年後には返還時期が来るが、地層処分が現実的に進展するまでは、教育・研究施設として維持すべきでは?と考える。
○マップが出たからといって、すぐに処分場が決まることにはならない。これを機に国民の関心か高まり、議論がなされることが大切。
○地層処分が現実的に進むまで、まだまだ長い年月を要する。
それまでの間、地下環境に関する知見の蓄積、技術の高度化と継承、そして持続的な人材育成が必要。
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将来への責任として、私たちの世代で処分問題を前進させたいものです。
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